装飾銃
近づいてくる高坂達を一瞥すると、天上和幸はため息をついた。
「もう1人の男がいないな」
天上が一歩前に出る動きをすると、それだけで高坂の前まで移動した。
「銃を持っている男はどこだ?」
「!?」
目を見開く高坂の耳許に、天上が囁くように言った。
「銃をやつらに奪われるな」
天上の言葉に、高坂ははっとすると、踵を返した。
「緑!」
「はい?」
高坂の隣で足を止めていた緑に、高坂は命じた。
「彼と共に、真理亜君を守れ!」
「ぶ、部長?」
「彼は味方だ!」
高坂は走りながら、後ろの緑に叫ぶと、次は舞に交信した。
「舞!輝の居場所を探せ!」
携帯に叫びながら、高坂は前に向かって全力で走る。
「部長…」
舞の声に力がなかった。
「どうした?」
高坂は眉を寄せた。
「あ、あいつ…やられています」
舞は半分に割った煎餅を持ちながら、パソコンの画面を見つめ、凍り付いていた。
「ば、馬鹿な…」
灰色の路上の壁にめり込んだ輝は、装飾銃を握りながら、奥歯を噛み締めた。
「神の銃…。しかし、正統なる神の候補者が使わねば、この程度か」
両手に黒い巨大な鎌を持ちながら、新真悟がゆっくりと近づいてくる。
「チッ!」
輝は舌打ちすると、全身に白い気を纏い、壁から飛び出すと、装飾銃の引き金を弾いた。
3つの貫通していない銃口から、光が放たれ、避けない新真悟の体に当たった。
しかし、新真悟にダメージを与えることはできなかった。
「何度やっても同じこと」
新真悟は両手を広げると、無防備に光弾をすべて浴びるように受けた。
「異世界の神の力を持つ…お前では、扱うことはできないわ!」
そして、両手を上げると、鎌を頭上に持ち上げた。
「らしいな…」
輝は装飾銃を突きだしながら、足を止めた。
「異世界人には、宝の持ち腐れよ」
新真悟は、振り上げた鎌で、輝の脳天を串刺しにしょうとした。
「な!」
しかし、その体勢のまま、新真悟の動きが止まった。
「き、貴様!? 銃をどこにやった?」
いつの間にか、輝の手から銃が消えていた。
「フッ」
輝は笑うと、新真悟の目を見据えた。
「どこだあああっ!」
再び輝に鎌が振り下ろされようとした寸前、ある声が…その動きを止めた。
「ここだ」
声のした方に、新真悟が振り向くと、数百メートル向こうの十字路に立つ者がいた。
「部長。すいません」
輝は頭を下げた。
「教えろ、死神」
現れたのは、高坂だった。高坂は、新真悟に手にした装飾銃の銃口を向けた。
「貴様らの目的はなんだ?」
高坂は、装飾銃の引き金に指をかけた。