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第40話 闇の言い分

外に出され、5メートル程の空中にテレポートさせられたアルテミアは、何とか体勢を立て直し、地面に着地した。


「ここは?」


アルテミアが開けた穴のすぐ横だった。


「チッ」


舌打ちすると、また穴に飛び込もうとしたら、一斉に銃を構える音がした。


いつのまにか、数百人の防衛軍が、アルテミアを囲んでいた。


アルテミアは、チェンジ・ザ・ハートを握り締め、四方を囲む防衛軍を睨んだ。


「何のつもりだ」


1人の軍人が、一歩前に出た。隊長のようだ。


「ここは、防衛軍本部です。例え、特許が認められている勇者と言えど、無断で入ることは、禁止されています」


「なんだとお」


アルテミアは睨みを効かしながら、一歩前に出た。


一斉に、銃口が向く。


「あたしは、誰の指図も受けない」


アルテミアは、銃を構える兵士達を見回した。


兵士達は、少し震えている。


「ここから、去って頂きたい」


隊長の言葉には、なぜか力がこもっていた。


「誰が、逃がせと言った」


隊長の横に、フードを被ったラルが現れた。


隊長は、敬礼した。


「私は、アルテミアを殺せと命じたはずだ」


ラルは、隊長の方を向いた。


隊長は敬礼を崩さず、


「はっ!しかし、彼女は勇者であり、これまでも、数多くの魔物を退治してきた。人類の宝であり」


「違う!」


ラルの一喝が飛んだ。


隊長は軽く、飛び上がる。


ラルは隊長に近づき、


「こいつは、勇者ではない…こいつは、単なる化け物だ。我々人類が、倒すべき化け物なんだ」


耳元で囁いた。


「化け物…」


隊長の額に、汗が流れた。


「そうだ。こいつは、人間ではない…。そう思うだろ?お前達も」


ラルの瞳が、赤く輝く。


「てめえ!誰が化け物だ!」


アルテミアは、チェンジ・ザ・ハートを構えながら、ラルに叫んだ。


ラルはにやりと笑い、隊長から離れて、囲む兵隊よりも、後ろに下がった。


「化け物…。人と違う化け物…」


隊長が呟く。


「化け物…。人と違う化け物」


囲む兵士が呟く。


「化け物…人と違う化け物」

「化け物…人と違う化け物」


「化け物…人と違う化け物…化け物…人と違う化け物…化け物…人と違う化け物…化け物…人と違う化け物」


ラルは笑い、呟いた。


「イッツ!ショウタイム!」


銃口から、火花が散った。


一斉に。


「モード・チェンジ!」


ストロングモードに変わったアルテミアは、銃弾を弾き返す。


「こいつに、通常攻撃は、通用しない!炎や、水の属性の魔法攻撃に変えろ!」


ラルの言葉に、兵士達はカードを取出し、魔力を発動させる。


「炎よ!」


「水よ!」


「燃やせ!」


「薙ぎ倒せ」


数百の兵士から、放たれた攻撃。それを飛んで避けると、剣を持った兵士が接近戦を挑んでくる。


みんな、目はとろんとしているが、死を恐れず、肉体の限界を越えて、攻撃してくる。


「くそ」


アルテミアは仕方なく、一度戦線から、離脱することにした。


「モード・チェンジ」


翼を広げ、飛び上がったが、結界が張られているみたいで、固い透明の壁にぶつかった。


「ラル!」


ラルは、結界の外にいた。


ニヤニヤと口元に、笑みを讃えている。


結界を壊そうとしたアルテミアの背中に、ミサイルの束が迫る。


振り返ったアルテミアは、唖然とした。


「こんな中で!」


ミサイルポットを召喚した五人の兵士は、躊躇もなく、全弾発射した。


アルテミアに当たることはなかったが、流れ弾は結界に弾かれて、同じ仲間に当たった。


爆発し、手足が吹き飛んだ。


「馬鹿が」


アルテミアは結界を蹴ると、その反動で、ミサイルポットを装着している兵士の前に着地した。トンファータイプに戻したチェンジ・ザ・ハートで、ポットを破壊した。


休みなく、魔法を使っている為、ポイントをすべて消費した兵士も出てきた。


そんな兵士は、カードにシークレットコードを入力した。兵士の体が、赤く光出す。


それは、絵の具では出せない血の色だった。


「うおおおっ!」


奇声を発しながら、突進してくる兵士の異様な魔力の高まりに、アルテミアは避けられるギリギリのタイミングまで引き寄せ、くるっと避けた。


輝く兵士は、仲間の群れに飛び込み、爆発した。


「自爆!?」


それは、サーシャが使ったソード・オブ・ソウルに近かった。


ポイントがなくなると、次々に突進してくる兵士。何とか避け続けるが、次々に爆発が起きた。


「ラル!」


アルテミアは、爆風に煽られながら、結界の外にいるラルを睨んだ。


しかし、ラルはただ笑っているだけだった。











「アルテミアは、自我に目覚めてから、人を殺したことがない」


安定者の間で、腕を組ながら、クラークはいた。


「少なくとも、勇者になってからは...一度もない」


クラークのそばで、踞っていた安定者達は、ブラックカードを取出し、回復魔法を使う。


そんな様子をちらっと確認したクラークは、無視して、上を見た。


「さて…どちらに転ぶか」






「このままじゃ…ヤバイ」


アルテミアは攻撃を避けながら、打開策を考えていた。


しかし、思い浮かばない。


(殺すか)


