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第49話 生きて行く意味

「ここは…」


意識の戻った僕は、またベットの中にいた。


「気づいた?」


僕を上から覗きながら、紅は微笑んだ。


「あたしの家よ。心配しないで」


「みんなは…」


「2人は隣の部屋で、休んでいるわ」


「2人…?」


紅は視線を少し、僕から外し、


「女神だけは…まだ。でも、彼女なら大丈夫よ」


紅は僕の前に、コーヒーの入ったカップを置いた。


「ありがとうございます」


僕はカップを手に取ると、一口啜った。


「どうして…あなたは、強いのに…いつも迷うのかしら?」


紅は、僕の顔を覗き込みながら、首を傾げた。


僕と同じ日本人だと思うけど…ハーフのように、顔の掘りが深い。


それに、身に付けてる赤のワンピースが、たまらなく似合っていた。


質問の意味もわからず、ただ僕は、しどろもどろになる。


「あっ…そのお」


「女神は強いけど…弱いわ」


紅は、僕の目を見つめ、


「あなたは、強い。意志を強く持って」


言葉の意味はわからなかったが、僕は紅の瞳の中を見つめながら、意味を探した。


その時突然、法螺貝の響きが、家を震わし、地響きが世界を震わした。


「来たわ」


紅は、慌てて部屋を出ようとする。


「待って下さい!」


僕は、紅を止めた。


紅は、足を止めた。


僕は唾を呑み込むと、


「あの時…あなたが歌った曲は…」


再び、凄まじき音が家を揺らし、天井が少し砂に戻った。


僕の頭にも、落ちてきたけど気にせず、紅を見つめた。


「あの曲は」


「あの曲は、あたしが書いた曲」


僕の言葉を遮って、紅は言葉を発した。


僕の方に振り返り、


「生前、あたしが書いた…最後の曲に、なってしまった曲…」


「だとしたら…あなたは」


僕はベットから、身を乗り出した。


しかし、紅はすぐに前を向くと、部屋を飛び出していった。


「紅さん!」


僕の呼ぶ声も、無視して。





家の外では、早くも異変に気づいた…ロバートとサーシャが、迫り来る信長の軍勢と、対峙していた。


「意志の強さで、決まるんだったら」


ロバートは、手の平に意識を集中した。


砂が集まり、やがて…ロバートの手を中心にして、結界が出来上がる。


結界は、家全体を覆う。


「先手必勝!」


結界から、サーシャが飛び出すと、右手を突き出した。


砂が集まり、ドラゴンキラーとなり、右手に装着された。


そのまま、迫り来る大軍に向かって、突進していく。


「ドラゴンとか、巨大なものを、先に片付けて」


家から出てきた紅が、叫んだ。


「大きいもの程、力は弱いわ」


「エメラルド・フラッシュ」


ドラゴンキラーに気を溜め、光の刃として、空に浮かぶB29やドラゴンの群れに、投げつけた。


空気を、切り裂くような音を立て、ブーメランのように、ドラゴンキラーは、敵を切り裂く。


「所詮。彼らは、死んだ者達!生きてるあなた達には、かなわないわ」


紅の言葉に、ロバートは頷いた。


「未練だけで、存在する者より、未来をつくれる、生きているあなた達の方が、強い」


「この世界での戦い方!理解したわ」


サーシャのしなやかな体が、空を舞った。


巨大な竜巻が起こった。


戦車が舞い上がり、騎馬隊が、砂嵐に巻き込まれていく。






「意志の強さ…」


僕は、拳を握り締めると、力を確認し、ベットを飛び出た。




「無空陣」


サーシャは、ドラゴンキラーを装着し、竜巻の流れに乗りながら、巻き込まれた敵を、切り裂いていく。


紅は、歌い始めた。


軍勢のほとんどの動きが、止まる。


「ファイヤー」


動けない敵に向かって、砂から作ったミサイルアーマーを装備したロバートは、次々にミサイルを発射した。


