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第25話 形見

少女は、自らの力におののくよりも、もの凄さに歓喜した。


「ママ!」


一瞬にして、跡形もなく消し飛んだ湖に、少女の後ろに控えていた魔物達は、唖然とした。



「今の技は…」


バイラは湖畔まで走り、数百キロはあった湖の成れの果てを確認した。


水はすべて蒸発し、地面はえぐれ…その威力はどこまで破壊されたかは、肉眼では確認できなかった。


「やはり…魔王の後継者…」


未だに残る…漏電したような電気のスパークと、魔力の残留力に、ギラは身を震わせた。


「これは…あの子の宿命…」


湖畔にあった樹木の影で佇んでいた女が一度目を伏せると、バイラ達のそばまで歩いてきた。


「ティアナ様…」


その美しいブロンドの髪を風に靡かせ、憂いをたたえた瞳を…女は、少女に向けていた。


「さっきまで…魚と戯れていたのに…」


美しいと思ったものを、数分後すぐに破壊した。


その無邪気な程の残忍さと…振り返り、母親に向けてみせる無垢な笑顔。


「アルテミア…」




「お母様…」


アルテミアには、あの時の母の悲しげに微笑む顔が…なぜか忘れられなかった。


どうして…あんな表情を見せたのか…。



「それは…あなたが心配だったからです」


何もない暗闇の中、アルテミアの頭に声が響いた。


「お、お母様!」


はっと我に返ったアルテミアは、自分がピアスの中にいることに気付いた。


「何があった!」




「うぉぉぉっ!」


雄叫びを上げて、僕は立ち上がると、両手に炎のマシンガンを創り出し、マリーとネーナに向けて連射した。


しかし、マリーに当たる前に、炎の玉は凍りつき、ネーナには吸収された。


何のダメージも与えられない。


絶句する僕に、2人はゆっくりと近付いてくる。


「何の冗談かしら?」


マリーの機嫌は、すこぶる悪くなった。




「やめろ!赤星!この世界で死んだら、お前は元の世界に戻れないんだぞ!」


叫ぶアルテミアの声は、赤星には届かない。


「赤星!」


「無駄です。あなたは…戦いの最中、パニックになり、意識を失ったのです。あなたの心は負け…今、ここにいるあなたは、最後の心の欠片なのです」


「あたしの心が…負けた?」


アルテミアは、闇の中で自分の姿を認知しながら、振り返った。


遠くに、誰かが立っている。顔はわからない。


「あなたは、完全に敗北し…あの少年も、もうすぐ死にます」


声質で、話し掛けているのが、女であることは理解できた。


女の淡々とした話し方に、アルテミアはキレた。


「何だと!」


アルテミアの怒りに、女は首を捻った。


「少年を巻き込んだのは、あなたです。何を今更…」






「糞!」


後ろにジャンプした僕に、ピッタリとネーナが付いてくる。


「チェンジ・ザ・ハート!」


僕は右手でチェンジ・ザ・ハートを握り、バスター・モードへと変える。


「くらえ!」


銃身を短く持ち、何とか銃口をネーナの胸元に向ける。


引き金を引こうとした瞬間、僕は左側に重心が傾いた。


「え?」


ネーナはただ笑った。


発射された炎は、ネーナに当たらなかった。


僕は…自分に起きたことが、信じられなかった。


左足が切断されていた。


スライドするように、僕は倒れていく。


とっさに、左手で支えようにしたが…左手もなかった。


倒れながら、信じられないくらいの血飛沫を上げながら、僕は地面に転がった。


放たれた炎は偶然、マリーを直撃した。


そのことが、マリーの怒りに火を注ぐことになる。


「家畜の分際で!!」


思った以上のダメージをくらったマリーは、赤い目をさらに光らせた。