頭に浮かんだ言葉を、アルテミアは首を振って否定した。


「まだ余裕があるか…」


ラルは口元を緩めると、結界内にいる兵士に告げた。


「ポイントに余裕がある者も、ない者も…」


ラルの瞳が光った。


「自爆せよ」


その命令に、兵士達は、カードを取出し、


「了解しました」


シークレットコードを打ち込んだ。


「馬鹿な」


アルテミアは、唖然とした。


兵士達の体が赤く光り、血が暴走する。


「やめろ!」


アルテミアの叫びも虚しく、兵士達は自爆した。


同時に爆発した魔力の暴発は、互いに共鳴し、狭い結界内を、爆風と衝撃波が踊った。


「やったか?」


ラルは結界を解くと、爆風でできた煙の中に、アルテミアの気配を探った。眉をひそめ…やがて、フッと笑った。


「この程度では、無理か」


「うおおおっ!」


煙を切り裂いて、アルテミアが飛び出す。チェンジ・ザ・ハートを槍に変え、


「Blow Of Goddess!」


女神の一撃を放つ。


「無駄だ」


フードの下の白髭をたくわえた口が大きく開き、アルテミアの雷撃も、カマイチも飲み込んだ。


「我に、魔法は通じない」


まるで、大きなトンネルの入り口くらいの大きさになっていた口が、もとに戻る。


ラルはゲップをすると、アルテミアの姿を探した。辺りから、煙が晴れても姿がないのだ。


ただ兵士の残骸が、散らばっているだけだった。


いきなり、凄まじい突風が、頭上からラルを襲い、フード付きのコートを切り裂いた。


「上か!」


ラルが顔を上げると、空には太陽しかいない。


「残念」


アルテミアの声が、真後ろから聞こえた。


「何!」


ラルが振り替える前に、ドリル状に回転した槍を、背中から心臓に向けて突き刺す。


「やったか?」


しかし、槍から伝わる感触がない。まるで、空気を突いたような。


「惜しいな」


ラルがクククククと笑うと、体が反転した。


後ろが前になり、アルテミアの目の前に、口があった。


口はそのまま裂け、アルテミアの倍くらいの大きさになると、アルテミアを飲み込んだ。


口の中に、宇宙が見えていた。


「ハハハ!馬鹿目!」


ラルは、口を元の大きさに戻すと高笑いした。


「この中は、亜空間と繋がっている!お前は、二度と戻ってこれない」


笑いが止まらないラルは、突然口許を押さえた。吐き気をもよおしたように、嗚咽する。


ふさいだ口から、光りが漏れだし、唇の間から…剣先が飛び出してきた。


そのまま、剣を立てると一気に、唇を切り裂いた。


剣から漏れる光りが、ラルの真っ黒な体に染み込んで、輝きだす。


「ぐぇ!」


ラルの口が大きく開き、光りを吐き出した。


光輝く球体は、蜜柑の皮が剥けるように開き、六枚の翼になる。


「アルテミア!」


アルティメット・モードとなったアルテミアは、ライトニングソードを構えていた。


「その剣は!」


ラルには、見覚えがあった。ラルは、唇から血を流しながら、苦々しく呟いた。


