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第115話 女神

11時39分。


不慣れな次元刀を握り締めながら、明菜はじりじりと近づいてくる…魔物と化した実行部隊と対峙していた。


逃げることはしない。


(生きる!)


心の中で、強く願う。


今、背を向けた瞬間、自分は殺される。


明菜には確信があった。


一気に間合いを詰められて、後ろから殺される。


と思った刹那、一匹の蝿のような顔をした者が、目の前に出現した。


「きゃっ!」


明菜はとっさに、横凪ぎに次元刀を振るった。


真っ二つになる蝿男。


しかし、それが合図となった。


一斉に、襲いかかる実行部隊に、明菜は剣を振るった格好のまま…すぐに動けずにいた。


(駄目!)


思わず目をつぶってしまった明菜は…激しい光を、瞼の向こうからも感じることができた。


「この人は…あたしの客人だ!触るな!」


鋭い声とともに、物凄い爆音が響いた。


数秒後、何とか瞼を上げた明菜は、前に立つ…人物に、体を強ばらせた。


「綾子ちゃん…」


明菜の絞りだすような声に、綾子は振り返った。


「お姉ちゃん」


微笑む綾子の向こうは、十メートル程…地面が抉れていた。


その様子に、明菜は次元刀を握り締めた。


きりっと睨む明菜に、綾子は笑った。


「お姉ちゃん…冗談でしょ?」


「綾子ちゃん」


剣先が震えながらも、明菜は綾子に、次元刀を向けていた。


綾子は、ため息をつくと、 


「お姉ちゃん…無駄よ」


綾子の目が赤く光ると、明菜は何かにぶつかったように、吹っ飛んだ。


二メートル先に、尻餅をついた明菜に、綾子は鼻を鳴らした。


「フン!あんたは、ただの餌なの!あいつらを釣る為のね」


そして、綾子は瞳の力で、明菜の自由を奪うと、ゆっくりと明菜に近づいていった。


「あ、綾子ちゃん…」


衝撃で、明菜は次元刀を離してしまった。


慌てて、次元刀を掴もうとする明菜は、綾子が足で踏んでいることに気付いた。


しかし、綾子は次元刀を蹴り返した。


地面を滑ってくる次元刀を手に取り、明菜は中腰で剣先を綾子に向けた。


しかし、綾子はそんな明菜を無視して、後方にそびえる発電所内を見つめた。


「原子炉が止まっている…」


綾子の両目が赤く光る。


「山根達の反応も…おかしい?」


綾子は訝しげに、発電所を見ると、


「まあ…いいわ…」


右手を発電所に向けた。


「…破壊すればいいんだから…」


右手も赤く光りだし、凄まじい力が発生していくのを…明菜でも感じられた。


明菜は立ち上がると、綾子の右手の対角線上に、回り込んだ。


「何のつもりかしら?」


明菜の行動に、綾子は不愉快そうに、顔をしかめた。


「ここを破壊なんて…させない!」


明菜は両手で、次元刀をにぎゅっと握り締め、綾子の目を睨んだ。


「フン」


綾子は鼻で笑った。そして、さらに右手に力を込めた。赤い光球が、右手を包む。


「そういうことはね!」


綾子は、さらに力を込める。


「守る力が、ある者が言う台詞なんだよ!」


綾子の叫びとともに、光球は絶望的な力を示しながら、明菜に向けて…放たれた。






11時37分。


明菜達と反対方向…裏口にたどり着いた美奈子の前に、片腕を失った化け物達が立ちふさがっていた。


化け物達は、一定の距離を取りながら、決して美奈子に近付くことも…攻撃することもしなかった。


そんな膠着状態に、美奈子は苛立っていた。


しかし、二十体はいる化け物をこえて、発電所内に入るのは、至難の業だ。


ううう……。


呻くような…嘆くような声を洩らし、美奈子を見つめる者達。


美奈子は、一歩も踏み出すことができなかった。


そんな時…化け物の間から、1人の男が前に出てきた。


黒のタキシードを着た男を、美奈子は知っていた。


「あなたは…」


美奈子は、その男…マスターを睨んだ。


マスターは、深々と頭を下げると、


「やはり、来られましたか…女神よ」


顔を上げたマスターの切なげな表情に、美奈子は自然に前に出た。


「あんたらは、一体!何がしたいんだ!」


美奈子の質問に、マスターはこたえず、左右に立つ化け物と化した者達に、目をやった。


「解放状態になった彼らは、理解したのでしょう。あなたが、女神であることを…」


「女神…」


美奈子は、一度言葉を反芻した後…首を横に振り、マスターを睨んだ。


「あたしは、女神じゃない」


そんな美奈子を優しく見つめたマスターは、突然…空が暗くなったことに気付いた。


見上げると、雷雲が発電所上空を覆っていた。


「始まる…」


マスターは、天を睨み、


「神々の戦いが…」


哀しげに呟いた。






明菜に…その向こうの発電所に向けて放たれた光球は、綾子の手を離れると、半径二メートル程のエネルギー体になった。


そして、光の速さで、すべてを破壊する…はずだった。


