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番外編 エピローグ 第51話 街角

世界中を旅するジプシー。


LikeLoveYouは、現代のジプシーだった。


音楽だけで、旅する旅人達。


「ようこそ、啓介」


東欧のある国。


「久々だな。マルコ」


啓介は、迎えにきたマルコと握手した。


「腹は、減ってないか?」


マルコの言葉に、


「いきなりかよ」


啓介は笑い、


「妻が…お前達が、来るというから、張り切ってさ」


「妻?」


啓介は驚いた。


「ああ。まだ、籍はいれてないんだが…」


向こうの雑居ビルから、声がした。


「マルコ!」


嬉しそうな声。


笑顔で、走ってくる人物。


「啓介は、知ってるな」


駆けてきた女の背中に手を回し、マルコは笑った。


「一応、紹介するよ。妻のティアだ」


ティアは満面の笑みで、


「お久しぶりです。啓介さん」


「ティ、ティア〜!」


啓介は目を丸くし、2人を交互に見、


「い、いつのまに…」


マルコとティアは顔を見合わし、笑い合う。


「何というかな…」


頭をかくマルコ。


ヒョイと、啓介の後ろから顔を出した明日香が、ティアの顔とお腹を見た。


ティアとマルコに微笑みかけると、啓介を肘で小突いた。


「鈍感」


「明日香…」


ティアは、顔を赤らめる。


その様子に、啓介はやっと気づいた。


「おめでとう」


マルコは照れ、


「あ、ありがとう…。本当は、もう…籍を、いれておかなくちゃならないんだけど…」


マルコは、周りを見回した。


「まだ…そんな、状況じゃないんだ」


さびれた街。


まだ…この国は、発展途上であり、内乱が終えなかった。


「でも…この子が、生まれる頃には、きっと!よくしてみせる」


マルコは、お腹を見つめながら、力強く誓った。


「腹へった」


そんな4人の横を、バンドメンバーの大輔が歩いていく。


しばらくの間、4人は笑い合った。


「そうね。折角のスープが、さめちゃうわ」


ティアの言葉に、マルコと、LikeLoveYouのメンバーは、歩き出す。




「明日香さんですね」


突然…後ろから、名前を呼ばれ、明日香は立ち止まった。


他の人は、聞こえなかったのか…立ち止まらずに、歩いていく。


「明日香さんですよね?」


「日本語?」


振り返った明日香の視線の先に、誰かが、立っていた。


フードの為、誰かわからない。


「あなたに…和美さんから、伝言があります」


「和美さん…」


明日香は訝しげに、フードの人物を見た。


「和美さんって…」


「河野和美さんです」


「和美さんは…もう…」


「僕はただ…和美さんのあなたへの…言葉を伝えに来ただけです」


「和美さんの…」


「はい」



「明日香!何してるんだ!」


啓介がビルの前から、呼んだ。


「はい!すぐいくわ」


明日香は、啓介の方を向いた。


その明日香の耳に、


「ありがとう」


感謝の言葉が、飛び込んできた。


明日香が慌てて振り返っても、そこには誰もいなかった。


「明日香。どうした?」


「何でもない!今いくわ」


明日香は、駆け出した。





「これでいいんだな?」


町の遥か上空に、浮かぶアルテミア。


「うん」


僕の言葉を聞くと、アルテミアはアルティメット・モードになり、宇宙へと飛び上がっていた。


時空間をこえる為に。





湖の畔で、僕達を待っていたロバートの近くに、アルテミアは降り立つ。


指輪を見つめていたロバートは、アルテミアが近付いてくると、顔を上げた。





「結局…ヴァンパイア・キラーの在処は、わからなかったな」


ロバートの言葉に、アルテミアは首を横に振った。


「いや…。何となくわかった気がする」


アルテミアの脳裏に、母の笑顔が浮かんだ。



「ギェー!」


奇妙な声を上げ、湖のそばの林から、キマイラが姿を現す。


虎の体に、猿の顔、蛇の尻尾をしていた。


「やれやれ」


ロバートが肩をすくめた。


「大したポイントにならないが」


「いくわよ」



「モード・チェンジ!」







「な!?」


いきなり、下へ崩れ落ちるような感覚に、蘭丸は…飲もうとしたお猪口を落とした。


斜めになった畳の上を転がるお猪口は…回転しながら、砂になっていく。