「ライトニングソード…」


黄金に輝くアルテミアの鎧とライトニングソードに呼応するかのように、傷口から光が血管のように、ラルの体を走った。


「おのれ、ティアナめ」


ラルを形作り闇が、球体になり、口だけが真ん中についていた姿で空中に浮かんだ。


「何だ?」


予測不可能な動きに、アルテミアは指を突き出し、雷鳴を呼んだ。


空が一瞬にして、黒い雲に覆われ、雷がラルに落ちた。


しかし、雷は口の前に、飲み込まれた。


「アルテミアよ!死ぬ前に、お前に、我の本当の姿を見せてやろう」


アルテミアは、何度も雷を落とすが、すべて口から吸収される。


「無駄だ!この闇のコーティングは、破れない!しかし…」


球体となったラルの体にヒビが入る。


「このコーティングを脱いだ時、真の絶望が始まるのだ」


口の部分が、球体の内部に潜り込んでいき、その部分を中心として、ヒビが大きくなり、卵の殻のように、闇が割れていく。


その中から、現れたのは、一糸も纏わない裸体。


体を包む闇より、黒い髪に、切れ長の目に、豊満なバスト。 


「女!?」


重力を無視したように、上を向いたバストを強調し、ラルは空中で立っていた。


その姿は、人間そのものだが…口が2つあった。顔と、お腹に。


「我は、魔王ライの分身にして、女神達の母なる存在。闇の女神、アマテラス」


「アマテラス…」


「異世界では、天照らすらしいが…。我が、照らすものは、闇!」


「フン」


アルテミアは鼻を鳴らすと、ライトニングソードから、トンファータイプへと変えた。


「そんな無防備な体で、大丈夫なのかよ」


そして、両手を天に、突き上げた。


アルテミアの両手に、風神と雷神が降りてくる。


両目が赤く光り、口元から牙がこぼれた。


「くらえ!」


アルテミアは、両手をアマテラスに向けて、突き出した。


「空雷牙!」


アルテミアの両手から、地球のすべての雷を集めたくらいの雷撃が、放たれた。


アマテラスは口元を緩めながら、避けることはしなかった。


直撃した。いや、通り抜けた。


アマテラスの遥か後ろにある山脈の半分近くが、一瞬で消え去った。


万年雪が積もっている程の結構高い山々が、消えたのだ。


「威力は凄いけど…」


目の前のアマテラスは、肩をすくめ、


「当たらなければ、意味がない」


今度は、耳元から囁かれた。アルテミアが振り向くと、右側にアマテラスがいた。


「あなたの空雷牙は…魔王のと、根本的に違う」


今度は、左側にもアマテラスがいた。


「3人!?」


幻影でなかった。確かに、3人いるのだ。


「注意力もね」


左右のアマテラスは、手刀を繰り出すと、アルテミアの手からチェンジ・ザ・ハートを奪い取った。


「魔王の技は、空間さえも破壊する。目に見えないものも」


左右のアマテラスは、腹にある口の中に、チェンジ・ザ・ハートを入れると、口をつむんだ。


「何をする」


アルテミアは蹴りを放ったけど、足は…アマテラスの体を擦り抜けた。