自分の流す血の海の中で、何とか上半身だけを立たせ、もう一撃をくらわそうとした。


痛みより、意識がなくなっていく。


引き金を引こうとしたが、もう右手もなくなっていることに、僕は気づかなかった。



そして…。


「赤星!」


痛み…それは、もう…痛みをこえていた。


もう目も見えなくなっていた。


微かな視力と、微かな気力で、僕は自分の最後を理解していた。


マリーから放たれた氷柱が、僕の体を貫いていた。


死ぬ時は、走馬灯のようにいろんなことを思い出すというけど……………僕はただ…悔しい…。





「モード・チェンジ」「モード・チェンジ」「モード・チェンジ」「モード・チェンジ」


「モード・チェンジィィィィィィ!」


アルテミアは何度、叫んでも変わらない。


「赤星!」「赤星!」


「赤星ィィ!」


泣きじゃくりながら、叫ぶアルテミアをただ見つめていた女は…ゆっくりと口を開いた。


「あなた達を、助けてあげましょう。あたしができる…たった一度の機会…。今が、その時ですね…。アルテミア」


アルテミアは、その声を思い出した。


泣くのを止め、女を見つめた。


ぼやけていた女の姿が、今ははっきりと見えた。


真珠のような白い鎧に、アルテミアと同じブロンドの髪。


そして、何よりも優しい笑顔。


「お母様…」


アルテミアは目を見張り、母を見つめた。


「力を解放しなさい。あなたのすべてを」


「でも…お母様」


躊躇うアルテミアに、ティアナは微笑み、


「心配しなくてもいいの。お母さんが、守ってあげるからね」



アルテミアは驚き…そして、頷いた。


目をつぶり、力を込めた。


次に、かっと目を見開いた時には、アルテミアの瞳は…赤く染まっていた。


ティアナは頷き、叫ぶ。


「モード・チェンジ!」


次の瞬間、ティアナから溢れた暖かい光が、アルテミアを包んだ。


「あなたは初めて…他人の為に泣いた。助けたいと思った」


ティアナの言葉が、アルテミアに響く。


「アルテミア…。あなたはやっと…真の勇者に、近づくことができた。それは…あなたのお陰よ。赤星君」





「誰?…」


薄れゆく意識の中…僕の全身は、温かく優しい光に包まれていた。


流れる血も止まり、痛みも和らぎ、傷が癒えていく。


転がる手足も、光に包まれた時…僕の姿は消えた。




「何が起こっている」


近づこうとしたネーナを、光の結界が弾き返した。


「くっ」


目を細め、光を凝視するマリーの瞳に、チェンジ・ザ・ハートの変わる過程が映る。


トンファータイプの二本の武器が十字に交わり、剣へと変わる。


「あの剣は!」


マリーは、驚きの声を上げた。


その剣に見覚えがあった。


真珠のような白い剣。


純白の騎士と言われた勇者の武器。


大した飾りもなく、刃物特有の輝きもない。


なのに、妙な落ち着きと、尊厳さを感じる剣。


「ラ、ライトニングソード」






縦揺れの地震を思わすような揺れが、管理局を震わした。


但し、それは建物を揺らすことはなく、そこにいた人々だけに、衝撃を与えた。


「何だ!この魔力は!」


椅子に座っていた安定者達は、思わず立ち上がったが、中腰で動けない。


「どこから感じる…近く!?いや…わからぬ」


「馬鹿な…」


衝撃は一瞬だった。


すぐに、人々は静寂を取り戻した。


「何だったのじゃ…」


冷や汗を流す長老達を無視して、ジャスティンは、空中を漂う椅子から降り、


「御免」


テレポーテーションした。


管理局から、数百キロ離れた例の倉庫まで飛んだ。


武器庫の前に現れると、ジャスティンは廊下を走った。


カードシステムを司り、一部の人間以外は決して入れない特殊な結界を張った基地。


