奇跡の力
翌朝。
村人たちに見咎められないように気をつけながら三人と一緒に森の奥に向かう。
【忍者】ティナ。
【商人】ユヅキ。
【職人】ミユ。
人目につかない場所でこの三人に存分に力を発揮してもらう予定だったが、早速とんでもないことをやり始めた者が一人いた。
「できた~」
【職人】ミユの手によって作られた――工具セットである。
材料は森の中に落ちていた木の枝と石。
その二つを組み合わせてあっという間に『斧』を作り、『ノコギリ』を作り、『ハンマー』を作り、『ノミ』を作り――鉄を一切使わず、石と木だけでできた道具が大量に作られた。
「カイさん、ちょっと伐ってみて~」
「あ、ああ、わかった」
渡された斧を見ると、丁寧に研磨されて磨き上げられた石の刃がしっかりと柄に固定されていた。これを一瞬で作り上げたというのだから本当に規格外の能力だ。
「ふんっ!! ――!?」
木の根元に目掛けて思い切り斧を振り下ろすと、カコォン!と高い音を響かせながら深々と刃が幹に食い込んだ。
「な、なんだこの切れ味は……」
カーンカーンと連続でうち振るうと瞬く間に幹の半分近くまで伐れてしまった。
「三人とも離れてくれ。木を倒すぞ」
切れ込みを入れた反対側から同じように斧の刃を叩きこむと、すぐにメキメキと音を立てて倒れていった。
「おお~! すごいすご~い!!」
「大迫力ですね……」
地響きをあげながら倒れ込んだ大木に、ミユとユヅキが歓声を上げた。
木を切り倒した後は、もう一度【職人】の出番だ。
「ふんふん~。枝打ち~。乾燥~。はい、出来上がり~!」
鉈を手に持ったミユが触れただけで木の皮が剥され、枝を切り取られ、乾燥まで終えた『木材』に加工されしまった。
ははは……なんだこれ……こんなの笑うしかないぞ。
「凄いけど、これは村まで持ち帰るのも大変だな……小さなブロックに切り分けて持ち帰ることにするか」
「あ、それなら私が持って行きますね」
「え?」
ミユに切ってもらおうとしたところで、ユヅキが材木に触れた。
「【収納】」
消えた。木材が一瞬で消え去った。
「つい先ほど気がついたんですけど、どうやら【商人】の能力に物資を持ち運びするアイテムボックスの機能があるみたいなんです。これで荷物を気にせずに持ち運べますね!」
「は、ははは……そうだな……」
この後、場所を移動する時になってミユもツールボックス(生産道具限定の収納機能)の機能を持っていることが発覚し、石と木を材料に山のように大量の道具を作り出すのだった――。
能力拡張。
【商人】:アイテムボックス機能
【職人】:ツールボックス機能