避けられる…いや、反応できる速さではない。明菜はただ…次元刀を振るうだけだった。


それでも、タイミイグは遅すぎた。


次元刀を上段に構えると、脳が腕に命じただけで、明菜は消滅した……はずだった。


放たれた光球は、瞬きの間に現れた人物によって、弾き返された。


綾子は目を見張り、放った後の右手を広げた。


返された光球は、綾子を直撃した。


それは、一秒にも満たない時。


「チッ」


綾子は舌打ちした。


光球を止めることは、できず…破裂した。


まるで、閃光弾のような輝きも、明菜の前に立つ大きな背中が、眩しさから守ってくれた。


「こうちゃん…」


五年ぶりに見た…浩一の背中。


姿は変わっていなかったけど…とても、大きく感じた。 


明菜の頬に、安堵と嬉しさの涙が、自然に流れた。


「明菜…」


浩一は、前を見たまま…明菜の方を向かずに言った。


「発電所の裏から逃げろ!そこには…美奈子さんがいる!」


「こうちゃん!」


すがりつこうとする明菜に、浩一は叫んだ。


「ここは、危険だ!」


明菜は、浩一の声の鋭さに、びくっと体を震わせた。


「ここからは…お前を守れない」


浩一は、言葉を噛み締めた。


光球が破裂して、起こった爆風と砂埃が止んでいく。


そして、その中から……赤き瞳に、漆黒の翼を広げた…綾子が、無傷で立っていた。


「赤星浩一」


血よりも赤い瞳…鋭い牙が、きゅと結んだ唇の両端から、覗かれていた。


綾子の…バンパイアとしての解放状態であった。






「やはり…お前と同じか…」


僕の右耳に付けた…稲妻のよう形をしたピアスから、アルテミアの声がした。


前に立つ綾子の圧倒的な魔力が、空気を突き破って、僕の肌に突き刺さった。


だけど、僕は表情一つ変えない。


「赤星。お前のまま…モード・チェンジはするなよ。まだ完全に傷が、完治しているわけではないからな」


数日前…僕は後ろから、刺された。心臓を一突きされたのだ。


刺した相手は、実の妹だ。今…目の前にいる。


魔力の源である心臓を刺されてたことで、僕はしばらく動けなくなっていたのだ。


「わかっている。心配しないで」


僕は、両手に持っているトンファータイプのチェンジ・ザ・ハートを、胸元で交差されると、一本の剣にした。


ライトニングソード。異世界…ブルーワールドの勇者ティアナが、使っていた武器。


ライトニングソードを、手に取るのを見た綾子は、さらに顔を歪ませた。


「家族を捨てた男が!今度は、妹を殺すのか!」


両腕に、風がまとわりつき、まるでドリルのようになると、綾子はそれを、僕に向けて放った。背中の黒き翼も、羽ばたかせ、風力が増す。


風のドリルとナイフが、僕を襲う。


「ライトニングウェイブ」


僕は、ライトニングソードを横凪ぎに、振るった。


雷のかまいたちが、風のドリルとナイフに、ぶつかった。


「まさか…」


アルテミアは、あることに気付いた。


2つの技が、相殺された後、いきなり視線から消えた綾子。


「早く行くんだ!明菜!」


後ろにいる明菜が気になり…僕はここから動けない。


上空から、雨のように氷柱が、落ちてくる。


もう限界だった。


僕は明菜に向かって手をかざすと、彼女を結界で包み…遥か後方へ移動させた。


「よそ見している場合か!」


綾子の声が、上空から聞こえた。


明菜を守った為、氷柱を叩き落とすことができなかった。


「こうちゃん!」


明菜は結界の中で、叫んだ。


突き刺さると思われた瞬間、僕は、全身に気合いをいれた。


僕の体は炎を包まれた。氷柱は突き刺さる前に、すべて蒸発した。


「さすがは、太陽のバンパイア!」


今度は、炎を纏った綾子が空中から、回転しながら落ちてくる。そして、僕めがけて、かかと落としを決めようする。


「く!」


反射的に、ライトニングソードでかかと落としを受けとめようとしたが、慌てて…左腕に変えた。


「こうちゃん!」


落下と回転力により、威力の増したかかと落としは、僕の左腕に決まると同時に、電流を流した。


高圧電流が、僕の全身に駆け巡り、青白く発光した。


「こうちゃん!」


原発の外壁の端まで、移動させられた明菜は、結界が消えると走りだそうとしたが、僕が制した。


「近づくな!」


結構、離れているはずなのに、熱気が明菜の全身を貫いた。 


熱気というよりも、闘気だ。


「明菜…」


かかと落としを受けとめながら、僕は明菜の方に顔を向けた。


そして、再会して…初めて微笑んだ。


「心配するな」


気を抜くと、左腕がへし折れそうな襲撃を受けとめながら、僕はせいいっぱいの笑顔を明菜に見せた。


その笑顔に、明菜は涙を拭った。


「すべてが、終わったら…お前に、会いに行くよ!そして、すべてを話そう!だから、今は…」


その言葉に、明菜は頷き、唇を噛み締めると、僕に背を向けた。


そして、走りだす。


(こうちゃん…。死なないでね)