敵は、次々に砂にかえっていく。


「でも…数が多い」


サーシャが、騎馬隊を切り裂いていた時、黒い風が戦場を駆け抜けた。


死角から、風は槍を投げつけた。


気配を感じ、とっさに防御しょうとしたが、槍はサーシャに、突き刺さった。


「貴様も、死人だろが」


「サーシャ!」


ロバートの動揺から、結界が消えた。


サーシャは、空中から落下しながら、砂になっていく。


槍を放ったのは、信長だった。


そのそばに、蘭丸が控えている。


「少しは、戦い方を覚えたか…」


信長は嬉しそうに笑い、


「もうお前らでは、相手にならぬ」


結界が消えた為、進軍しょうとする軍勢を、信長は日本刀で制した。


そして、ゆっくりと刀の先を、家から出てきた僕に向けた。


僕は呼吸を整え、両手を握り締めると、意識を集中した。


僕の両手に鈎爪が、装着され、炎が纏まりつく。


「バーニングクロウ」


異世界で、女神達との戦いで、僕が得た力だ。


それを見て、信長はにやりと笑うと、


「面白い」


両手を広げ、刀を下げながらも、切っ先は…僕に向けていた。


擦り足で、円を描くように、近づいてくる。


「行くぞ」


一気に、間合いを詰めた信長の日本刀と僕の爪が、ぶつかり合って、激しい火花を散らした。





「サーシャ!」


ロバートは、サーシャが崩れ落ちた所に、駆け寄ろうと走り出した。


サーシャだった砂の塊を、横合いから現れた蘭丸が、蹴り崩した。


「蘭丸!」


ロバートの怒りの声が、こだまする。


「フン!お前は、死んだ女に、執着し過ぎだ」


「あんたには、わからん!」


「どうかな?」


蘭丸は、口元を緩めた。


「装着!」


走るロバートの体に、砂が纏わりつき、ミサイルアーマーに変わる。


「ファイヤー!」


両手、両肩、背中に付いたミサイルポットから、全弾発射された。


「たった1人の女の為に…地位も名誉も捨てる」


蘭丸の手から、鞭が飛びだす。


「ある意味…私に近いか…」


鞭は、円を描くように回転し、やがて螺旋状になる。


新体操のリボンを回してるように。


四方から、迫り来るミサイルは、すべて吸い込まれるように、鞭によって、撃墜された。


巨大な火花が飛び、炎が砂になり、雨のように落ちてくる。


そして、地面に落ちる刹那、砂は形を変え、無数のナイフのようになり、ロバート目掛けて飛んでくる。


「何!」


驚いたロバートは、反射的に結界を張った。しかし、ナイフは、結界をいとも簡単に貫いた。


「意志の強さが、すべてだ」


蘭丸は、微笑んだ。


「クッ!」


ロバートは、手をクロスした。


ナイフは、ロバートの全身に突き刺さった。


「ほお」


蘭丸は、感心した。


ナイフは、突き刺さってはいなかった。


とっさに、ロバートは自分自身に結界を張ったのだ。


「結界士か」


蘭丸は、にやりと笑った。


「しかし」


ナイフは鞭に変わり、ロバートのに絡みついた。


「な」


信じられない力で、結界ごとロバートは振り回され、突然できた壁に、叩きつけられた。


鞭が解かれると、今度は針のように尖り、結界を抉るとロバートの首筋をかすり…壁に突き刺さった。


ロバートの首筋から、血が流れた。


「この程度の結界で安心していると…死ぬことになるぞ」


蘭丸は鋭い目つきで、ロバートを射抜いた。





「なぜだ」


信長は剣を交えながら、僕にきいた。


「どういうことです」


信長の斬り返しを、僕は両手の鈎爪で防いだ。


「あの時…お主は…」


信長の攻撃は、激しさを増す。


僕は防ぐので、精一杯だ。


「わしを…」


信長の刀が、僕の鈎爪を押す。


あまりの力の強さに、僕の両腕が、震え出す。


「わしを助けようとした?」


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