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生まれの違い

「終わりよ」


せせら笑ったエミナは次の瞬間、片眉を跳ね上げた。


斬り裂いたと思ったミアの体が揺らめき、消えたからだ。


「残像…ではない」


エミナは周囲を見回した。


いつのまにか、無数のミアが銃口を向けながら、立っていた。


「無駄に、魔力を放出し過ぎだ。空気が揺らんでいるぞ」


華烈火より漏れる熱気を利用して、ミアは幻の自分達を作り出したのだ。


「小癪な!」


エミナは魔力を抑えることなく、さらに周囲に放った。


あまりの熱気に、幻のミア達が消えた。


「そのような小細工で、女神を惑わすことなどできるか!」


しかし、そう叫んだエミナの視界から、すべてのミアの姿が消えていた。


「惑わすつもりはない」


周りを見回すエミナの頭上から、声がした。


「ただ…お前が、人間体であるかぎり…死角はできる。女神の感知能力が発動する前ならな」


「な!」


エミナは天井を見上げたのと、そこに張り付いていたミアが落下するのは、同時であった。


「人間が、神を真似ているのだ!この姿こそが、神だ!」


「そうだな」


ミアは空中で反転し、エミナの真後ろ…床に着地すると同時に、灼熱に燃える鎧の表面に右手を当てた。


肉が焼ける匂いが、王座の間に漂った。


「何をする気だ?」


エミナは振り返り、自分の背中に手を当てるミアに首を傾げて見せた。


「ば、馬鹿を…起こすのさ!」


ミアは痛みに耐えながら、目を見開き、叫んだ。


「関矢!目を覚ませ!お前は、あたしのものだ!」


「何を言うかと思えば」


エミナは苦笑すると、目力だけで、ミアを吹き飛ばした。


「うっ」


床を転がった後、焼けただれた手を押さえ、苦悶の表情を浮かべるミアを見下ろし、せせら笑ったエミナは、ゆっくりと近づくと、ミアの脇腹を踏みつけた。


「この男は、バンパイア…女神の洗礼を受けた。もうあたしの奴隷よ!」


そう叫ぶと、ミアを蹴り飛ばした。


「ぐぇ!」


女神の蹴りを受けて、ミアは血を吐いた。


「中身が、破裂したかしら?」


うふふと楽しそうに笑うエミナ。


「わかりやすいな」


そんなエミナの様子に、今度はミアが、笑って見せた。


「強がりだけは、一人前か…?」


エミナは眉を寄せた。


「やはり…お前は…何もわかっていない」


ミアは床に手を付けると、ふらつきながら立ち上がろうとした。


「もう…飽きたわ」


エミナは顔をしかめると、ミアに向けて、手を突きだした。


「死ね!」


手のひらから魔力を放とうとした瞬間、エミナの身に変化が起こった。


「!?」


突きだした腕を包んでいた鎧の表面から…煙が、発生した。いや、腕だけではない。全身から煙が立ち上り、やがて一つにまとまると、人の形を成した。


「ミアさん…」


関矢になった煙は、ミアに手を伸ばした。


「馬鹿な!」


絶句するエミナ。


「関矢浩也!」


ミアは片膝をつきながらも立ち上がると、ブラックカードを脇腹に当てた後、火傷している手で握り締めた。


「例え…お前が、忘れたとしても!お前とあたしの絆は切れない!」


ミアの左手の薬指についた指輪が、輝いた。


「馬鹿な!お前は、あたしのものだ!」


エミナは、煙でできた関矢に手を伸ばした。


「馬鹿なが、多いな」


ミアは完全に、立ち上がった。


「来い!」


そして、関矢に向かって叫んだ。


すると、煙でできた関矢の体が再び燃え上がった。


「くっ!」


手を伸ばしていたエミナは、関矢の炎に炙られて、顔をしかめると、思わず手を引いた。


「これが…」


炎はその場で四散すると、ミアの四肢に絡み付いた。


「華烈火だ」


「な、舐めるな!人間ごときが!」


エミナの目が赤く輝くと、回し蹴りを放った。


「フッ」


鎧を纏ったミアは不敵に笑うと、片手で蹴りを受け止めた。


「な!」


「火傷するぜ」


今度は、ミアが蹴りを放った。


「ぐえ!」


脇腹にヒットしたミアの蹴りを受け、エミナは身を捩った。


「ば、馬鹿な…。あたしは、女神だ!」


苦痛に歪んだ顔から、歯を食い縛ると、ミアのそばから離れ、体勢を整えた。


「この世界を支配する為に生まれた存在!貴様ら、蛆虫のようにわく!人間とは違う!」


エミナの絶叫とともに、その姿が変わった。


六枚の黒い翼を広げると、髪の毛も黒く染まった。


「あたしこそが!神だ!」


圧倒的な魔力を放つエミナを目の前で感じても、ミアは微動だにしない。


恐怖も感じていなかった。


逆に哀れみを感じていた。


「違う…」


ミアは、呟くように言った。


「お前は…生まれたのではない。つくられたのだ。1人の女のエゴでな」


「蛆虫が!その鎧を返せ!」


エミナの両手の爪が伸びると、手のひらが太陽のように光りだした。


「いや!もういい!あたしのものにならないならば!消えろ!」


その凄まじい光に、ミアは目を細めた。


「星の鉄槌か…」


「空…」


エミナが叫ぼうとする前に、ミアが口を動かした。


空雷牙(クウライガ)


ミアはゆっくりと、左手をエミナに向けた。


「雷牙!」


エミナが叫んだ。


その刹那、エミナから放たれた光と、ミアから放たれた光が、玉座の間でぶつかった。


「うおおおおっ!」


エミナの絶叫とともに、玉座の間だけではなく、城自体が中から崩れていった。


「すまないな…」


ミアは、光の中で懺悔した。


「あたしのように…お母様から産まれていたら…」


ミアは一度、目を瞑ってから叫んだ。


「モードチェンジ!」


すると、ミアの背中から白い翼が生えた。


「ば、馬鹿な!?」


空雷牙を放ちながら、エミナは目を疑った。


「お、お母様!」


「…」


ミアは、悲しげに…優しく微笑んだ。


「そ、そんな…はずが…ない」


それが、エミナの最後の言葉となった。


2つの空雷牙のぶつかりは、城を崩すだけではなく、瓦礫と化していく…すべてを消滅させた。







「い、今のは…」


1つ目と戦っていた暁直矢は倒す寸前、魔物の特殊能力をミアのように利用して、城内から移動していた。


遠く離れた場所からも、2つの太陽のような光のぶつかりを見ることができた。


そして、光が止んだ後…玉座の間があった空間に、浮かぶミアの姿があった。


しかし、暁には…それが、ミアとは思えなかった。


「あれが…女神か」


と思ってから、暁は拳を握り締めた。


「なんと言う…魔力」


手のひらに汗が、滲んでいた。


(しかし…)


ぎゅっと握り締めた後…暁は力を抜いた。


(何故だ…。恐怖を感じない。まるで…)


暁は、ミアに背を向けた。


(天使…)


それから、ゆっくりと歩き出した。


(あの小娘と…少年は、死んだのか…。チッ)


暁は心の中で舌打ちすると、足を止めた。


「確認しなければならない。例え…命が危なくてもな」


暁は振り返ると、空に浮かぶ天使に向かって慎重に歩き出した。

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