「ククククク…。我の体は、こことは違う空間にある」


アルテミアは、パンチを叩き込んだ。腕は、簡単にアマテラスの体を貫通したが、感触はない。


パンチの勢いのまま、アルテミアの全身が、アマテラスを通り過ぎた。


「お前は、何も知らない!お前が使う力も!お前自身のことも!」


アマテラスの回し蹴りが、アルテミアの首筋に叩き込まれた。


アルテミアは、吹き飛んだ。


何とか、翼を開き、体勢を整えると、


「向こうは、殴れるのに…こっちからは、殴れない!」


アルテミアは首筋を押せえながら、少し嘔吐いた。


「この六枚の翼も、気に入らない」


アルテミアの後ろに、六人のアマテラスが現れ、一枚づつ翼を掴むと、


「あの女を思い出させる!」


アマテラスの目が、怒りで吊り上がる。そして、力任せに、六枚の翼を引き契った。


「きゃああー!」


悲鳴を上げて、アルテミアは地面まで落ちていく。


激突に、地面にめり込むアルテミアを、地上にいたアマテラスが踏みつけた。


「残念なことを教えてあげる」


アマテラスは、力を込めて踏みつけた。


さらに、アルテミアは地面にめり込む。


「あんたが、さっきまで持っていたライトニングソード。あれは、時空間さえ切れる剣だった。あの剣で戦ってたら、まだ少しは相手になったでしょうね」


アマテラスは、嬉しそうに笑った。


「な…な……なめるな!」


アルテミアの鎧がさらに、輝きを増す。アマテラスの足を擦り抜けて、立ち上がると、また蹴りを繰り出す。


「学習能力がないの」


蹴りは、またもや擦り抜けた。


「どんなに魔力を増しても、あたしに触れることはできない」


「畜生!」


アルテミアはもう一度、回転して蹴りを放つ。


それに合わせて、アマテラスも蹴りを放つ。


二人の足が交差し、擦り抜けたアマテラスの蹴りだけが、アルテミアに当たった。


アルテミアは、ふっ飛んだ。地面を滑るアルテミアの向かうに、またアマテラスがいた。


爪先で、アルテミアの頭を止めると、無理やり髪の毛を掴み立ち上がらせ、腹にパンチを何度も叩き込む。


「ぐぇ!」


アルテミアの口から、鮮血が飛び散った。


アマテラスは、アルテミアの髪の毛を離すと、崩れ落ちるアルテミアの顔面に、膝を叩き込んだ。


アルテミアは、海老ぞりになりながら、また背中から地面に落ちた。


今度は、滑るアルテミアを無視して、アマテラスは自分の腹にある口を擦った。


「ティアナ…今から、あんたの娘が死ぬわ…。あんたと同じように、何もできずにね」


アルテミアは腕に力を込め、何とか立ち上がろうとしたが、予想以上にダメージはすごく、なかなか立ち上がれない。


そんなアルテミアをせせら笑い、アマテラスは腕を組んで、アルテミアの様子を眺める。


「アルテミア…本来ならば、あんたなんかが、産まれてくるはずがなかった。あたしと、ネーナ、マリー…その3人こそが、魔王の意志のもと、あらゆる魔物を支配する存在だったはず」


