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第288話 火種

「さあ!グレイ!お前の本当の目的を言え!」


ティアナを挟んで、グレイを睨む剣司。


「俺の目的は…」


剣司の言葉に改めて、グレイは自分の心に問いかけた。


ティアナを案内する。目的は、それだけだった。


しかし、グレイに芽生えた小さな思い。


だけど、そのことを口にする気はなかった。


「お、俺の目的は…」


そこに少しの嘘があってもいい。当初の依頼だけを、口にすればいいのだ。


「ただ彼女を案内…!?」


グレイの言葉の途中、洞窟に反響する拍手が邪魔をした。


「!?」


驚く3人の耳に、拍手に混じって、声が聞こえてきた。


「す、素晴らしい!」


声だけではない。突然、洞窟内が明るくなったのだ。


強烈な昼間の日差しにも匹敵する眩しさが、一瞬で3人の視界を真っ白にした。


「その苦悩こそが、人間ですよ」


「お前は!」


ティアナは、光を放つ存在が誰かわかった。直ぐ様、ライトニングソードを突きだして、ジャンプした。


「あなたの危険性は、理解してます」


ライトニングソードは、確実に光源であるものに突き刺さったはずだった。


しかし、何の感触もなく、ティアナは地面に着地した。


「目が見えなければ…正確に狙えまいて」


陽炎のように揺らめき、ティアナの突きをかわした存在は、グレイの前まで移動した。


光に慣れた3人の目が、洞窟に現れたものの姿を映した。


「不動!?」


その瞬間、3人は絶句した。


「前の御二人は、初めてでしたね」


炎に鎧をつけた姿をしている不動は、グレイと剣司に深々を頭を下げた。


「何の用だ!」


騎士団長の登場は、前に立つ2人の動きを止めるのに効果的だった。


しかし、ティアナだけが違った。ライトニングソードを握り締め、頭を下げている不動の後ろから襲いかかった。


「まあ〜慌てなさるな」


頭を下げている為に、曲がっている背中から、不動の上半身が生えてきた。


「何!」


振るったライトニングソードを、炎でできた剣で受け止めた。


「あなたの相手は、じっくりとしますよ」


ライトニングソードを受け止めている上半身が、不動本体から分離し、別の個体となった。


「用がすむまで、大人しくしてくれますか?」


もう1人の不動の背中から、四本の腕が生えてきた。阿修羅像のような姿になった不動は、合計で六本となった腕に剣を持ち、ティアナに斬りかかる。


腕の長さは、伸縮自在であり、信じられない方向から斬りかかる攻撃に、ティアナは防戦に回った。


「クッ!」


剣司は鞘に手をかけると、一気に抜刀した。


神速の刃が、不動を斬り裂いたが…炎の化身である不動には意味がなかった。


手応えなく、刃は体を素通りした。


「あなたには…用はありません」


不動は、剣司に人差し指を向けた。それだけで、剣司の上着が燃え上がった。


「うおおっ!」


上着を脱ぎ捨て、急いでカードを使って消火をした。処置が早かった為、何とか体に燃え移ることはなかった。しかし、暗殺用のカードも残高が零になってしまった。


「魔法?」


不動は、安堵した剣司の手からこぼれ落ちたカードを見て、


「ラルめ…。私には、何も言っていないが…何かからくりがあるようだな」


人差し指を向けた。


一瞬で燃え尽きたカード。


ちらりと剣司を見ると、精神的なダメージから片膝を地面につけていた。


「まあ〜いいです。雑魚にかまっている暇はないので」


後ろでは、3本の腕を斬り裂いたティアナが、自分の分身を追い込んでいた。


「忌々しい…女だ」


不動は人差し指を、グレイに向けた。


「くそ!」


剣を握り締め、睨むグレイを見て、不動は両手を広げると、肩をすくめて見せた。


「そんなに、緊張しなくていいですよ。ご心配なく、今はあなたを殺しませんよ」


「目的は、何だ!」


「すぐに、自分で理解しますよ」


炎の温度差で、微笑むような顔の表情を作った不動の指先から、何かが飛び出し、グレイの額を射ぬいた。


種のようなものがめり込み、額の肉を焼きながら、中に染み込んでいく。


