表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
511/563

試された運命

「チッ!」


ミアはマシンガンの引き金を弾きながら、身を捩り、僕を後ろに突き飛ばした。


「てめえは逃げろ!何とか、時間をつくってやる!」

「時間をつくるとは…」

「な!」


ミアは、後ろから声がして目を見開いた。


「どうやってかな?」


いつのまにか、ミアと僕の間に…カイオウが立っていた。


「くそが!召喚!」


ミアがカードを手に取った瞬間、カイオウは横目で彼女を睨んだ。


「!」


それだけで、ミアの体がふっ飛んだ。


「それにしてもだ…」


今度は僕に、目を向けた。


それだけで、僕は動けなくなった。


「赤の星屑と同じ魔力を感じたと聞いていたが…今は、まったく魔力を感じぬ。それに、見た目も…赤の王には、似ていない…。お、お主は…何者だ?」


カイオウの問いに、動けないはずの僕の口だけが動いた。


「僕は…人間…。ただ…元の世界に…帰りたいだけ」


僕の言葉を聞いた瞬間、カイオウの目が見開かれた。


「ま、まさか!?異世界から来たというのか!」


カイオウは、腰につけていた鞘から巨大な剣を抜いた。


「異世界から来た…戦士。それだけでまた、人間は夢を見るかもしれん!」


「ぼ、僕は…」


「人間の滅びは決まってしまっておる!今さら、希望などと!」


カイオウは剣を振り上げると、一気に振り下ろそうとした。


「まだ…滅ぶと決まってはいないさ」


僕の前に、剣を手にしたミアがテレポートしてきた。


「折角、集めたポイントがまたなくなってしまったがな」


ミアは、振り下ろす寸前のカイオウの剣を受け止めていた。


「小娘!そんな非力な力で、我が太刀を止められると思っているのか!」


カイオウは、剣に力を込めた。


「!」


その次の瞬間、まるで空気を斬るような無感覚を味わった後…剣は深々と地面に突き刺さっていた。


「何!?」


驚くカイオウの目に、自らの剣に添うように、接近してくる刃が映った。


「馬鹿な!」


刃はしなり、カイオウの右肩から腰にかけて斬り裂いた。


「やはりな!」


下に振り下ろした剣を捻ると、カイオウの懐に潜り込みながら、脇の下を通り過ぎたミアは、横凪ぎの斬撃を叩き込んだ。


流れるような一連の動きで、カイオウの後ろまで移動したミアの手にあった剣は…折れていた。


「やはり…なまくらでは、斬れないか」


ミアは剣を捨てると、カードの表面に目をやった。


「まだいけるな…」


呟くように言ったミアの攻撃を受けて、カイオウはわなわなと全身を震わした。


「ば、馬鹿な!今の動きは!?」


ミアの方に、振り向くカイオウ。


その時、視線が僕から逸れた。


動けるようになった僕は…何故か…マシンガンを手に取っていた。


その理由は自分でもわからないけど、逃げるという選択よりも先に僕を動かした。


「お、お前は一体!」


驚きの声を上げるカイオウの背中に、マシンガンの銃弾が降り注ぐ。


「な」


カイオウは振り返ると、マシンガンの銃口を向ける僕を見つめた。


「どこを見ている!お前の相手は、あたしだ!」


カイオウの死角から、ミアが襲いかかる。


「!」


振り向くカイオウの右目に、鋭い刃が接近してくるのが見えた。


咄嗟に、首を捻り、刃を避けるカイオウは、反射的に剣を振るった。


しかし、その剣先は、ミアに当たることはなかった。


「槍!」


カイオウの剣は、ミアの拳の先…数ミリを通り過ぎていた。


「流石だな…」


ミアは槍を引きながら、後ろにジャンプして距離を取った。


「やはり…剣より、槍がしっくりくるな」


ミアは槍を一振りすると、脇に構えた。


「魔力の差だけで、勝負が決まると思うなよ!」


キリッと睨むミアと、震えながらも銃口を向ける僕を、目線だけで交互に見た後、カイオウは笑い出した。


「確かに、小娘!お前の剣がもっとましなものならば、我を斬り裂いていたであろう。それに、成長し…力を付けた時、お前はさらに強くなる!そして」


カイオウは、僕の顔を見た。


「無謀ではあるが、女をおいて逃げなかった男よ。お前達のような者がいるならば、まだ…人間は捨てたものではないのかもしれん」


カイオウは拳を突きだし、ぎゅっと握り締めた後、手を開いた。


「あ、あれは!ま、まさか!赤の星屑!?」


ミアは、声を荒げた。


「お前達が何故、これを知り、どうしょうとしているのはかわからん。しかし、残り4つを持つ者は、108の魔神の上に立つ!騎士団長のみ!お前達がすべて、集められるとは思えない!」


カイオウは再び、赤の星屑を握り締めた。


「が!」


カイオウはミアの方に、体を向けると、赤の星屑を投げた。


「もっと見せてみろ!お前達の可能性をな!」


「!」


ミアは、赤の星屑を受け取ると、カイオウを見た。


「後悔するぞ!」


ミアの言葉を、カイオウはせせら笑った。


「した瞬間、お前達から奪えばよいだけだ」


「フン!」


ミアは鼻を鳴らすと、カイオウに向けて、走り出した。


そして、カイオウの目の前で、地面に槍を突き刺すと、棒高跳びのように、彼を飛び越え、僕の後ろに着地し、背中に赤の星屑を叩き付けた。


「関矢浩也!魂を燃やせ!」


「え!」


次の瞬間、背骨の中に、熱いものが入った感覚に、僕は背中を反らした。


「燃えろ!」


ミアは、後ろにジャンプした。


「うわああああっ!」


熱いものが、背骨から全身に広がり…すべての骨が燃えていく感覚にとらわれた頃には、僕の全身…すべてが燃えていた。


「何!?」


炎に包まれる僕を見て、カイオウは眉を寄せた。


「魔力は増大している…。しかし、それを制御できていない」


「いいんだよ。これで」


燃えている僕の後ろで、炎に照らされながら、ミアはにやりと笑った。


「カイオウ。見せてやるよ!」


ミアは、僕に向かってジャンプした。


「これが!てめえらを倒す力だ!」


「な!」


カイオウは、目を見開いた。





それから、数分後…。


「ハハハハハ!」


カイオウの笑い声が、周囲にこだました。


「面白い」


口許を緩めると、カイオウは僕らに背を向けて、その場から去っていった。


その様子を、全裸になり、その場で崩れ落ちた僕の目がとらえていた。


まだ…頭がぼおっとしており…全身から湯気が上がっていた。


「カイオウ…」


ミアは、去っていくカイオウの背中を見送っていた。複雑な表情を浮かべて。


「ど、どうなったの…僕は」


体の中がまだ、熱かった。


「あと…4つだ」


ミアは拳を握り締めると、僕の方に体を向けた。


「いくぞ!一気に高みまで、神の領域までな」


ミアはそう言うと、カードで僕用の服を召喚し、渡してくれた。


「な、何だよ!これ!」


渡された服を見て、僕は顔をしかめた。


なぜならば、学ラン…学生服だったからだ。


「かつて異世界から来た男が、着ていたもののレプリカだ。ブルーワールドでは、伝説の勇者の服として有名だ」


「だ、ダサい」


だけど、文句を言っても、裸はまずい。渋々、僕は身に付けた。


その時、僕は気付いていなかった。


燃えずに残った…カードが示す僕のレベルが…一気にはね上がっていることに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