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番外編 ティアーズ・フォー・ティアナ 第27話 宿命の出会い

「なぜ…こんな旅を続けるのですか?本部にいた方が、研究しやすいのではないのですか?」


焚き火をしながら、結界を張り…今夜は森の中で、野宿することを決めた一行。


ティアナは、カードをノートパソコンに差し込み、データを打ち込んでいた。


「本部の中じゃ…直接データを取れないわ。できれば、一匹一匹違う種類の魔物を倒した時のポイント回収率を知りたいの。それに、回収方法も…。現場に出ないと、気づかないことが多すぎるわ」


「でも…こんな足で稼いで、カードを配らなくても」


ジャスティンは、自分のカードを見つめ…ため息をついた。


「まだ試作品だから…一定のレベル以上の人しか、渡してない。いずれは、全民衆に配りたいわ」


一流の発明家でもあり、一流の戦士であるティアナ。


そんなティアナを、ジャスティンは尊敬していた。


「それに…」


ティアナは今日のデータを入力し終えると、ノートパソコンを閉じた。


「元老院は、あたしの研究を認めていない」


ティアナの言葉に、ジャスティンは驚いた。


「そんなことはないでしょ!この研究は、魔物と戦えるようになる唯一の手段なのに」


「あたしも、わからないわ。だけど…気にいられていないのは、確かよ」


2人の会話の中、クラークは黙り込んでいた。







「お主が、ホワイトナイトか」


旅を続けて、数ヶ月。


ティアナ達3人は、数千の魔物に囲まれていた。


「妖しげなカードを使い、我ら魔物を殺しているそうだな」


三人を、海岸近くに追い込んだのは、海の騎士団。


「さすがに…並の魔物達と違う」


ブーメランを投げつけながら、ジャスティンは走る。海岸の砂が足を取り、走りにくい。


「ジャスティン、クラーク!伏せて!」


ティアナは、ライトニングソードを構え、円を描くように舞った。


「ライトニングウェーブ」


頭を下げたジャスティン達の頭上を、衝撃波が円を描くように広がっていく。


それは、周りを囲む魔物達を突き抜けながら、集団の後ろまで一瞬で、突き抜けた。


その一瞬の後、電流が魔物達の全身に走り、絶叫がこだました。


低レベルの魔物は、それだけで消滅した。


「何?」


数千の魔物に、一撃でダメージを与えたティアナに、騎士団を率いていたカイオウは、唖然とした。自分の体も、今の攻撃で痺れていた。


「カイオウ!覚悟」


驚いたカイオウの一瞬を、ティアナが見逃す訳がなかった。


魔物の群を飛び越えて、ティアナの一振りが、カイオウを袈裟切りにした。


カイオウの肩から胸にかけて傷が走り、血が噴き出した。


とどめの一撃を。


ティアナが、ライトニングソードを突き刺そうとした時、無数の氷柱が飛んできた。


「モード・チェンジ」


ティアナの体が変わり、炎の剣で氷柱を叩き落とした。


「マリー様…」


思ったよりも、ダメージが大きいことに気づき、カイオウは片膝を浅瀬につけた。


足元だけ、海に浸かっていた為、ティアナの雷撃を逃がすことができたのだ。


「地上なら、即死していた」


カイオウは傷口を抑えながら、冷や汗を拭った。


「カイオウ!隊を退かせ!こいつらは、あたしが始末する」


マリーの瞳が妖しく光った。


「できるかしら?」


ティアナは、剣を一回転させた。


その余裕な感じに、マリーは切れた。


「家畜が!あたしを、誰だと思っている」


マリーの姿が、解放状態である悪魔の姿になる。


「ただのわがまま娘でしょ」


ティアナは、肩をすくめた。


「この世界の当主の娘であるあたしに!」


マリーの魔力が上がっていく。


「ティアナ先輩!」


ジャスティンは、ティアナに駆け寄ろとした。


噂に聞いている…女神の一撃。その威力は、核以上だと言われている。


「邪魔するだけだ」


ジャスティンの肩を後ろから掴み、クラークは止めた。


「クラーク」


「あの人なら、大丈夫だ」


クラークは微笑み、


「俺達は少し離れたところで、衝撃に備えて、2人で結界を張るぞ」


