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第233話 ただ...そこにある思い

「命が消えた!?」


西館の裏側を、特別校舎に向かって歩く浩也の目から、一筋の涙が流れた。


「切ない…思いが消えた…!?」


と思った瞬間、浩也は足を止めた。


「切ないとは何だ?」


溢れる思い…とめどもない思い…歯痒さ…温かさ…そして、やりきれない…切なさ。


たまに、心をかきむしる…これらの思いが、浩也を混乱させた。


考えれば考える程…答えのない世界をさ迷う。


もう少しで…あと数メートル先を曲がるだけで、特別校舎に行けるのに、浩也の足は止まってしまった。


「どうして…」


浩也は、瞳から流れた涙を指で拭った。


「こんなものが流れる?」


指についた涙を見つめる浩也の前に、何者かが立ちふさがった。


「心無き…人形のはずなのに、お前達は…形無きものに、惑わされている」


「!?」


前を見た浩也は、その者を知っていた。


それは、自分でもわからない記憶ではなく…はっきりとした浩也としての記憶の中に。


「あなたもそうよ。魂のない…単なる人形のはずなのに、今も向かおうとしている。その理由は何?」


浩也を見つめ、その心の中まで覗こうとしている女の名は、リンネ。



「お、お前は!?」


フレアと過ごした最後の日に、ジャングルであった魔神。


構えようとする浩也に、リンネはただ言葉を続けた。


「それが…愛なの?」



「愛?」


浩也は、眉を寄せた。


わからない…いや、学んだ言葉ではあったが、なぜか…よくわからなかった。


いや、わかっているのかもしれない。


だけど、今は…わからない振りをしょう。



(わからない振り?)


浩也の思考が、まるで自分の思考とは思えなかった。


何を考えている。


何を思っている。


僕は、何を隠している。


(隠している!)


誰に対して。


己に対して。


どうして。


どうしてだ。




浩也の心に、疑問をわきあげる。




その時、


心の中で、誰かの声がした。


(考えるより、願え)


僕の横に立つ男が言った。


荒野に立つ男。


その前にいる魔物達。


僕の横で、息を引き取った少女。


男が、前に出た。


左手を突きだすと、何か言葉を叫んだ。


次の瞬間、男は光に包まれた。


さらに次の瞬間、その光を切り裂いて…エメラルドグリーンの髪を靡かせた女が姿を現した。


(指輪?)


僕は、自分の左手を見た。


(そうだ…)


僕にも、指輪があったんだ。


(今は…無くした)


だけど、確かにあったんだ。





混乱する心が、落ち着いていく。


(考えるよりも、願え…)


男の言葉を反芻した。



(そうだ!!僕の願いは!)


僕の心から、迷いが消えた。







「何!?」


リンネに向かって、突きだした浩也の左手の薬指に、指輪がはめられた。


「馬鹿な!」


目を見開いたリンネに向かって、浩也は叫んだ。



「モード・チェンジ!」





浩也を見下ろすように、屋上に移動していた美亜は、優しく微笑んだ。


「お前の願い…叶えよう」





「さ、させるか!」


リンネは、浩也に向かって攻撃をしょうと、右手を突きだした。


その時、どこからか二つの物体が飛んできた。


合体し一つになると…両手を広げ、浩也の前に立つ。


「!?」


その姿を見た瞬間、リンネの動きが止まった。


「ば…」


突きだした腕が震えていた。


「馬鹿な子」


リンネの前で、浩也の為に盾になるのは、フレアだった。


「どんなに尽くしても!どんなに愛しても!」


リンネは震える手で、炎を放った。


「記憶をなくしていても!心がなくても!その男は、お前を愛さないのに!」


リンネの炎が、フレアを焼いた。


次の瞬間、フレアの後ろから翼を広げた天使が、現れた。


「アルテミア!」


リンネは空を見上げ、絶叫した。


先程まで、美亜がいた屋上を飛び越え、天空で羽ばたくブロンドの女神は、そのまま一気に、地上に向けて降りていく。


「行くぞ!赤星!」


リンネの炎の中から、二つの物体が飛び出し、降下するアルテミアの手に握られた。


「A Blow Of Goddess!」


槍が電気を帯び、風が全身を包む。


そして、特別校舎の前で、九鬼を掴んでいるムジカに向って、槍を振り下ろした。





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