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あの事件

「あの事件を覚えているか?」


情報倶楽部の部室に戻った高坂は、部室の奥でパソコンを打つ舞の背中に問いかけた。


「何ですか?突然」


忙しなく指を動かす舞は、振り返らない。


「舞?」


高坂はそんな舞の反応に眉を寄せると、つかつかと奥に向かって歩き出した。


「佐伯良子の…」


「部長…」


舞は指を止めると、ゆっくりと振り返った。


「何を心配しているんですか?やっと地獄から、解放されたのに」


その顔が、変わる。


「やはり…そうか」


高坂はゆっくりと、上着の裏からあるものを取り出した。


「あら?」


舞ではなくなったものが立ち上がった。


そして、高坂の手にある…白い装飾銃を見てせせら笑った。


「神の銃。だけど、それは名前だけ!実際は撃てないだだのガラクタ!」


「涼子…」


高坂は銃口を向けながら、下唇を噛み締めた。


「真お兄ちゃん。流お兄ちゃんと同じで、私を殺すの?」


涼子の言葉に、高坂は引き金を弾いた。








「この世界は…」


ネーナの拳を受け止めた手を見つめながら、町の上空にいたリンネは、凄まじい殺気を感じて目を細めた。


突然、目の前に炎の翼を広げた須佐が現れたからだ。


「あんたから、強い力を感じる」


須佐は、空中に浮かぶリンネを睨んだ。


「…だとしたら、どうするの?」


リンネは、微笑んだ。


「力を貰う!俺がこの世界の神になる為に」


須佐の姿が消えた。


「!?」


瞬間移動の如く、リンネの死角に移動すると、須佐は蹴りを放った。


「な!」


その蹴りを体勢を変えずに、腕で防御したリンネは、横目で須佐を見た。


「何のために…いや、誰の為に」

「!」


リンネの眼力で、須佐は地上まで吹き飛ばされた。


落下先には、リンネがいた。


「まあ~興味はないけど」


リンネは、腕を伸ばし…炎の気を放とうとした。


「須佐ああ!」


その時、天照の絶叫がリンネの耳に飛び込んできた。


はっとしたリンネが、声をした方向を見た瞬間、クスッと笑った。


その笑みが消えるのと、須佐が地面に激突するのはほぼ同時だった。


「須佐あああ!」


天照が駆け寄った時には、リンネの姿は消えていた。






「ごめんなさいね。ご主人様」


リンネは数キロ先にテレポートしていた。


焼けた自分の腕を擦りながら、


「どうやら、別の地獄に迷い込んだみたいね」


リンネは口元を緩めた。


「だけど…これは、人間の問題のよう」


リンネは後ろを振り返った。


「異分子が二ついるみたいだけど…」


肩をすくめると、歩き出した。


「何とかして見せなさい」


そして、そのまま消えた。





「ば、ばかな…」


銃声はしなかった。


高坂の目の前にいた涼子の額に、穴が空いていた。


「おやすみ…。名も知らぬ英霊よ」


涼子だった女は顔が変わると、微笑みながら消滅した。


高坂はゆっくりと銃口を下げた。


「この銃の使い方がわかったよ。この銃は人を殺す為には撃てない。救う為なら撃てる」


高坂はグリップを握り締めた。


「どこにいる?梓君」







「光に嫉妬するだと?」


九鬼は、美和子に向かって構えた。


「だけど、光は眩し過ぎるわ。貴女にとってもそうでしょ?か・い・ち・ょ・う」


美和子は笑った。


「…」


九鬼は答えず、唇を噛み締めた。


「闇と戦い!数えきれない敵を殺してきた…貴女。なのに!」


美和子は、ゆっくりと近付いてくる。


「殺しても、こうして…目の前に現れる。殺しても、救われない!忘れられない」


「あ、あ、あたしは」


九鬼の声が震える。


「あなたは、救われない」


「違う!あたしは、闇夜の刃!ただ闇を斬る存在」


「違うわ」


「そうだ!」


九鬼は、乙女ケースを突き出した。


「刃に意思はない」


美和子は、殺意がないことを示すように両手を広げた。


「装着!」


「怯えることもない。悔やむこともない。救われる必要もない」


九鬼の手にある乙女ケースが開き、黒い光が放たれた。


その光に包まれる九鬼を目の前で見つめながら、美和子は跪いた。


「何故ならば、貴女は神なのだから」


美和子の姿が、タキシードの男に変わる。


「闇の女神よ」


「うわああああ!」


変身しながら、九鬼の嗚咽にも似た・絶叫が響き渡った。







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