渋々頷いたジャスティンとクラークは、後方にテレポートした。




「A Blow Of Goddess」


マリーの両手から、洪水のような水撃が…圧倒的な水圧が一瞬にして、ティアナを襲う。


「どんなに凄い技でも…ただ力任せでは、駄目よ」


ティアナは、全身を螺旋状に捻ると、ライトニングソードに回転をかけるとドリルのようにして、マリーに投げつけた。


針よりも細い切っ先が、回転しながら、水を切るのではなく、周囲に受け流していく。


ティアナは、剣に向けて跳び蹴りをする。


できるだけ、水に当たらないように。


剣は、津波を突き抜け、マリーの胸元向って飛んでいく。


「え?」


自ら放った技の中から、いきなり剣が飛び出して、マリーは驚きながらも、何とかギリギリ避けた。


胸元を少し切り裂きながら、剣はマリーの横を通り過ぎていく。


そのすぐ後、ティアナが飛び出してきた。


ライトニングソードを避けた直後の為、体勢を崩していたマリー脇腹に、ティアナの蹴りが入った。


九の字に曲がるマリーの体。


ティアナは、マリーの体を支点にして、後方にジャンプした。着地地点に、トンファータイプに戻ったチェンジ・ザ・ハートが飛んで来て、ティアナの両手に装着される。


「は!」


ティアナは気合いを込めると、体勢を崩したままのマリーに、両手のトンファーを叩き込む。


マリーは、サンドバックのように殴られ続ける。


「は!」


砂浜に足を取られることもなく、打撃を叩き込むティアナに、マリーは翻弄される。


「マリー!」


突然、ティアナの後ろの砂が爆発し、マグマを伴ってネーナが現れた。


「炎の女神!」


女神の一撃の威力が治まったので、ジャスティンとクラークは結界を解いた。


噂に聞く2人の女神を、一度に見るなんて。


興奮しているジャステンとは違い、クラークは冷静に、


「隙を見て、近づくぞ。女神を倒すチャンスだ」




「モード・チェンジ」


ティアナはチェンジ・ザ・ハートを、剣に変えた。


後ろから、襲いかかってくるネーナを切り裂いた。


「な」


絶句するネーナの体が、凍る。


ライトニングソードは、冷気を帯びたソードに変わっていた。


「今だ!」


クラークの掛け声で、2人はネーナのそばにテレポートした。


「貰った」


クラークの影切りが、ネーナを切り裂こうとした。


ジャスティンは補佐に回る。


しかし。


「な、舐めるなあ!」


痛みと自尊心を傷つけられた怒りの為、マリーの全身からあらゆる場所に向けて、氷柱が放たれた。


それは、クラーク達より速い。


「うわああ」


クラークは、氷柱の接近に気づいた。


「モード・チェンジ」


ティアナは、風よりも速く動き、クラーク達の盾になる。


殆どは、鎧で防いだ。しかし、何本かは体に突き刺さった。


「先輩!!!」



氷を溶かして、何とか自由を取り戻したネーナ。


クラークは、突然の氷柱に気を取られた為、ネーナの肩を切り落とすだけになってしまった。


ネーナは舌打ちすると、取り乱しているマリーを後ろから、無理やり抱きかかえ、海の向こうに飛び去っていた。



「先輩!」


ジャスティンは、ティアナに走り寄った。


「大丈夫よ…」


ティアナは氷柱を抜くと、回復魔法で傷を治し、平然と歩きだそうとした。


だけど、少しよろめいて、片膝を砂浜につけた。


「先輩!」







海から離れ、見晴らしの良い高台に、テントを張ったティアナ達。


ティアナは横になり、動けなくなっていた。


「モード・チェンジの使いすぎ!?」


ジャスティンの説明に、クラークは頷いた。


「あの技は、人の身で、使うことは無理なんだ。せいぜい、1日2回が限度だ」



モード・チェンジ。


魔法が使えなくなった人々の為、ティアナが最初に考案したのが、モード・チェンジという…人間の肉体を、各種属性に自動変化させる能力だった。


しかし、肉体に負担は尋常ではなく、鍛えた体でも筋肉が激しく破壊された。ティアナであっても、チェンジ・ザ・ハートと一緒であることが条件であった。


雷から火…属性の近いものなら、負担は少ないが、火から水など…まったく正反対の属性に、変わることは、無理がありすぎた。


