表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
340/563

第332話 新しい力

目にも止まらない動きで、魔物の群を瞬殺した乙女プラチナ。


「…やはり…あなた…」


あまりにあっさりと魔物を瞬殺したのを見てしまった為、拍子抜けしてぽかんとしまった高坂は…ゆっくりと拳を下ろすと、感嘆の声を発した。


「高坂部長…」


乙女プラチナが眼鏡を取ると、変身を解け…理沙に戻った。


「あたしには、この世界に来た理由があります。本当は、すぐに戻るはずだったのですけど…」


理沙はゆっくりと振り向くと、唇を噛み締め、


「親友の命が狙われました。その危険は、今も続いています。だから!あたしは、まだ戻れない」


殺気にも似た雰囲気を漂わした。


それだけで、普通の人間ならば気を失っただろうが、高坂は違った。


理沙の放つ気よりも、彼女の思いに衝撃を受けていたのだ。


高坂の体が気持ちの昂りから、震え出した。


「君の言う親友とは…生徒会長のことか」


「…」


理沙はコクリと頷いた。


「だとしたら…か、彼女の命を狙ったのは、女神!?君と同じ…」


「厳密には、同じではない。女神ソラの力は、あたしを遥かに凌駕している」


理沙の言葉に、高坂は絶句した。


「な」


「それに、今のあたしの力は、乙女ガーディアンより少し強いくらい。だから…」


そこで言葉を切ると、理沙は空を見上げた。


「しばらく、あたしはこの島で、力を溜めます。ムーンエナジーを集めて」


「ムーンエナジー?」


高坂は眉を寄せ、


「月の力か…。そうだとすれば、情報倶楽部の部室で読んだことがある。この世界の月は、あなたの分身で…闇から人間達を助ける為に、夜空を照らしていると!だとしたら…それほどの力を持つあなたが、わざわざ自らの力を集めなくてもいいのではないですか?」