明菜の姿が見えなくなると、僕は左腕に力を込めて、片腕だけで、綾子を跳ね返した。


前方に回転して、着地した綾子は、前屈みになり、両手を広げた。


すべての指先から、鋭い爪が飛び出し、僕に襲いかかってくる。


「綾子…」


僕は、ライトニングソードをトンファータイプに戻すと、僕の首筋を狙ってきた爪を受け止めた。


「お前と、ゆっくり話がしたい!だから、場所を変えるぞ!」


僕の周りに、風が起こり…二人を包んだ。


そのまま…僕と綾子は、風に乗って移動するはずだったが、足が浮いた瞬間、


「舐めるな!」


綾子の目が光り、両手の爪をトンファーから外すと、そのまま風の壁を切り裂いた。


「お前と話すことはない!」


密着状態から、綾子の膝蹴りが、僕の心臓にヒットした。


風は完全に消え…僕は胸を押さえて、跪いた。


「死ね」


綾子の爪が、跪く僕の後頭部を狙う。


しかし、僕の両手から飛び出したチェンジ・ザ・ハートは、回転し、綾子の腕と足を強打した。


「いつも、邪魔をして!」


綾子は、バランスを崩しながらも、チェンジ・ザ・ハートを切り裂こうとする。


チェンジ・ザ・ハートは、攻撃を避けながら、綾子の周りを回って、牽制する。


「赤星!」


アルテミアの声が聞こえた。


「大丈夫…」


僕は立ち上がると、綾子に向かって走る。


「あたしに変われ!」


アルテミアが叫ぶが、 


「駄目だ!この世界では、アルテミアにならない!」


僕は拒否した。


腕を伸ばすと、チェンジ・ザ・ハートは僕の腕の中で合体し、槍をなる。


「はっ」


気合いとともに、槍を綾子の腹にたたき込んだ。


くの字になる綾子に、今度は槍を回転させて、背中を強打しょうとしたが、痛みで顔をしかめる綾子の表情を見て、槍を止めた。


その瞬間、綾子の背中の翼が羽ばたき、かまいたちを発生させた。


僕の全身に、切り傷が走る。


綾子はそのまま…空中に飛び上がると、地面に向けて、赤き瞳を向けた。


すると、僕の周囲の地面が盛り上がり…その中から、黒い毬のような生物が、大量に湧き出てきた。


黒い毬の真ん中に、線が入ると…それは開き、口になる。


「魔物?いや…地縛霊か」


アルテミアは、呟いた。


数千はいる地縛霊は、僕に憑依しょうとする。


「そんなものまで…操れるのか…」


アルテミアは、ため息をついた。


チェンジ・ザ・ハートを、また分離させると、僕は再び交差させた。


今度は、ライトニングソードではなく…十字架に似た剣に変わる。


シャイニングソード。


「太陽がほしいか?」


僕は、シャイニングソードを天にかざした。


飛び掛かってくる数千の地縛霊に、シャイニングソードから溢れた光が、降り注ぐ。


すると、一瞬にして…地縛霊達は、浄化された。


シャイニングソードの輝きは、空中にいる綾子を照らした。


その温かさに…懐かしいものを感じたが、


「くそお!」


綾子はその感情を否定するかのように、自分の体に爪を突き立てた。


「あたしは、騙されない!」


そのまま、両手を重ねると、爪を突き出して、綾子は僕に向かってくる。回転を加えて、鋭さを増して。


「赤星…」


アルテミアが、心配気に呟いた。


僕は、顔を上げ、ほぼ直角に落ちてくる綾子を見つめた。


「赤星…」


アルテミアの言葉は続いた。


「お前の強さに、問題はない…。だからこそ…」


僕は、シャイニングソードを真上に向けて、突き出した。


「お前は…勝てない」


シャイニングソードの先端が、ピンポイントで、綾子の爪の先をとらえた。


回転する爪が、シャイニングソードによって、削れていく。


僕は顔をしかめると、体を横に滑らせ、シャイニングソードを外した。


綾子が勢い余って、地面に激突する前に、横から蹴りをいれて、体勢を立て直させる。


綾子は一回転し、地面に着地した。


「お前は、妹を殺すことができない!そして!」


綾子は、すぐに地面を蹴って、僕に飛び掛かってくる。