アマテラスは、アルテミアに近づき、上半身を上げたアルテミアを足で、また倒した。


「そのはずが!あの女!ティアナが、魔王と出会ったことで」


アマテラスの顔が、鬼のような形相になり、アルテミアを何度も蹴りだした。


「あんたが産まれ!魔王の妻となるはずだったあたしが、魔王の影としてしか、存在できなくなった!」


アマテラスは、アルテミアの髪を掴み、無理やり立ち上がらせると、力任せに投げ飛ばした。


「だから、お母様を殺したのか!」


アルテミアは空中で膝を抱え、回転すると、見事に着地した。


「ハハハハ!」


アマテラスは、腹を抱えて笑った。


「違うわ。殺したのは、あたしじゃない」


アマテラスは体力を回復する為に、ブラックカードを取り出したアルテミアにきいた。


「…お前は、このカードがどうやって機能されているのか…知ってるのか?」


アルテミアの傷が、全快する。


アルテミアは息を整えると、アマテラスを見据え、


「知るか!」


そのまま、ゆっくりと右手を突き出し、指でかかってこいと、アマテラスを促す。


「フン」


アマテラスは、鼻で笑うと、自分のブラックカードを取り出した。


「召喚!」


アマテラスの左右に、無数の砲台が、並んだ。


「このポイントにより、無限に召喚できるアイテム。これらの武器は、専用の格納庫兼工事で、無限に止まることなく、製造、補充されている」


「それが、どおした」


アルテミアに向けて、砲台はミサイルの発射態勢に入る。


「その無限魔法を発動し続けるには、巨大な魔力を必要とした。その為の生け贄を」


アマテラスは、アルテミアを指差した。


「それが、お前の母、ティアナの心臓だ!」


ミサイルは発射された。


「ティアナの心臓が、カードシステムを保持する為に、使われ続けているのさ」


「な」


驚くアルテミアに、数百発のミサイルが襲いかかる。


アルテミアは空中に飛び上がり、追い掛けてくるミサイルを避けるだけでなく、目をつぶると、軌道を読み、手でそっと添えるように軌道を変えた。そして、次々にミサイル同士をぶつけた。


それは、アルテミアキラーとの戦いで得た見切りだった。


爆発の華が咲く中、アルテミアはアマテラスの前に着地すると、雷撃を放った。


アマテラスのそばにある砲台が、爆発した。その爆風も、アマテラスを擦り抜けていく。


「お母様の心臓を!」


「そうよ」


アマテラスは腕を組んだまま、アルテミアに微笑んでいた。楽しそうだ。


「お前が、お母様を!」


アルテミアの怒りは、頂点に達した。


「許さない!」


だけど、アルテミアのすべての攻撃は、アマテラスに当たらない。


「勘違いしないでよ」


アルテミアの何度も繰りだされる拳を、アマテラスは片手で受けとめた。


「くそ!」


力を込めたが、アマテラスはびくともしない。


アマテラスは、ため息をつくと、


「あのねえ。あたしが示唆してあげたけど…」


今度は、クスッと笑い、


「殺したのは、人間よ」


「人間…?」


唖然とするアルテミアに、アマテラスは拳を掴んだまま、少し引き寄せ、耳元で話しだした。


「カードシステムをつくり出したティアナは、当時の最高機関、元老院とは別の組織をつくった…それが、安定者のもとよ。カードシステムを保持するには、大量の魔物を倒し、魔力を集めなければならない」


