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虚しき叫び

「うおおおっ!」


雄叫びを上げ、自分に殴りかかろうとする僕を見て、フルハウスはほくそ笑んだ。


「赤の王よ。貴様は、王に相応しくない。我が王ならば!とっくに、もうすべて終わっている」


「ふざけるな!」


僕の拳が叩き込まれる寸前、フルハウスは崩れ落ちたアルテミアを掴み、自らの前に晒した。


「う!」


思わず動きが止まる僕に、フルハウスは笑いながら言った。


「赤の王よ!この女を助けたければ!」


フルハウスが言葉を続けようとしたが、その時に…僕はその場から消えた。


「な!」


突然のことに絶句するフルハウス。


しばらく僕がいた空間を凝視した後、アルテミアを離すと、鼻を鳴らした。


「邪魔をする気か?」









「アルテミア!」

「フン」


絶叫する僕の前に、冷たい目をして玉座に座るサラの姿が飛び込んできた。


「え!」


突然変わった状況に、戸惑う僕の後ろに、影で全身を被われる程巨大なギラが立つと、声をかけてきた。


「久しいな、少年…いや、今はこう呼ぶべきかな。赤の王」


「ギラに?サラ!?」


振り向いた僕が目を向くと、サラはため息を付いた。


「赤の王とも呼ばれる者が、すぐに状況判断もできないのか」


と言ってから、サラはため息をついた後、フッと笑った。


「そうでもないか…」


無意識に、赤い気を纏っている僕に気付き、サラは目を閉じた。


「赤の王よ。貴様をここにテレポートさせたのは…」

「ここからは、私が説明するよ」 


ギラの言葉を遮り、玉座の後ろから、ジャスティンが姿を見せた。


「あなたは!」


予想外の人物の登場にさらに驚く僕に、ジャスティンは微笑んだ後、すぐに表情を強張らせ、言葉を続けてた。


「赤星君。今、君を敵にまわすことはできない」


「敵?」


「ああ」


ジャスティンは深く頷き、


「君は、あのライにも匹敵する力を持ちながら、あることがあれば…容易く、敵に操られる」


僕の目を見つめ、言い放った。

 

「人質として、か弱き人間が捕らわれているときに」


ジャスティンの言葉に、僕は絶句した。


「天使との戦いの時、君は容易く敵の手に落ちたね」


じっと見つめるジャスティンのあとを、ギラが続けた。


「貴様の弱点は、あやつも知っておる。だから、扱いにくいアルテミア様よりも、貴様をターゲットにした。この世界を、魔物のものにするために」


「あやつ…フルハウスは、最初の魔人の一人。病魔を操り、人々を滅ぼす為に生み出された。しかし、ライ様が人間を絶滅まではするつもりがないと理解した時、自ら氷の中にその身を封印させた」


サラは目を開けると、床に視線を落としながら、口を開いた。


「しかし、ライ様亡き後、封印を解いたフルハウスは…今の魔界の状況を憂い、新たなる王を降臨させようとしている。それも、自らの意志を反映させた王を」


ギラは、僕を見た。


「だ、け、ど」


蹴落とされそうになる僕の肩に、ジャスティンが手を置いた。


「ジャスティンさん!」


「しかし…そんな君だからこそ、魔王を倒せる程の存在になれた」

 

ジャスティンは、優しく微笑んだ。


「もう時間だ」 


サラは玉座から立ち上がると、僕に手を突きだした。


「我々は貴様の味方ではない。アルテミア様を傷つけたやつは許せんが、同じ魔神。貴様を助けた訳ではない」


「少年よ。今の話を肝に免じて、戻れ」


ギラの言葉を最後に、僕は再びテレポートさせられた。


その場から僕が消えたのを確認すると、サラは玉座に座った。


「これで、昔の借りは返したぞ」


サラはジャスティンを見た。


「我々に勝ちながらも、とどめをささなかった…借り」


ギラはジャスティンを見つめ、


「しかし、貴様が行けば、すむことではないのか?」


眉を細めた。


「いや」


ジャスティンは、首を横に振り、


「人間のあらゆる病魔を操る魔神。勝てても、周りの人々、私も含めて、無傷では終われない」


赤星がいた空間に目をやり、


「それに、今回のようなことも、これからもあるだろうからね。アルテミアの伴侶ならば、乗り越えてもらわないと」


軽く微笑んだ。


「アルテミア様」


サラは、目を閉じた。


「そうだ!今の立場でなければ!アルテミア様を傷つけたフルハウスなど!一瞬で消し去るものを!」


ギラは、拳を握り締めた。


「仕方がありませんよ。我々は互いに、トップなのですから」


そう云うと、ジャスティンは二人に深々と頭を下げ、その場からテレポートして消えた。


「ライ様に…ティアナ様」


サラの呟きに、ギラは頷き、


「互いに慕った方は違えぞ。今は、アルテミア様」


遠くを見つめた。


「子を思う親の気持ちか…」


ギラのため息混じりの言葉に、サラは目を開け、


「されど…今は、我らが王。魔神が、人間の勇者にやることに、文句はいえん」

 

虚空を睨んだ。


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