炎を帯びた拳が、僕の顔面にたたき込まれた。


しかし、僕は平然と…一歩も動かずに、拳を受けた。


その事実に、驚く綾子。


アルテミアは、冷静に…事実を口にした。


「こいつの…今の魔力では、お前に傷一つつけれない。そう…」


アルテミアは、思い出していた。


「かつて…お前と会った頃の…あたしのように…」


僕は、アルテミアの言葉を理解できなかった。いや、真剣には聞いていなかったのだ。


ただ…目の前にいる綾子が、自分に襲い掛かってきているという…事実が悲しかったのだ。


「綾子……やめよう。こんな所で、こんなことをしても…無駄なだけだ」


僕は、シャイニングソードをチェンジ・ザ・ハートに戻した。


そして、チェンジ・ザ・ハートは分離すると、どこかへ飛んでいった。


僕は、距離をおいて対峙する綾子を、切なげに見つめ、


「こんなことをして…どうすんだ。ただ放射能が漏れて…周囲を汚染するだけだ!それに…お前達…魔獣因子を持つ者達がもし、世界を支配したいのなら…」


僕の目から、魔獣と化した綾子の姿を見て、涙が溢れた。


「人間は……いや、母さんはどうするんだ!」


僕は思わず、声を荒げた。


「母さん…!?」


綾子は、僕の言葉にせせら笑った。


「母さん……………クククク」


やがて、身をよじらして笑った後、赤き眼光が、僕を睨んだ。


「家族を捨てた男が!何を言うか!」


綾子の筋肉が盛り上がり、僕に突進してくる。


「ストロングモードか…」


アルテミアは呟いた。


「もう一度…心臓を握り潰してやる!」


綾子は、拳に力を込めた。


「綾子……」


僕は、動けなくなった。


反論もできなかった。なぜなら、綾子の言葉が正しいからだ。


「浩一!」


渾身のボディブローが、無防備な僕の心臓に、ヒットした。


「うぐっ!」


僕の全身に、痛みが走り…まだ完治していなかった心臓が、一瞬…動きを止めた。


綾子は、にやりと笑い、拳を心臓にたたき込んだ体勢のまま…僕の耳元に囁いた。


「人は、みんな殺す…。それに、例外はないわ」


「綾子…」


僕の口から、血が流れた。


「だから…心配せずに…」


綾子は微笑み、


「死にな!」


心臓を食い込んだ拳から、光が溢れ…爆発した。


「赤星!」


アルテミアの声も虚しく…僕の体は、吹っ飛んだ。


背中から地面に落ち、砂埃を上げながら滑ると、僕は五メートル程先で止まった。


「あ、綾子…」


僕は何とか身を起こし、立ち上がろうとするが…力が入らない。


思ったより、ダメージが大きい。


「赤星…わかっただろ」


アルテミアの声に、僕は両手を地面につけて踏張ると、何とか立ち上がろうとする。


「まだ…まだ…」


すると、すぐ目の前に綾子が、テレポートしてきた。


「これで、終わりよ」 


綾子の爪をさらに伸ばし、僕の脳天を串刺しにしょうとする。


「チッ!」


その時、アルテミアが舌打ちした。


「赤星!避けろ!」


「え?」


突然、雷鳴が周囲に轟き、雷が…二人のいる場所めがけて、落ちてきた。


直撃したと思った時、僕の頭上に飛んできたチェンジ・ザ・ハートが、雷を受け止めた。


「なんだ?」


綾子は思わず、僕から離れた。すると、横合いから唐突に現れた黒い影に、吹き飛ばされた。


影は、三メートルはある大男で、蹴りを綾子の横腹に入れたのだ。


僕は、その大男を知っていた。


「久しぶりだな…。少年」


大男は、僕を見下ろしながら、口元を緩めた。


ふっ飛ばされた綾子は、すぐに体勢を整えると、状況を判断しょうと、自分を蹴ったと思われるものを探した。


すると、真後ろから、凍り付くような冷たい殺気を感じ…慌てて、振り返った。


いつのまにか、綾子の後ろを取ったのは…女だった。


しかし、その女は…人間ではなかった。角があったのだ。


頭に生える二本の角は、一本が折れていた。



「ギラ!」


僕は何とか…力を込めて、立ち上がった。


