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第128話 恭々しく

「クククククク…」


玉座の上で、1人含み笑いをもらす魔王レイの前で、跪いている二人の魔神。


カイオウとポセイドン。


そして、玉座の横に立つ…死の女神デティーテェ。


デティーテェは、レイの顔を覗き込んだ。


「何がおかしいの?お父様」


デティーテェの質問にも、レイは答えない。


王の間に、レイの笑いだけがしばし、こだました。


「王よ」


王の間に、炎の魔神が入ってきた。玉座の前で跪くと、レイに報告した。


「空牙様が、お帰りになりました」


魔神の言葉に笑いながら、レイは言った。


「ククク…通せ」


凛とした表情で、王の間に入ってきた空牙は、学生服のままだ。


「どうした?手ぶらか?」


空牙は、梓を捕らえるように命じられていたが…レイの本当の狙いは違った。


レイの質問にも答えず、空牙はカイオウとポセイドンのそばまで、歩いてくる。


レイの目の前で足を止め、ただレイの顔を見る。


レイは鼻を鳴らし、


「フン。何か言いたそうだな?」


「……」


空牙は答えない。


「お父様が聞いてるのよ!答えないか!この無礼者が!」


デティーテェは叫んだ。


しかし、空牙はデティーテェを完全無視した。


「空牙!」


その態度にキレたデティーテェが、空牙のそばに行こうとするのを、レイが右手を伸ばして、止めた。


「空牙よ…」


レイは笑みをやめ、じっと空牙を見つめると、


「会ったのだろ?あやつと…」


そこまで言って、抑えきれなくなった。


レイは声を出して、笑いだした。


「ハハハハ!どうだった!あやつは、また違う時空間に旅立ったか?悔しかろうて!何もできなかった自分の腑甲斐なさに!」


空牙はただ…レイを見つめる。


「あやつは、人間の分際で、我に逆らいよった!生まれたばかりのお前を、助ける為にな!」


レイの笑いは止まらない。


「我に逆らった罰よ!死ねぬ体で、永遠に苦しむがいい!!ハハハハ!」


「母は…死んだ…」


レイの笑いの中、空牙は呟くように言った。そして…もう一度…。


「母は死んだ…。俺が、殺した」


そう言った瞬間、そばにいたカイオウとポセイドンの全身に鳥肌が立った。


「その意味が、わかるか?」


空牙の瞳が、赤く輝いた。


「ハハハハハハハハハハハハ………何?」


レイは、笑いを止めた。いや、止めたのではない。止めざる得なかったのだ。


レイの全身が、震え始めた。


空牙は、一歩前に出た。


「お前にも、同じ苦しみを味あわせてやる。未来永劫…の苦しみを!」


「空牙様!」


空牙を促した炎の魔神が、レイの前に滑り込んだ。


「何だ?」


空牙が、その魔神を睨んだ瞬間、魔神は破裂した。 


「き、貴様!」


レイの瞳が、赤く光ったのと同時に、何故かふっ飛ばされていた。


空牙は右手を突き出すと、レイを無表情で見下ろした。


「お前の力……貰うぞ」


レイの体から魔力が漏れだし、空牙はそれを吸収する。


「お父様!!」


デティーテェは城中に響く程、叫んだ。


「空牙が、裏切った!やつを殺せ!全魔神よ!空牙を…」


と言った瞬間、王の間の側面の壁が、すべて吹き飛んだ。


「お父様…こいつら、弱すぎ」


城の天辺にある王の間。


その横で、黒き羽を広げて、浮かぶ…炎の女神ネーナ。


両手についた鋭い鉤爪が、魔神を串刺しにし、ネーナは流れる血を吸っていた。


「誰だ?こいつは…」


唖然とするデティーテェは、丸見えになった王の間から、城の周りを見回した。


数万はいた…レイの魔物達が、死骸となって、転がっていた。


空を雷雲が覆い、その下に翼を広げて、浮かぶ…ギラとサラ。


魔物の死骸が燃えだした。その炎が、人の形をつくる……。それは、魔神…不動。


そして……。


「あり得ない…」


後退るデティーテェの後ろに、突然1人の女が立つ。


「!?」


デティーテェは振り返りながら、攻撃しょうとしたが、全身に氷柱が突き刺さり、首を跳ねられた。


「この程度で…女神?」


ため息をつく…水の女神マリー。


空牙はフッと笑うと、右手を上げた。すると、レイや死骸と化した魔物達が浮き上がる。


「お前達は、死ねぬ!永遠に、鳥かごの中で、彷徨え!」


空牙の叫びとともに、レイ達は光となり…この星の外れの大陸に飛ばされた。


それが、ロストアイランドだ。




空牙はゆっくりと、玉座に向かう。


そして、ゆっくりと腰をおろすと、ずっと跪いているカイオウとポセイドンに向かって言った。


「我が名は、ライ。魔王ライ。新たなる…この世界の支配者だ」


じろりと、カイオウとポセイドンを睨んだ。


「お前達は、どうする?」


ライの問いに、即座にポセイドンは答えた。


「王の力となりまする」


深々と頭を下げた。


「御意に…」


カイオウも頭を下げ、臣下の礼をした。


「有無…」


ライは頷いた。







「……以上が、実世界での報告であります」


玉座の前で、跪き…報告を述べるリンネの話を、ただライはじっと聞いていた。


報告を終え、王の言葉を待っていたが、ライは何も言わない。


ただじっと、リンネの顔を見ていた。


リンネはしばらく…王の言葉を待ったが、何も言わない為に立ち上がり、ライにきいた。


「王よ…。今回、私は勝手に、実世界に行きました。騎士団長としての勤めも果たさずに…」


そして、再び跪くと、


「お叱りならば…何なりと受ける覚悟がございます」


頭を下げるリンネに、ライはやっと口を開いた。


「お前は…いい……。お前は……自由に生きろ」


ライの思いがけない言葉に、リンネは顔を上げた。


「王よ!」


「自由に、生きろ。それが、お前への命令だ」


ライの目に、リンネと輪廻がだぶる。


これは、気休めかもしれないが……ライは、リンネに自由を与えたかった。


はからずも…最後に創った魔神は、輪廻に似ていた。


「お前は…お前の思うままに生きろ…」


似すぎていたから、二人にわけた。


しかし、姉からはその面影は、消えなかった。


リンネは仕方なく…立ち上がり、礼をすると…その場から立ち去った。


リンネは、輪廻のことを知らない。


今、そのことを知ってるのは、カイオウだけだが……彼が、言うはずもなかった。



玉座の間を出て、複雑にのびている回廊を、リンネは歩いていた。


いつのまにか、回廊を抜け、城と離れを結ぶ渡り廊下にでてしまった。


かつて、ティアナが植えた花々が、年中美しい姿をさらしていた。


リンネは足を止め、一番近くにあった赤い薔薇を見つめた。


すぐに前を向き、歩こうとした時、離れの方から、サラが歩いてきた。


リンネは無表情で、歩きだした。


サラも、リンネを見てはいないように思えた。


二人の騎士団長は、渡り廊下の真ん中で、すれ違った。


お互いを見ることも、意識することもなく……。


華奢な細身の肢体を持つリンネと…筋肉質でがっしりした体躯を誇るサラ。


まったく違う二人。


彼女達は決して、振り返らない。


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