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第179話 乙女Dark

「交ざわる時空…!」


タキシードの男の体が、震えた。


「今…闇は、存在の意義を持つ」


後ろの九鬼と...乙女ケースを突きだした九鬼が、重なると同時に、乙女ソルジャーへと変身した。


いや、それは… 乙女ソルジャーとも、乙女ガーディアンとも…違うのかもしれない。


夜よりも黒い戦闘服を身に纏った九鬼が、一歩前に出た。



「何があった!」


カルマは一歩下がると、ライフルを撃った。


直撃したが、九鬼の体にダメージはない。


サングラスのように黒い眼鏡をかけている為、九鬼の目は見えないが....その表情に、感情がないことを、カルマは感じ取っていた。


「クッ!」


今度はマシンガンを召喚すると、至近距離から引き金を弾いたが、弾丸は弾かれることなく、黒の戦闘服の中に消えた。


「な!」


まるで、戦闘服の表面が、生きているように見えたカルマは、さらに後方にテレポートすると距離を取り、両手を突きだした。


「は!」


サイコキネッシスの濃度を上げ、光線のようになった念動力が、九鬼の体に光の速さで、激突した。


しかし、念動力もまた、戦闘服の中に消えた。


「え?」


愕然とするカルマを見て、タキシードの男は鼻で笑った。


「馬鹿目。あの戦闘服は、ブラックホールと同じ。あらゆる攻撃を飲み込む!あの程度の光で、ブラックホールを破壊できるか」


「馬鹿な!」


カルマは再び、テレポートすると、九鬼の真後ろに出現し、巨大なハンマーを振り上げた。


九鬼の脳天に向かって、振り落とされたハンマーは、九鬼の人差し指で破壊された。


「フン!」


回し蹴りが、カルマの腹にヒットした。


「うぐう!」


吹っ飛んだカルマの全身を包む戦闘服が、空中でひび割れ、粉々になった。


「そ、そんな…」


頭から、床に激突したカルマは、そのまま…倒れ込んだ。


その衝撃で、床の上にピンクの乙女ケースが転がった。


蹴りを放った格好で止まっていた九鬼の足下で、ピンクの乙女ケースは止まった。


九鬼は足を下ろすと、乙女ケースを気にすることなく、カルマに向かって歩き出した。


「く、くそ…」


カルマは何とか、立ち上がったが、口から血が溢れた。


どうやら、さっきの蹴りで、内臓のどれかが破裂したらしい。


「あ、あたしは…」


カルマは血を拭うことなく、近付いてくる九鬼を睨み付けると、


「アルテカ王国の戦士…」


こめかみ辺りに指を当て、力を込めた。


「最強の戦士だ」


そして、指先に集中した念動力を、まるでレーザー光線のように細くすると、九鬼の眼鏡に向かって放った。


「…」


一瞬、手で受け止めようとしたが、九鬼はそれを止めた。


光線は、九鬼の眼鏡を当たった。


空中に舞う眼鏡。


「やった…」


カルマはにやりと笑った。


乙女ソルジャーもガーディアンも、眼鏡を外せば、変身が解ける。


あのおかしな戦闘服が消え、普通の肉体に戻れば、勝機があるばすだ。


「死ね!」


カルマは両手を突きだすと、サイコキネッシスを放った。


「無駄だ」


タキシードの男は、笑った。


「海に放水しても、意味がないように…」


見えないサイコキネッシスの力は、確実に九鬼に当たっているはずだが、九鬼の歩みは止まらない。


「お前達…貧弱な人間が」


驚き、目を見開くカルマに向かって、九鬼はノーモーションで飛んだ。


「神に勝てるか!」


タキシードの男は、天井に向かって叫んだ。



「え…」


カルマは理解できなかった。


ぐるぐると視界が回る。


体が軽くなったように感じた。


天井が床が…何度も視界の中を往復する。


「ソリッド…」


床に激突する瞬間、視界が真っ暗になったが、カルマの目は、アルテカ王国の同士ソリッドの顔を映した。


床に転がるカルマの首。


見開いた目から...涙が流れた瞬間、九鬼は頭を踏み潰した。


ぐちゃぐちゃになった脳髄が、床に飛び散った。



「す、素晴らしい!」


無表情に、床の残骸を見つめる九鬼の後ろで、首から上を失った胴体が、音を立てて崩れ落ちた。


その様子を、歓喜の表情で見ていたタキシードの男は、狂ったように拍手をした。


「やっと!完全に復活なされた!」


タキシードの男は、血塗れになっている九鬼に近付くと、血溜まりの中で跪いた。


「闇の女神!デスぺラード様!」


そして、タキシードの男はいつのまにか拾っていた…ピンクの乙女ケースを差し出した。


「…」


九鬼は無言で、乙女ケースに手を伸ばした。


九鬼の指先が触れると、ピンクの乙女ケースは消滅した。


「残る乙女ケースも、すぐにあなた様の糧になるでしょう。この力が、すべて手にいれた時…」


タキシードの男の口元が緩む。


「月は、闇を照らすことはできなくなります。その時こそは…!」


話の途中、タキシードの男は、九鬼の変化に気付いた。


突然、ふらつきだすと、九鬼の体が二重にぶれだした。


「な!」


タキシードの男は立ち上がった。


そして、手を差し出そうとしたが、間に合わなかった。


九鬼は二人に分離し、体から弾かれた九鬼は闇と同化して、消えた。


「クッ!」


タキシードの男は、唇を噛み締めた。



「あああ!」


ぶれが消えると、九鬼はその場で崩れ落ちた。


両膝、両手をつき、血溜まりの中で、激しく息をする九鬼を見て、


「チッ」


舌打ちすると、タキシードの男は礼拝堂から消えた。


(まだ、早いということか)


九鬼の様子を睨みながら、タキシードの男は完全に気配を消した。




「は、は、は」


激しく全身で息をしながら、九鬼は何とか立ち上がろうとしたが、全身に力が入らなかった。


「まだ…やれる!」


唇を噛み締めた九鬼は、カルマとの戦いが終わったことに、すぐには気付かなかった。


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