反射的に立ち上がった信長は、急いで外の様子を見ようと、窓へと近づいた。


バランスを崩すことなく、天守閣から、身を乗り出した。


天に聳えていたはずの…城は、信長達がいる場所だけを残して、砂に戻っていく。


滝のように流れ落ちる…城だったものが、地面に激突すると、煙のような砂埃が、立ち上がった。


「何だ…この意志のプレッシャーは」


蘭丸は、衝撃よりも背筋が凍る程の強い力を全身で感じ、冷や汗を流しながら、辺りを見回った。


いつのまにか、蘭丸のそばに立っていた…1人の女。


蘭丸は…自分の目の前に立つ人物に、戸惑いと恐れを抱き、余りのプレッシャーに、動けなくなった。


「お、お前は!?」


憎々しく、アルテミアを睨む蘭丸。


それは、紛れもなく、天空の女神アルテミアであった。


しかし、感じる魔力は、アルテミアを遥かに凌駕していた。


「久しいな…ラン」


蘭丸を見下ろす…その目。


忘れるはずがなかった。


かつて、蘭丸に途轍もない恐怖を与えた存在。


「蘭丸!」


一足で、蘭丸の前まで飛んだ信長は日本刀を造ると、勢いをそのまま、軸足を回転させ、横凪に振るった。


次の瞬間、信長の右手が、中に舞った。


「信長様!」


急いで、信長に駆け寄ろうとする蘭丸に、炎の蛇が纏わりつく。


「1つ、教えてやろう。お前が、融合したマリーとネーナの魔力は殺す前に、もう殆ど奪い取っていた」


アルテミアは、ゆっくりと蘭丸に近づく。


「お前は、残りカスと手を結んだのだ」


「やはり、アルテミアではない…」


身を縛る炎の蛇は、砂自体を焼き尽くす。


「ま、まさか…ライ!?」


蘭丸は絶句した。


「馬鹿なやつよ…。折角、鳥かごの中で、ぬくぬくと暮らせたものを」


フッと笑ったアルテミアの手が、電気を帯びる。


「ハハハ!鳥かごも!お前の思ってるようにはならないぞ」


蘭丸の馬鹿にした笑いを、ライは逆に鼻で笑った。


「それも、計算の内だ」


アルテミアが手をかざすと、炎の蛇に縛られた蘭丸の体が、電子レンジに入れられたアルミのように、火花を散らす。


その間、アルテミアはずっと口を動かしていないし、ずっと目を瞑っている。


まるで、魂のない人形のようだ。


「お主が、魔王か」


信長は手を再生させると、意志を込めて、先程より強固な日本刀を作り出した。


「お初にお目にかかる…異世界の我よ」


アルテミアが頭を下げた。そして、ライの声が、せせら笑った。


「人の身でありながら、マリーやネーナを倒したことは、誉めてやろう。しかし…」


アルテミアは一瞬にして間合いを詰めると、手刀を信長の胸に突き刺した。信長はまったく反応できなかった。


「所詮、人よ」


手刀を抜くと、信長の体が崩れ出す。


「親方様!」


蘭丸が叫んだ。


「まだまだ…死なん」


体に意志を込めたが、手刀でできた穴から電気がスパークして、砂の再生を邪魔した。


「信長様!」




「さらばだ」


広間一面に、蝙蝠の羽を広げたアルテミアは、飛び立とうとする。


「待て…」


蘭丸は、最後の力を振り絞って、口を動かす。


「バ…ヴァンパイア・キラーは…」


浮いた形で、動きを止めたアルテミアはゆっくりと目を瞑ったまま、顔を下に向け、


「妻の友人であったお前に…冥途の土産として、教えよう」


笑みを讃え、


「半分は、今我にあり」


そう言うと、アルテミアは天井を突き抜けて、空へと羽ばたいた。


崩れ行く安土城。


崩れ行く世界に向けて、


「A Blow Of Goddess」


女神の一撃を放つ。


それは、炎と水と、雷鳴と風の爆発。


砂の世界そのものを、消滅させる程の破壊力を持っていた。



その輝きを、遠くで見つめながら、


「この世界も…終わりね…。旅立たないと」


和美は、呟いた。


光と、魔力の衝撃波が、和美を包んだ。


ビックバンのように、砂を消滅させながら、世界に広がっていく。




「さあ…帰ろう」


砂の世界から、飛び出したアルテミアは無表情に、世界が潰れる様を見つめていた。


「我が愛しき…」


アルテミアは砂の世界に、背を向けると、さらに高度を上げ、時の狭間の入口向けて、飛んでいく。


「娘よ」


ライの声は、優しさで満ち溢れていた。




そして、


物語は、本編へ。

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