ティアナが残した部屋の前に立ち、恐る恐るドアノブを握る。


普段なら、結界に弾かれるはずなのに…ドアは簡単に開いた。


ジャスティンは少し躊躇うと、一気に開けた。


部屋に飛び込んだジャスティンが、見たものは…。


新築のように、真っ白な…何もない部屋。


「先輩…」


ジャスティンは、部屋の中で膝から崩れ落ちた。






天から、光が流星のシャワーのように、落ちてくる。


ライトニングソードをマリーとネーナに、突き出した光の中の人物に、流星群は吸い込まれていく。


光は晴れ、赤星がいた場所に跪いている女が現れる。


顔は伏せている為、表情は見えない。


女は立ち上がった。


白い…真珠のような鎧に、ブロンドの髪…そして、ライトニングソード。


マリーとネーナは、思わず後ずさった。


2人は知っていた。


その姿を。



「ティアナ…」


ネーナの呟きに、


「馬鹿な!あいつの死体は、城にあるはずだ」


マリーは、歯を噛み締めた。


「そうだ!あいつのはずがない」


ネーナは鉤爪を立て、女に襲いかかる。


女は、ライトニングソードを軽く振るった。


風を切る音より速く、鉤爪は…両手から斬り取られ、頭についた猫耳も切断されていた。


唖然とするネーナに、女は蹴りをいれる。円を描くような蹴りではなく、真っ直ぐ突き出すような速い蹴り。


ネーナは、体をくの字に曲げながら、吹っ飛ぶ。


その時、ブロンドの髪が乱れ、顔が見えた。


「アルテミア!」


マリーは叫びながら、アルテミアに襲いかかる。


アルテミアの瞳が赤く光り、眼力だけで、マリーを吹き飛ばした。


「うおおおおっ!」


アルテミアは、雄叫びのような声を上げると、白い鎧が変わる。


天空の騎士団を、一瞬にして消し去ったような凄まじい魔力が、アルテミアから溢れた。


しかし、アルテミアの全身に装着された鎧が、魔力を吸い取り、抑え…黄金に輝き出す。


背中に新しい翼が、生えた…それも6枚。


そして、アルテミアの左手には、ブラックカードが。


「こ、これは…」


ブラックカード…安定者の証。かつて、ティアナの物だったカード。


カード残高が、無限を示す。


マリーは舌打ちすると、うずくまるネーナと違い、空中へジャンプし、アルテミアを頭上から攻撃しょうとする。


「A Blow Of Goddess」


マリーが言うと、


「A Blow Of Goddess…」


アルテミアが呟いた。


「どんなに威力を増したとしても、あんたの雷撃は、あたしの水を突き抜けない」


マリーの両手から、発生した津波は、アルテミアを襲う。


その様子を見てフッと笑うと、アルテミアはライトニングソードを、頭上に突き出した。


「風!?」


マリーの放った津波に穴が開き、その中を通り…風が下から吹いてきた。


マリーが風を感じた後、全身が切り刻まれた。


「カマイタチ」


津波の中に、風の道ができたのだ。


風の道を通り、光の如き速さで、雷を纏ったアルテミアが、ライトニングソードを突き立てて飛んでくる。


マリーの横腹と右の羽を斬り裂いた。


「な」


信じられない顔をして、マリーは地上へ落ちていく。


マリーが落ちてくると同時に、何とか痛みをこらえ、ネーナが立ち上がった。


切り取られた鉤爪の痕を、わなわなと震えながら確認すると、ネーナは上空のアルテミアを見上げた。


「死にやがれ!」


ネーナは、女神の一撃を連打する。


地面が割れ、無数のマグマの蛇が飛び出し、アルテミアに襲いかかる。


6枚の翼を広げ、空に浮かぶアルテミアは、ライトニングソードを足元に向けて、凪ぎ払った。


三日月のような剣圧が、雷鳴とともに、マグマの蛇をすべて消し去った。


「何!」