今回、ティアナは炎から、水と無理なチェンジをし、さらにスピードアップのチェンジも使った。


負担が、大きすぎた。


ティアナは、ジャスティンに語っていた。


「本当のモード・チェンジは、属性だけでなく、それに伴って、それに合った肉体も変わる…そんな理想を夢見た。だけど…人の体では、無理ね」


寂しく笑ったティアナは、モード・チェンジに変わるものとして、カードシステムを考案したのだ。


人々の為、自らの体を実験にし、今もまた、自ら実戦に出て、誰よりも戦っている。


「先輩…」


ジャスティンは、ティアナの助けにならない自分の無力さが情けなかった。


クラークは焚き火をそばに座り、火を見つめていた。


すると、テントの中から、ティアナが出てきた。


「2人とも、大丈夫だった?」


ティアナの言葉に、ジャスティンが詰め寄った。


「先輩の方こそ」


「あたしは、大丈夫よ」


ティアナはノートパソコンを開け、カードを差し込む。


「先輩」


「今日は、女神のデータがとれたからね」


キーボードに手を走らせた。


「先輩!」


「何?ジャスティン」


ティアナは手を止めない。


「モード・チェンジを使わないで下さい」


「それは、無理ね」


ティアナは即答した。


ジャスティンは少し、言葉を失ったが、気を取り直して、


「このままでは死にます!」


「構わないわ」


ティアナは、それも即答した。


「先輩…」


「だけどね…。そう簡単に死ぬつもりはないわ」


ジャスティンの方を見たティアナは、焚き火の火に照らされ、横顔が、赤く輝いていた。






炎は、何よりも輝いていた。


「先輩!」


ジャスティンは、魔力によって照らされた炎に遮られて、ティアナのそばにいけない。


揺らめいた炎のつくる影は、クラークの影切りも使い憎かった。


「チッ」


クラークは舌打ちした。


旅の果て、魔界にある魔王の居城に、たどり着いたティアナ達は、ついに魔王ライと対峙していた。


ライの両手が電気でスパークし、ティアナの持つライトニングソードも光っていた。


「話はきいていた…人の身でありながら…我が娘達を倒したと」


ライの言葉に、ティアナは肩をすくめ、


「どんなに力が凄くても、力だけじゃ駄目なだけよ」


「なるほどな」


ライも笑うと、両手をティアナに突き出し、


「だったら…これは返せるかな?」


ティアナは、ライの魔力を感じ…力むではなく、力を抜いた。


(ライ)…」


ティアナは、ライトニングソードを上段に構えた。


(くう)


「モード・チェンジ…」


ティアナは、呟いた。


()


ライの電撃が放たれ、


ティアナは、ライトニングソードを振るった。



空気が電気に変わった。


そんな印象を、受ける程の雷撃。


周りは、雷の輝きに、色も臭いも音も…五感が奪われた。


時さえないのかと思った時、戦いは終わっていた。


「馬鹿な…」


ライは、両手を落とした。


ライトニングソードの切っ先が、ライの喉元に触れていた。


「もう少し…力が残っていたら…」


ティアナは、城に来てからモード・チェンジを何度か使っていた。


体は、限界だった。


激しく息をしながら、ティアナは目の前にあるライの瞳を覗いた。


ライは目を見開き、覗き込むティアナの優しい笑顔に驚いた。


「魔王だっていうからさ…。どんな目をしてるのかと思ったら…」


ティアナはクスッと笑い、


「何て悲しそうで…寂しそうな目をしてるんだろ…かわいそうに…」


ティアナの手から、ライトニングソードが落ち、ティアナはその場で崩れ落ちた。



「私が…かわいそうだと…」


ライは、崩れ落ちるティアナの背中に手を回し、ティアナを受け止めた。


なんて、細く軽い体だろうか…。


ライは戸惑いながら、ティアナの顔を覗き込んだ。



「先輩!」


ジャスティンの叫び声が、響いた。



これが、ティアナとライのファーストコンタクトだった。








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