アルテミアは、掴まれている右手だけでなく、左手を出したが、それもアマテラスに掴まれた。


「もともと、ブラックカードとは無限に、ポイントと使える特権カードではなく…強い魔物を倒す為、強力な魔法を使う為に、できたもの!」


「それが、どうした!」


アルテミアは、アマテラスを睨み付ける。


「大有りよ!システムを守る為、安定者はつねに、危険な戦いを強いられていた。あんたの母親みたいに、物好きは少ない。何年も続く戦いの中で、普通の人間は疲れてくる」


「くそ!」


アルテミアは、動くことができない。力で、おさえられていた。


「それで、あたしは提案してやったのよ!強い精神力をもつ人間を人柱にして、永遠に楽ができると」


突然、アルテミアの手を離すと、アマテラスは、顎を蹴り上げた。


「クッ」


アルテミアは顎を上げると、何とか蹴りを避け、アマテラスから距離を取った。


「そして、安定者達は、元老院のメンバーを殺し…ティアナも殺したのよ」


「馬鹿な!お母様が、人間ごときに、そう簡単にやられるわけがない」


「そうね…でも」


アマテラスはにやけながら、アルテミアを指差した。


「あんたのその鎧や、ライトニングソードは、何だ?もともと、ティアナのものだ!ティアナは、お前の為に力の殆どを、封印したのさ。いずれ訪れる娘の運命の為にね」


アルテミアは、自分の体を包む黄金の鎧を見た。


「お母様…」


アルテミアは目をつぶった。


「力を封印した…あの日、ティアナは、味方のはずの安定者に、裏切られ…殺されたのさ!」


アルテミアの瞳から、涙が流れた。


「後ろから、剣でぐさりとね」


アマテラスは、大笑いした。


「間抜けだね〜 」


「心臓を抜かれ、驚きながら、倒れるあいつの表情が、忘れられないね」


笑いが止まらないアマテラスを、アルテミアは睨んだ。


「もういい…もうわかった」


「心臓が抜かれても、死のうとしないあいつを、消滅させてやろうとしたら…」


アマテラスは、拳を握り締めた。


「魔王が、現れ…死ぬ前に、コールドスリープをかけた。そんなに…そんなに、あいつが大切なのか!だから、あたしは、安定者の1人となり、影から、あいつが守りたがってた人の世界を、支配してやったのよ」


アルテミアの周りを、七人のアマテラスが囲んだ。


「人は、魔物に殺され!折角集めたポイントも、あたしたちに好きに使われるのよ!ハハハハハハハハハハハハ!」


アマテラスの笑いは、止まらない。


「もういい…お前は、死ね」


アルテミアは、虚空に手を突き出した。


「来い」


アルテミアは、歯を食い縛りながら、命じた。


「何を召喚しても、同じことだ」


アマテラスは、一斉に飛び掛かる。


アルテミアは、ギリギリでジャンプして、攻撃を避けると、


「根性見せろ!チェンジ・ザ・ハートオオオ!」


叫んだ。


空中にも、現れたアマテラス達が攻撃しょうとした時、どこからか、回転する物体が飛んできて、アルテミアとアマテラス達の間に割って入った。


アルテミアは素早く、それを手にとると、二つに分け、そして十字に交差させた。


「馬鹿な…ありえない」


絶句するアマテラスの目の前で、ライトニングソードを握ったアルテミアが、それを横凪ぎに振るった。


実在しているすべてのアマテラスの胸元に、傷が走った。


「貴重なアドバイス…感謝するぜ」


アルテミアは、ライトニングソードの握りを変えると、今度は上段に構えた。


「だったら、あたしも一つアドバイスしてやるよ」


アマテラスは、胸元から流れる血を指先で確認し、


「あたしの体に…血が」


わなわなと震える。


「お前はただ…触れられないというだけで!」


「アルテミア!」


アマテラスは、1人だけになり、地上から、アルテミアに手を突き出した。


「ネーナやマリーには、及ばない」


アルテミアは、アマテラスに向けて、ライトニングソードを振り落とす。


「舐めるな!あたしは、魔王の分身!空雷牙くらいは、だせる!」


アマテラスの手から、凄まじい光線が放たれた。それは、先程のアルテミアの空雷牙に、匹敵する。


「そんな雷撃!ジュリアンの蹴り程でもないわ」


アルテミアは、光を切り裂いた。


光が切り裂かれた瞬間、アマテラスは、目を見開いた。


「そんな…魔王の分身であり、安定者であるあたしがああ!」


気付いた時、アルテミアは目の前にいた。


横凪ぎに払った剣が、足を切った。


「お前には、負けない」


アマテラスの腹の口が、大きく開き、アルテミアを飲み込もうとする。


アルテミアは身を屈めると、アマテラスの股下から、ライトニングソードを思い切り、上に切り上げた。


剣先は股から、腹の唇を切り裂き、アルテミアは一度抜くと、顔面に突き刺した。


そして、ライトニングソードを回転させ、ドリルのようにして、貫いた。


「馬鹿な…」


穴が開いた顔から、血が噴き出しながら、アマテラスはふらふらと後ずさる。


そして、後ろにある防衛軍本部の横にある奈落の底へ、落ちていった。


アルテミアは、肩膝を突き、激しく息をした。


「何とか…勝てた」


しかし、アルテミアに休んでる暇はない。


アルテミアは立ち上がり、ライトニングソードを見つめた。


「真実を突き止めないと」








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