真実はカード
(しかし…エミナとやるとしても…。関矢の身に、赤の星屑があるかぎり…やはり隠れることも不可能か)
ミアは、自らのカード残高を確認した。
「チッ」
軽く舌打ちすると、ミアはバイクを召喚した。
「とにかく…琉球に行く。あそこは、防衛軍の前線基地がある。魔王軍もおいそれとは…?」
バイクに股がろうとしたミアは、妙な気配を感じて振り返った。
「?」
ミアのそばにいた僕も釣られて、振り返った。
「ここは、どこだ?」
「まったく…。あんたの方向音痴には」
いつのまにか言い争う2人がいた。1人は…僕と同じ学生服を着た少年と…KYOTOで会った妖精だった。
「フン!まあ〜行き先など!どこでも」
学生服の少年は、胸ポケットからカードを取り出した。
そのカードを見て、ミアは眉を寄せた。
(ブラックカード!)
それから、にやりと笑うと、ミアはバイクから離れた。
「どこのどいつか…知らないが…」
僕の横を通り過ぎると、ミアは少年と妖精の前まで来て、手を伸ばした。
「そのカードを返して貰おうか」
「か、返す!」
僕はミアの言葉に、驚いた。
「?」
突然そばに着たミアに気付き、少年は顔を向けた。
「お、お前は!」
妖精はミアに気付き、声を上げた。
「ブラックカードには、シリアルナンバーがある。そいつは元安定者であるティアナ・アートウッド…最後は、赤星浩一に渡されたものだ」
ミアの言葉に、少年は目を見開いた後…すぅーと細めた。
「それを知っている…君は何者だい?ただの小学生ではないようだけど」
少年もまた…ミアの左手にある指輪に気付いた。
「そのカードは、赤星の前は…あたしのものだった」
ミアは、少年の手にあるカードをじっと見つめた。
「おかしなことを言うな。赤星浩一の前と言えば…ティアナ・アートウッドの娘ということになる。その娘とは」
「フン!」
少年の言葉が終わらない内に、ミアは鼻を鳴らすと、剣を召喚し、横凪ぎの斬撃を放った。
「天空の女神」
少年は剣をブラックカードで、受け止めた。
「現魔王…アルテミアということになる」
少年は、間近まで接近したミアの目を凝視した。
「アルテミア!」
その名に、妖精ははっとして、突然の出来事に唖然としている僕に顔を向けた。
「だとしたら…まさか!?」
「ティフィン!」
空中で固まっている妖精に向けて、少年は叫んだ。
「だとしたら、面白い」
少年は口許を緩めると、ブラックカードに指を走らせた。
すると、剣が召喚された。
「チッ!」
ミアは、後方に飛んだ。
少年が握る剣は、数秒前までミアがいた空間を斬り裂いた。
「このカードは預かりものだ。ちゃんとした持ち主が現れたら返そう。しかし!」
少年はカードを胸ポケットに差し込むと、剣で構えた。
「偽りでその名を語るならば!容赦はしない」
「直矢!」
ティフィンは、少年とミアの間に飛び込んだ。
「邪魔するな。ティフィン!俺はこういう偽りを語る者が許せない」
少年は、視線をティフィンに向けた。
その隙を、ミアは見逃さなかった。地面を蹴ると、一気に間合いを詰めた。
「クッ」
ミアの動きに気付き、少年はティフィンを払いのけ、何とか剣を受け止めた。
「返して貰おうぞ。こいつがあれば…何とか戦える!エミナとな!」
「エ、エミナだと」
少し変な体勢で、ミアの剣を受け止めた少年は片眉を跳ね上げた。
「そうですか!エミナ様にご用ですか」
また突然、誰かが4人のそばに現れた。
「それは、ちょうどよかった」
シルクハットを被った…一つ目の魔物がそばに立っていた。
「ば、化け物!」
絶句する僕を、一つ目はジロッと見つめた。
「あなたが、赤の星屑の適合者で…。我が主、エミナ様がお待ちです」
一つ目は頭を下げると、ゆっくりと僕に向かって手を差し出した。
「さあ〜行きましょう」
「させるか!」
いつのまにか、一つ目の死角に回ったティフィンは、魔物の首筋に蹴りを放った。
「おやおや」
ティフィンの蹴りが決まった瞬間、彼女の姿が消えた。
「無闇に、わたくしに触れない方がいいですよ。わたくしに大した力はございません。その代わり…わたくしに触れたものは、どこか遠くに飛ばされます。行き先は、わたくし自身にもわかりません」
そう言うと、一つ目は僕を掴んだ。
「ただしに、わたくしから触った場合は、わたくしの意志で行き先を決めれます」
「関矢!」
ミアは僕に向かって、ジャンプした。
「チッ!」
少年もジャンプしながら、手を伸ばした。
「ようこそ!我が女神の城に」
僕とミア…それに、少年は何もない正方形の部屋の中にいた。
「まあ〜招待していない人達もいますが…」
僕に掴まって、ミアが…ミアに掴まって、少年が来ていた。
「エミナの城の中か」
ミアは僕から手を離すと、少年の手を振り払い、一つ目に剣を向けた。
「手間が省けた」
「そうですね」
一つ目はミアを見つめながら、右手で僕の肩に触れた。
すると、僕は部屋から消えた。
「女神が求めているのは、彼だけです。赤の星屑の適合者と同調できるあなたは…殺せと言われています」
一つ目は、笑った。
「適合者はいない。今のあなたの力で、わたくしを倒せますか」
「一人…忘れているぞ」
少年は、ミアの前まで来た。
「女神エミナか…。俺にとっても邪魔な存在だ」
少年は、剣を一つ目に向けた。
「ここで倒してやるよ」