チェンジ・ザ・ハートが、トンファータイプとなり、僕の両手に装備される。


ギラは、不敵に笑う。


僕の目の端に、綾子の前に立つ…サラをとらえた。


綾子はすぐに、体をサラの方に向けると、右手から電撃を放つ。


綾子の本能が、危険を告げていた。迷う前に、攻撃しろと…。


しかし、サラは目をつぶり、鼻を鳴らした。


「我に…こんな攻撃など、笑止」


綾子が放った電撃は、すべてサラの角に吸収された。


「だったら!」


今度は、手のひらから火の玉を放った。


しかし、サラは片手で火の玉を払った。


「テラとは…こんなものか。これで、よく…女神を名乗れる」


サラは、一歩前に出た。それだけで、全身から放たれる闘気が、綾子を吹き飛ばした。


「綾子!」


走りよろうとする僕を、ギラは丸太のような腕で、前を塞いだ。


「どうやら…テラは、自分の属性も戦い方も、知らぬようだな。ただ魔力を使うだけの…ガキか…」


ギラは、肩をすくめた。


「綾子!」


ギラが立ちふさがっている為、そばにいけない。


(だったら…)


僕は、チェンジ・ザ・ハートを銃へと変えた。バスターモードだ。


引き金を弾こうとした僕は突然、後方に吹っ飛んだ。


何か見えない塊が、僕に当たったのだ。


ギラは、フッと笑った。


「な…なんだ……どうなって…」


また背中から、地面に激突した僕は、原発の上空から、ゆっくりと降下してくる人物を確認した。


いや、人ではない。


雷雲から落ちる雷を、三本の角が吸収しながら、天から降下してくる魔物。


その魔物も、僕は知っていた。


「バイラ…」


ギラの横に、着地したバイラは、ゆっくりとその精悍な顔を、僕に向けた。


「久しいな…赤の王よ…」


僕はよろけながらも、立ち上がった。


「バイラ!」


アルテミアが苦々しく、叫んだ。


ギラ、サラ…そして、バイラという…かつて、アルテミアのもとに集った…天空の騎士団。


翼ある…すべての魔物を傘下に治めた騎士団のトップの三魔神。


彼らが、実世界に現れたのだ。


「それにしても…」


バイラは、僕にじっと見ると…微笑んだ。


バイラの登場により、原発を覆う雷雲はさらに、黒さを増した。


「相変わらず…甘い」


バイラは、僕の心臓の部分についた拳の痕と、ピアスを見ると…首を軽く振り、僕から顔を背けた。


そして、視線を綾子に移すと、


「あれが、テラ…」


鼻で笑い、


「ただのガキか…」


少しがっかりしたように言うと、ゆっくりと歩きだすバイラ。


「待て」


僕は、バスターモードを構えなおす。


巨大な銃身が、バイラの背中をとらえた。


「何をする気だ!」


僕は引き金に指をかけながら、バイラの背中を睨んだ。


僕の問いに、バイラは足を止めると、振り返らずにこたえた。


「どんな小さな芽でも…我らの障害になりそうなものは…排除する!それが…」


バイラはゆっくりと、横顔を僕に向け、


「魔王ライの意志だ」


「ライ」


その名に、アルテミアが反応した。


ギラは静観している。


「や、やらすか!」


僕は引き金を弾いた。


炎と雷鳴の束が、光となり、一直線にバイラに向かう。


バイラは右手を、光線に向け、


「バイラブレイク!」


雷撃を放った。


光線と雷撃は激突すると…一瞬で消えた。相殺されたのだ。


「な!」


唖然とする僕の真後ろに、ギラが移動した。


振り向こうとしたが、前にいるバイラが、右手を僕に向けた。


一瞬の迷いが、命取りになる。それが、戦いだ。


「ギラ…」

「バイラ…」


僕はバスターモードを、どちらに向けていいのかで、判断が遅れた。


「ブレイク!」


前方と後方から、僕は挟まれるように、雷撃を食らった。


「うわああああああっ!」


心臓へのダメージが抜け切っていないときに、魔神の攻撃をまともに受けた僕は、一瞬にして…視界を失った。



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