「うわああ!」


剣を離し、両手で頭を押さえながら、もがき苦しむグレイ。


「この火種は、人間の感情を燃やし…火を点けます。燻っていた思いを!」


不動は、頭の髪をかきむしりながら、両膝を地面につけたグレイを見下ろし、


「行くのです!愛しい妹のもとへ」


両手を広げ、天を仰いだ。


「…」


グレイは突然、無言になると…両手を地面に下ろした。


そして、数秒後…顔をあげると、落とした剣を掴み、洞窟の奥…砦の方に走り出した。


「ごきげんよう」


その後ろ姿に、笑いを送った不動。


「き、貴様!彼に、何をした!」


不動の分身を斬り裂いて、ティアナが襲いかかってきた。


「厄介な剣だな…。それに」


不動は振り向きざま、右手のすべての指から炎の弾を、散弾銃の如く放った。


「は!」


ティアナは、炎の弾をすべてライトニングソードで受け止めた。


「鬱陶しい女だ!」


不動もティアナに向かって、走り出した。


ティアナは、不動に斬りかかると見せかけて、唐突に横に飛んだ。不動によるプレッシャーと、予想以上の今まで経験したことのない恐怖による精神的ダメージが消えない剣司のそばに着地すると、自分のカードを使って、治癒魔法を発動させた。


「ここは、任せて下さい!何だか、嫌な予感がします」


「!?」


落ち着きを取り戻した剣司は、己を恥じた。しかし、そんな暇はなかった。


日本刀を掴むと、


「かたじけない!」


グレイのあとを追う為に、走り出した。


「無断なことを!」


不動は、奥へと走る剣司に向けて、炎の弾丸を放った。


「は!」


しかし、ティアナはライトニングソードを分離させると、槍にして投げた。


回転するチェンジ・ザ・ハートが盾になり、炎の弾丸を弾いた。


「チッ」


それを見て、不動は目標を丸腰になったティアナに変えた。


その動きを読んでいたティアナは、不動が手を向けた時には走り出していた。


手を伸ばし、チェンジ・ザ・ハートを掴むと、


「モード・チェンジ!」


ティアナの雰囲気が変わった。


冷気を纏ったライトニングソードを手にして、不動へとジャンプした。


「チッ!」


舌打ちした不動の横を通り過ぎた。


すると、不動の手と足が凍りついていた。


「モード・チェンジ!」


不動の後ろに回った瞬間、ティアナの姿が消えた。


音速を超えたティアナの動きが、不動の凍りついた部分を斬り裂いた。


「素晴らしい!」


不動は、自らの手や足を斬られる感覚に思わず叫んだ。


「人間を超えた動きだ!」


ティアナは、不動の体にある小さな種のようなものを探した。


以前の戦いで、それを斬り裂いたことを覚えていた。


間違いなく、あれが不動の実体であろう。


不動の体の中を、止まることなく移動していたコアというべきものを、ティアナは目で捉えた。


(あれを斬れば…勝てる)


コアに向けて、一気にライトニングソードを突き出した。


「やはり…私の弱点を知っていましたか」


「な!」


ティアナは絶句した。


「この世のあらゆる鉱石よりも固い…私の核を、傷付けたあなたの剣ならできたでしょうね!私を倒すことが!」


不動は、剣を突きだしたまま…唖然としているティアナに向かって、嬉しそうに笑いかけた。


「初めてですよ!魔王に創られてから初めて!本気になれますよ」


「クッ!」


ティアナは状況を判断して、不動から離れた。


突き刺したはずの切っ先が、まったく刺さらなかったのだ。


「その相手が、人間とは…思いませんでしたが!」


不動の体が、変わった。先程までの揺らめいている炎ではない。


炎を焼く…マグマへと変貌していた。


「私は…ライ様の地獄の業火!灼熱地獄をこの身に宿す!炎の神だ!」


叫ぶだけで、灼熱の息吹が放たれ、周りの空気を焼いた。


「幸いなことに、ここは地下!地脈が近い!」


不動の体が、足下から太さを増していく。


一瞬で倍近くの大きさになった不動は、ティアナを見下ろし、


「楽に死ねると思わないことです」


にやりと笑った。


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