そして、衝撃波が、ネーナの周りの地面をすり鉢状に抉った。ネーナの両足は、すり鉢の中央で、膝まで地面にめり込んだ。


「クッ」


ネーナは顔をしかめながら、蝙蝠の羽を広げ、穴から抜け出した。


「ネーナ!」


片方の羽を半分失いながらも、マリーはネーナの隣まで、飛んできた。


「あたし達2人の一撃を、同時にぶつけ…」


マリーの言葉が終わらない内に、天は雷雲に覆われた。


空が暗くなり、時折光る雷鳴が一瞬だけ、周囲を明るくする。


「召還!」


アルテミアは、ブラックカードを胸の谷間に差し込むと、ライトニングソードを天空に向けて、突き上げた。


ライトニングソードは、二本のトンファータイプに戻り、アルテミアの両腕に装着される。


そして、


「出よ!雷神。風神」


雷雲から雷が…大気から竜巻が…発生し、両腕のチェンジ・ザ・ハートに、それぞれ吸い込まれていく。


血よりも赤く輝くチェンジ・ザ・ハートを、アルテミアはマリーとネーナに、向けた。


クウ


「有り得ない…」


ネーナは絶句した。


ライ


「お父様の技…」


マリーは下唇を噛み締める。


アルテミアのきゅっと引き締めた唇の端に、鋭い牙が覗かれた。瞳が更に、赤く輝きを増す。


「ネーナ!いくわよ」


マリーの叫びに、ネーナは我に返り、上空に構えた。


「A Blow Of Goddess!」


2人の女神の一撃が放たれた。水と炎のダブル攻撃。


アルテミアは不敵に笑い、叫んだ。




空雷牙。


かつて封印された…魔王より受け継ぎし、空の牙。


いや、この星を一つの生物と考えたら、その星がもつ一番鋭い牙が、この技だった。


星そのものの攻撃。


「駄目か」


冷静に状況を判断したマリーは、ネーナの後ろに回った。


雷撃というより、大空と大気そのものの攻撃を思わす…巨大な竜巻が、雷鳴にコーティングされ…正しく牙だ。


女神の一撃は、その螺旋状の動きに、ドリルのような牙の動きに巻き込まれ、吸収されていく。


マリーは咄嗟に、針のように細い氷の剣を作り出すと、後ろからネーナの心臓めがけて、突き刺した。


「な」


上空に気を取られていたネーナは、マリーの動きに気づかなかった。


「マリー…」


振り返えろうとするネーナの首筋を掴むと、強引に持ち上げ、牙から自らの体を覆い隠すようにした。


「あたしを…盾に…」


ネーナの言葉が終わる前に、雷空牙は、ネーナの体に直撃した。



地球が揺れた。


今度は人だけではなく、すべての建物が、揺れた。


地殻変動でも、起きたのかと、人々がパニックになる前に揺れは終わり、何事もなかったかのように、平穏に戻った。





「終わったか…」


光を一切灯さない…冷たい闇に包まれた王の間で、ライは呟くように口を開いた。


「は、はい…」


ラルの返事のおかしさに、ライは気づいた。


「気にいらぬか…」


ラルは、はっとして、深々と頭を下げた。


「い、いえ…」


慌てるラルに、ライは笑い…そして、きいた。


「神とは何だ?」


玉座に佇み、闇の中で、赤い瞳をぎらつかせ…ライは、どこでもない何かを睨んだ。


「神…ですか?」


言葉に詰まるラルを無視するかのように、ライは話し出した。


「神とは、創造する力だ!」


力強く言うと、ライは玉座から立ち上がった。


「今のあやつの力は、破壊だけ!何も生み出さない」


ラルは、ただ控えるのみだ。


「どれだけ、力をつけようが…創造のない力に、意味はない」



(だから…あなたは、驚いたのね。人間に…いえ、女というものに…)


ライは後ろから声を感じ、振り返った。


そこに立つ存在は…。


「ティアナ…」


ライは目を見開いた。


(程度は違っても、人は誰でも、創造できるわ。それが、形になるかならないかは…人それぞれ…)


