表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
531/563

赤き星

(と、とにかく…目的は果たせた)


ティフィンは暁直矢の背中を押しながら、できるかぎり遠くを目指していた。



(後は、てめえ次第だ!アルテミア!)








「ちっ」


舌打ちしながら、ミアは立ち上がった。


「ま、まさか…お前がくるなんてな!サラ!」


ミアはサラを睨みながら、ブラックカードを発動させて、体力と怪我を回復させた。


「…」


サラは眉を寄せただけで、微動だにしない。


「出し惜しみはなしだ!」


ミアは、倒れている関谷の背中に手を当てた。


「いくぞ!」


関谷の体が炎に変わり、ミアの身を包んだ瞬間、


「モードチェンジ!」


炎の翼を広げ、天に舞った。


(リンネの次は…サラだと!?情に弱いギラなら、何とか赤の星屑を巻き上げてと考えていたが…)


猛スピードで、その場から飛び去るミアの速さがマッハを超えようとした時、何かが忽然と目の前に現れた。


「天空の騎士団長である我を、振り切れると思ったか?」


空中に浮かぶサラは、溜め息をついた。


「浅はかな」


そして、指を一本だけ動かした。


「な!」


その瞬間、凄まじいGがミアの体にのし掛かると、地面に落下し、めり込んでいた。


「耐久力はなかなかのようだな」


ミアが落下するよりも速く、地面に着地したサラは、めり込む程の衝撃を受けながらも形を保っている鎧を見下ろした。


「お前が何者かは知らぬが…我々でしか相手できぬならば、見逃す訳にはいかぬ」


「く、くそ」


土を掴みながら、何とか立ち上がると、ミアを包む鎧が消えた。


「!」


サラは、目を見開いた。


(な)


そして、息を飲んだ。


自分を睨むミアの姿が、幼き頃のアルテミアと重なったからだ。


「ば、馬鹿な!」


幼きアルテミアを鍛える為の特訓。何度倒しても、アルテミアは立ち上がってきた。


今のミアのように。


「ここで…終わって…たまるか…」


ミアは拳を握り締めた。


「お、お前は…一体!?」


サラは、片手を突きだした。


「あたしは…会わなければならない…」


「サ、サラブレーク!」


サラは本能的に、危険を感じた。その本能が、サラに最強の技を出させた。


「行かないと…」


ミアの足がぐらついた。


そのまま、倒れる寸前…ミアは無意識に呟いた。


「変わってくれ…。ばか星」


「お、お前は!」


サラブレークが放たれるのと、ミアの左手にある指輪が輝くのは同時だった。


核兵器すら、比べ物にならない破壊力をもったサラブレークは放たれた瞬間、かき消された。


「!」


驚くサラ。


と同時に、遠くに離れていティフィンも気付いた。


押す力がなくなったことに気付いた暁直矢が、振り返った。


「どうした?」


振り返った暁直矢の瞳の中を見て、ティフィンの瞳から涙が流れた。


「そうか…。やっぱり…お前は、あいつの許にいくのか…」


ティフィンも振り返った。


「ばか星!」





「な、何だと!?あり得ない!お前は、死んだはずだ!」


サラの攻撃を片手で受け止めて、相殺した…人物は…。


「赤星浩一!」


ミアのいた場所に、悠然と立つのは…学生服を着た、日本人の少年だった。


「そうさ…。俺は、アルテミアに殺された。しかし、アルテミアによって生かされた」


赤星浩一はフッと悲しげに、笑った。


「どういう意味だ!」


サラの頭にある…二本の角がスパークした。


「その意味を知る為の旅だ。すまないが、サラさん」


赤星浩一は、一本前に出た。


「あなたが持つ…赤の星屑を貰うぞ」


「お、お前は!赤の星屑にされ、封印されたはずだ」


サラは、後ずさった。


「時間がない。この姿ではいられないからな」


赤星浩一のプレッシャーに、今度はサラが逃げ出した。


流れ星のように、はるか彼方に消えていくサラを見送りながら、赤星浩一は頭を下げた。


「ありがとう。サラさん」


赤星浩一の手のひらには、赤の星屑があった。


そして、微笑みながら…赤星浩一は崩れ落ちた。


地面に倒れた時には、ミアに戻っていた。







「どういうことだ!」


城に戻ったサラは直ぐ様、玉座の間を目指した。


「何故!あいつが生きている!」


「どうした?サラ」


迷路のような回廊を迷うことなく歩くサラは、途中にいた…戸惑い気味のギラにも気付かなかった。


「アルテミア様!」


玉座の間に入り直ぐ様、跪いたサラは一呼吸をおいてから、ゆっくりと顔を上げ、前にいるアルテミアを見た。


「アルテミア様!赤星浩一が生きておりました。ご存知でしたか」


この言葉は、サラの心の奥で叫ばれただけで、口に出ることはなかった。


「アルテミア様…」


サラは、絶句した。


今まで、自分は…何を見ていたのだろうか。


今まで…臣下として、自分は何を見ていたのだろうか。


「…」


サラは言葉を飲み込み、再び深く頭を下げると、玉座の間から出ていった。


無言でゆっくりと回廊を歩くサラの前に、心配そうなギラが現れた。


「どうした?サラ。何があったんだ」


「…」


しかし、サラはこたえない。


「サラ!」


思わず声を荒げたギラ。


その声に、驚いた訳ではないが…サラは足を止めた。


「サラ…」


「なあ…」


サラはギラの方を向くことなく、口を開いた。


「サラ?」


「一体…我々は、何をしていたのだろうな」


ギラから見る…サラの背中が小刻みに震えていた。


「サラ…」


「ライ様…亡き後、生かされた我々は、アルテミア様を守る為に存在しているはずなのに!な、何故!どうしてだ!」


サラの角に、苛立ちを示す電流が流れ、回廊を照らした。


「サラ…」


ギラは何もできずにも、ただ…電流を纏うサラの後ろ姿を見つめた。






「やはりか…」


城のそばにある…向日葵畑内で、再び座禅を組むと、カイオウは静かに目を閉じた。


「当然じゃない」


そんなカイオウの後ろに、リンネが現れた。


「…」


カイオウは薄目を開けた。


「私達は、ライ様に創られた。故に…愛を知らない」


それだけ言うと、リンネは腕を組みながら、カイオウから離れていく。


「そうだな…」


カイオウはぽつりと呟くと、目を完全に閉じた。






「そう…そうね」


独り呟いたアルテミアは、玉座から立ち上がった。


「あたしは…魔王。決して、勇者と交わることはない」


アルテミアのブロンドの髪が、漆黒に変わる。


「もう…あいつもいない。邪魔するやつもいない」


背中から六枚の翼が、生えた。


「あたしは、魔王としての務めを果たす」


涙を流す瞳が…赤く染まる。


「人類を終わらす時が来たのよ」


アルテミアは翼を広げた。


「あたしは、魔王ライの娘…そして、今の魔王!」


アルテミアは叫びながら、玉座の間から、空に飛び上がった。


「その定めに従うのみ!」


アルテミアの魔力に呼応して、魔界中の魔物が興奮から一斉に叫び声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