「そうね」


理沙は苦笑し、


「月と融合すれば…女神ソラとも戦えるかもしれない。だけど!」


その後、突然眼光が鋭くなった。


「もし!そうなれば、月がなくなり…人々は、闇の中の生活に戻ってしまう」


「うっ」


高坂は口ごもった。


そんな高坂の反応を見て、理沙は視線を少し下にした。


「月を消す訳にはいきません。もう何千年も前から、月はあそこにあるのだから…」


「…」


高坂は思わず、黙り込んでしまった。


確かに、月をなくす訳にはいかなかった。


それに、目の前の女神は、自分の力を削っても、月を創ってくれたのだ。


これ以上…何を望むというのか。


他力本願である自分を恥じた。


そんな高坂の様子に気付き、理沙は背を向けた。


「最終日まで…ムーンエナジーを集めます。そうでもしないと、まともに戦えません」


そのまま、洞窟内から消えようとする理沙に、高坂は手を伸ばした。


「教えて下さい!ソラの目的は、何ですか!」


切なる高坂の声に、理沙は動きを止めた。だけど、振り向くことはなく、


「詳しくは知らない。恐らくは、生徒為の抹殺。だけど…紛いなりにも女神の目的が、それだけとは考えられない…!?」


そこまで言ってから、はっとした。


口許に、うっすらと笑みを浮かべると、


「そう言えば…懐かしいものの存在を感じた。この島に来てから。それこそ、何千ぶりに」


振り返り高坂を見た。


「今のあたしには、関係ないものだが…。それは、この島のどこかに封印されている。隠したのは、あなた?」


「………フッ」


理沙の問いに、高坂は笑って見せた。


「図星?」


「いえ…」


高坂は、首を横に振り、


「俺ではありません」


きっぱりと言った後、まじまじと理沙の顔を見て、


「だけど…その存在を感じることができるのですね?」


逆に聞き返した。


高坂の質問に、理沙は肩をすくめた後、


「だって〜一度だけ、それを身に付けたお父様を見たことがあるから…」


目を細めた。


「あたしの姉と…揉めている時に」


「み、身に付ける!?あ、あなたのお父様に、姉!?」


高坂は、今日一番の衝撃を受けた。


「あら〜知らなかったの?あれが、何か…」


高坂の反応を見て、理沙は少し驚いた。


「うう…」


高坂は、何も言えなくなった。


そんな高坂を見て、理沙は前を向いた。


「でも…仕方がないかもね。どの部分かまではわからないから…変なところだったら、何かも理解できないかもしれない」


「変なところ?」


1人納得している理沙に、高坂は詰め寄った。


「あれは、何ですか!」


理沙は笑いを止め、少し声を低くくし答えた。


「知らない方がいい」


「なぜですか!」


そんな言葉で、納得できない高坂。


「なぜならば…あれは、人を惑わす。一度関わったならば…余程の人間でなければ、心が喰われる」


理沙の心が喰われるという言葉に、高坂ははっとした。


(森田部長!)


目を見開いたまま…凍り付いた高坂。


その反応は、背を向けていても、理沙はわかった。


「天空の女神も、その存在を気付いているようだけど…そのもの自体を知らない。今どこにあるかも感知できていない」


「天空の女神…」


高坂は、息を飲んだ。


「彼女が、味方になってくれればいいんだけど…多分、それどころではなくなる」


理沙は、遠くを睨んだ。


「どう意味ですか!俺達は、女神ソラを何とかする為に、この島に来たんですよ!この島で、総力戦を…」

「それが、愚かだったのよ」


理沙は、高坂の話を遮った。


「人間如きに、女神は倒せない。それよりも何よりも…人は、あなたのようなものばかりじゃない」


「だったら、俺達はこの島に来たのは無意味で!ただ殺されるだけだというんですか!」


思わず声を荒げた高坂に、理沙は首を横に振った。


「無意味ではないわ。だけど…無謀ではあった」


「く!」


高坂は拳を握り締め、


「だったらなぜ!あなたは、俺達に警告した!大勢の人が死ぬと!」


理沙に近付こうとした。


しかし、理沙のプレッシャーで前に出れない。


「高坂部長…」


理沙は横顔を向けた。


その悲しげな顔に、高坂の興奮が治まった。


ただその横顔を見つめた。


「できるだけ…人の犠牲を最小限におさえる為には、この島に来たことはよかったと思います。だけど、この島は特殊だった。それに」


理沙は再び、体を高坂に向けた。


「あたしも、命をかけましょう。この島での戦いに!その為には、しばらく力をためないといけない」


「命を…」


高坂の目に、微笑む理沙の顔とだぶって別の顔が映った。


「君は!?」


高坂は、その顔に見覚えがあった。


結城校長によって、停学処分を言い渡させた時…校長の娘であるリオの隣にいた少女。


虚ろな目で下を向く少女。


笑ったら…素敵なのに。


高坂はそう…印象を受けていた。


「気休めかもしれませんが…あなたに力を与えましょう!この世界で、あたしがつくった力は、一度…天空の女神にすべて奪われましたけど…」


理沙がそう言うと、外から再び洞窟内に光が飛び込んできた。


それは、高坂の後ろを回り、目の前で止まった。


「こ、これは!?」


宙に浮かぶ…ダイヤモンドの眼鏡ケース。


高坂はそれを、恐る恐る掴んだ。


「最終日まで、みんなをお願いします」


理沙は頭を下げた。


「待ってくれ!」


そのまま消えそうな理沙を慌てて止めた。


「乙女ソルジャーの力は、名前通り…女しか」


高坂の頭に、男の中西が乙女ブラックになった様子がよみがえった。


(しかし…あいつの正体は、女神だった)


考え悩んでいると、理沙が首を横に振った。


「基本…男女は関係ありません。他を守る心が、大切なのです。恐らく、女性は母性が強い。だから、変身しやすいのでしょう。その為、乙女戦士と言われるようになりましたが…正式名称は、月影です」


そして、高坂を見つめ、


「他を守る心ならば、あなたは申し分ない」


深く頷いた。


「月影…」


「はい。月の光であるあたしの側にいるという意味で、あの人が名付けました」


懐かしそうに目を細める理沙に、思わず訊いてしまった。


「あの人とは?」


「月影シルバー」






その会話の数秒後…理沙は、洞窟から消えた。


力を蓄える為に。


高坂は手に入れた力を握り締めると、洞窟から出た。


戦いの場に戻る為に…。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