ティアナの言葉を、ライは肩につけた黒のマントを翻し、遮った。


「あやつは、神にはなれん」


ティアナは、ライの動きが可笑しくて、笑った。


(あの子は、そんなこと考えてないわ。ただ…あなたに近づきたいだけ)


ライは目を見張り、何も言えなくなった。


(本当は…破壊も創造も、望んでいないの)


「だが!あやつは、私の娘!魔王の後継者だ」


ライの言葉に、悲しげに微笑み、


(そうね…だけど…あなたは…)


言葉の途中で、ティアナは消えていった。




「王よ…どうなされました?」


どうやら、ラルには見えも、聞こえもしなかったらしい。


「何でもない」


ライは玉座に座り直すと、再び目をつぶり、瞑想に入った。


ラルは頭を下げ、王の間から消えた。


「ティアナ……」


王は呟いた。


「アルテミア…」


ライの意識は、闇に溶けていった。







雷空牙の直撃を、なんとか防いだマリーは…全身血だらけになりながらも、テレポーテーションにより、戦いの場から一番近い魔界の入口まで逃げていた。


ふらふらと、森の中を彷徨い…歩いていた。


奥に行くほど満ちてくる魔界の澄んだ空気は、少し傷を癒してくれた。


マリーは雷空牙が直撃する前に、ネーナの心臓をえぐり取り、ギリギリ逃れることができていた。


「何という魔力だ…。信じられない」


衰えた自分の姿を、空中につくった水鏡に映し、ひとしきりせせら笑った。


その後、マリーは右手に持っていた…まだ生暖かいネーナの心臓にかぶりついた。


火の女神であるネーナの心臓は、血の美味しさより、秘めた魔力が、一口食べる度に、マリーの体に染み渡った。


「でも…必ず、殺してやる」


最後の一切れを、丸呑みした瞬間、マリーの傷は完全に癒え、魔力も増して戻っていた。


「全魔神を従えて、アルテミアに総攻撃してやる」


マリーは羽を広げ、飛び立とうとした。その時、凄まじい気を感じ、マリーは羽をたたむと、感じた方向に、無数の氷柱をマシンガンのように叩き込んだ。


しかし、何の反応もない。


後ろから、微かな風を感じ、マリーは振り返った。


マリーは、そこにいるはずのない人物に驚き、震えながらも睨んだ。


「アルテミア!」


アルテミアはフッと笑った。


しかし、マリーは…目の前にいるアルテミアに、違和感を感じていた。


気は、さっきまで戦っていたアルテミアと同じだが、姿が違った。


ずっと目をつぶっており、先程まで天使の翼を広げていたのに…マリーと同じ蝙蝠の羽。


「あんたは…」


その姿は、マリーには懐かしいが…今は有り得ない姿だった。


「お前は、もういらぬ」


どこからか声が頭に響くと……マリーでも追うことのできない速さで、間合いを詰め、耳許で囁いた。そして、アルテミアの手刀が、マリーの心臓をえぐり出した。


「お前はもう…用済みだ」


アルテミアから発せられた声は、アルテミアではなかった。


マリーは、その声の主を知っていた。


そして、信じられなかった。


「お父様…」


アルテミアの両肩に掴みながら、マリーは地面に崩れ落ちっていた。


完全に動かなくなったことを確認するかのように、無表情でしばらくマリーを見下ろした後、空虚なアルテミアの…唇が震えた。


「さよなら…マリー」


それは言葉にならない…口だけの動きだった。


「城に戻れ…」


また口が動き、今度はちゃんとした言葉が発声された。


自らが告げた命令に、アルテミアはこくりと頷いた。


「アルテミア・キラーよ」


背丈の三倍はあろうかという…巨大な蝙蝠の羽を広げ、魔界の奥へと飛び去っていった。





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