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聖女拾った4

「ふぅ……」


 空になった器を置く。腹がくちくなったところで、そろそろ真剣に考えるか。


 ――材料と器具を揃えたら一瞬で出来上がるってどこまでできるんだ?


 これが料理のみだったら安心だが、おそらくそんな簡単な話ではないだろう。


「ミユ。さっき使っていたのは俺のナイフだよな?」


「うん~。小屋の中に置いてあったから使ったよ~」


「見せてくれるか?」


「いいよ~。はい~」


 手渡されたナイフ――先ほどは包丁代わりに使われていた――を鞘から抜いて確かめる。

 普段は解体などの雑用に使っているが、いざという時はサブウェポンにできるように少し大振りな物を使っている。

 手にズシリと来る重さが指が吸い付くような持ちやすさを感じる。持ち手の部分にあった傷が消えていて、刃の部分は新品同然に輝き、鋭さを取り戻していた。


「……このナイフ、ミユが手入れをしたのか?」


「うん~」


「……じゃあ、試しにこの剣も手入れしてくれるか?」


「は~い。砥石と水を用意して~。【修繕】発動~! 綺麗になれ~!」


 ミユに渡した剣がシャキン!という音を立てて一瞬だけ輝き、光が収まるとすでに作業が終わっていた。


「どうぞ~」


「ああ……ありがとう……」


 まず鞘を確認したが、こちらも傷や汚れが落ちた新品同様の鞘になっていた。木と革でできている鞘も問題なく修繕できるらしい。

 柄の部分は滑り止めの革が巻いてあったが、そちらも新品同様。かなりヘタレていたのに問題なく直ったらしい。だが、見た目は新品同様なのに、先ほどのナイフと同じで手に吸い付くような持ちやすさ。

 そのまま鞘から引き抜くと滑るように刃を引き抜くことができた。途中で引っ掛かるような感触もない。


「……今までより使いやすいんだが……」


「それならよかった~」


 ミユが素直に喜んでいるが、やはりこの少女もヤバい能力を持っていると確信した。


「ちょっと外で振ってくる」


 小屋から出て素振りをすると、はっきりと違いが分かった。

 今まで使っていた剣と重心が違う(・・・・・)

 けれど、この方が使いやすい(・・・・・・・・・)


「……これ、見習いがつくった安物だぞ?」


 俺が使っている剣は安物だ。鍛冶師の見習いが練習として打った物の中で、何とか売り物になる、という品物だ。重心の位置が悪かったり微妙に歪んでいたり、いろいろと問題はあるがその分安い。駆け出し冒険者の心強い味方が。


 そんな安物の剣がまともになっていた。

 ミユの【修繕】によってあちこちの欠点がなくなっているだけじゃなく、手抜きして――価格を抑えるために――まともな刃をつけていなかった剣身にも研ぎ澄まされた刃がついていた。


「完全に別物じゃないか……」


 これを一瞬で行ったなんて、ミユの能力の底が知れない。


「ありがとう、ミユ。素晴らしい出来だったよ」


「ん~? どういたしまして~?」


「それで、次はこの修繕をお願いしたんだけど大丈夫か?」


「いいよ~」


 小屋の中にいたミユにお願いして、更にいろいろ修繕してもらった。

 革鎧を修繕して貰えばサイズがピッタリになって非常に動きやすくなり、コートを修繕して貰えば艶が増して穴やほつれが直っていた。さらに小屋の中の木材を使って壁を修繕したことで隙間風も入ってこなくなった。


「これは修繕できるか?」


「ん~? これは修繕できないかな~」


 小屋の中の今夜の寝床、ベッド代わりの藁を置いてある場所にミユを案内したが修繕はできなかった。


「これは【作成】だね~。ベッドになれ~!」


 ポンという音とともに、藁を材料にして一瞬で藁ベッドが完成した。

 【作成】と【修繕】――応用範囲が広すぎる。


 家の壁を修繕できたが、『家』そのものも作成できるかもしれない。

 そして、家を作成できるのなら、『城』や『要塞』すら、材料があれば作れるのかも……。


 当然のようにミユを説得し、能力の他言無用を言い聞かせた。

 この子の能力もヤバい。むしろヤバいのしかいない。

【修繕】:鉄の剣-2(低品質)→鉄の剣カスタム(普通品質・カイ用)

このように低品質or劣化状態の物を普通の品質・新品同然の状態にした上で使用者向けのカスタムが可能。

破損している物を修繕する場合はさらに追加で材料と器具が必要になる。

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