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第392話 たぎらす炎

「ギラブレイク!」


「モード・チェンジ!」


互いに持てるすべての力を使い、戦う2人の戦士。


しかし、ほんの少しだが…差がつき始めていた。


「こ、これが!」


ギラは驚愕していた。自らが放った雷撃よりも、速く動くジャスティンのスピードに。


「空の女神を倒した力か!」


ギラブレイクを掻い潜り、ギラの脇腹に突き刺さるジャスティンの拳。


「ぐわあ!」


思わず身を捩る程の痛みに、ギラは苦悶の表情を浮かべながらも、内心は微笑んでいた。


(そ、そうだったな…)


ギラの脳裏に、数十年前の記憶がよみがえる。


(あんな子供が…)


最初会った時、ギラは少年だったジャスティンを赤子を捻るように扱えた。


しかし、次に会った時…油断はあったが、ギラは負けた。


まだ十代の少年にだ。


(そうか…)


ギラは、自らに向ってくるジャスティンの動きを目で追いながら、心の中でフッと笑った。


(成長か…)


魔神であるギラの強さの違いは、本気か本気でないである。


しかし、人間であるジャスティンは違う。


ここまでの強さを得る為に、日々努力したのだ。


「うおおっ!」


ジャスティンの拳が、ギラの体を連打する。


(そうか…)


ギラは、拳の嵐を受けながらも、笑っていた。


痛みをこえた感動があった。


普段ならば、意地でもつかぬ両膝を地面につけていたが、気にならなかった。


なぜならば、今始めて…人間を感じているからだ。


「うおおっ!」


ジャスティンの渾身の右が、ギラの巨体をふっ飛ばした。


背中から、雪の中に落ちたギラを見て、ジャスティンは始めて意識した。


高次元の戦いというものを。


凄まじいぶつかり合いをしながらも、足下の雪が溶けてある部分が少ないのだ。


無駄なく戦えば、最小限の動きですむ。


ジャスティンは、自らのスピードとキレには満足していたが、ある問題にぶち当たっていた。


かつてDigシステムで、カバーしょうとしていた問題点である。


つまり、肉体の防御である。


騎士団長であるギラの体に、何発も叩き込まれた拳は…皮が捲れ、骨が砕けかけていた。


これでも抜く力をも考慮し、闇雲に叩いているように見えて、繊細に拳を繰り出していたのだ。


しかし、人間のあらゆる物理的攻撃に、傷一つもつかないと言われる騎士団長の肉体を連打することは、ジャスティンの拳にダメージを与え続けていた。


(まだ蹴りがある)


傷だらけになり、血を流し始めた拳の感覚を確かめながら、ジャスティンは構え直した。


「フフ…フハハハ!」


ギラは立ち上がることなく、笑いだした。


「!?」


ジャスティンは、そんなギラから殺気がなくなっていることに気付いた。


ひとしきり笑った後、ギラは空を見上げながら、言葉を発した。


「強くなったな…。人間とは、ここまで強くなるものなのか…」


ギラはそこまで言うと、目を瞑り、


「我々の負…」


勝敗を認めようとした。


しかし、その時、天から落ちてきた雷が、ギラの言葉をかき消した。


「我々騎士団長に、負けはない」


「!?」


ギラの前に落ちた雷に、ジャスティンは目を見開きながらも、拳を握り締めた。


「な!な、なぜ…お前がここにいる」


ギラは思わず、上半身を起き上がらせた。


「フン」


2人の間に現れたのは、サラだった。


「サラか…」


ジャスティンは敢えて、笑って見せた。


「サラ!」


ギラの叫びに、サラはジャスティンを見つめながら、口を開いた。


「すべての人間が、こやつのレベルまで到達することはない。こやつは、特別なのだ。たった1人で、人間を判断するとはな」


「そうかな?」


ジャスティンはサラの登場で、強張ってしまった筋肉をほぐす為に、全身の力を抜いた。


「うん?」


サラは、目を細めた。


「人間は、ここまで来るよ。1人でも到達した者がいるならな。それを指標にしてな!」


ジャスティンはサラを睨み付け、


「人間をなめるな」


低い声で怒りを伝えた。


「フン」


ジャスティンの言葉に、サラは鼻を鳴らし、


「貴様はなめていない!」


赤毛を逆立て、


「なめているのは、貴様の方だろうが!」


怒りを露にした。


「!?」


サラから放たれた気が、ジャスティンを数ミリ後ろへ押した。


その際に、ジャスティンの皮膚に痛みが走った。


「なめているのは、貴様だ!我とやり合った時、貴様はモード・チェンジを使わなかった!なぜだ!使わなくとも勝てると思ったか!」


サラの怒りの理由を知ったジャスティンは、途切れない痛みを皮膚に感じながらも、質問にこたえた。


「あの時はまだ…使う準備ができてなかった」


「言い訳を!」


サラが人差し指を向けると、ジャスティンの後ろに見えた雪山が吹き飛んだ。


「!?」


ジャスティンの頬が切れ、血が流れた。


「我はギラとは違う!貴様の土壌に乗ることはない」


「そうらしいな」


ジャスティンは血を拭うことなく、サラの動きから目を離せなくなっていた。


ギラはあくまでも、ジャスティンを倒すことのみに力を集中していた。


だからこそ、ギラブレイクにしても威力は、至近距離を破壊するまでに抑えられていた。


しかし、サラは違う。


倒す為に、威力を抑えるつもりはない。周囲を破壊しても、ジャスティンを殺すことを優先するだろう。


普段ならば、サラもそのようなことをしない。


しかし、相手がジャスティンだからである。


「貴様の強さは、危険だ。赤星浩一とは違う意味で、王の心を惑わす」


サラは、手のひらを広げた。


「俺がか?」


ジャスティンは笑った。


サラの手の向きから、逃げることはない。


「ライは知っているはずだ。そんな強さを!彼の隣には、ティアナ・アートウッドがいたのだからな!」


「く!」


サラは、顔をしかめた。


「誰よりも、人の未来の為に生きた人がな」


ジャスティンは、自然と微笑んだ。


「時間をやる」


サラは手を下ろすと、ジャスティンを睨みながら告げた。


「傷を回復させろ。今の状態で戦っては、騎士団長の名が泣く」


「これは、ご丁寧に」


ジャスティンは、プロトタイプブラックカードを取り出すと、治癒魔法を発動させた。


すべてが回復する訳ではないが、体力が戻った。


服を破り、拳に巻くと、


「待たせたな」


ジャスティンは改めて、構え直した。


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