手間暇かけて?
「は~い、ピザの出来上がりだよ~」
出来立て熱々のピザをテーブルの上に置くと、早速カイさんがかぶりついた。
舌の上でハフハフと転がしながらもの凄い勢いで食べていく。
「おかわりは~?」
「貰おう!」
夢中で食べるカイさんに尋ねると勢いよく返事が返ってきた。カイさんよく食べるからね~。
最初の一枚目はクリスピー生地のピザにしたけど、次はハンドトス生地にしようかな、と材料を手に取る。
のっける具材はキノコ多め。近くの森で採れたものを使っている。
キノコは毒を見分けるのが大変だとか、そもそも異世界のキノコだから私たちの世界の知識が通用しないっていう問題があったけど、それもユヅキちゃんの能力であっさり解決した。
ユヅキちゃんのアイテムボックスは鑑定とか並べ替えとかの機能がついていたらしく、アイテムボックスに放り込んだキノコの毒の有無とか食べられる物だけ分けるっていうことが可能だったんだ。
そういうわけで森で見つけた怪しい色のキノコとか、見たことない形の木の実とか、そういう異世界っぽい食材もいくつか料理に使っている。
まあ、ピザに使う小麦粉とトマトソースとチーズは通販ショッピングで購入したんだけどね~。
「デザートもあるよ~。じゃじゃ~ん! チョコレートタルト~!」
今日はイタリアンの気分なのでイタリアっぽいデザートをイメージしてみた。前ヨーロッパに行ったときに食べたけどイタリアはチョコレートも美味しいんだよね~。
本当はジェラードとかティラミスを作りたかったけど冷蔵庫も冷凍庫もないので今回は断念。そろそろ雪の季節だってカイさんが言っていたから寒い日なら作れるかも?
「なんだこの濃厚な甘味は……」
タルトを一口食べたカイさんがわなわなと震えながらゆっくりタルトを味わっている。小麦粉を使わないで粉末にしたナッツを混ぜたレシピ。私も一切れ取って口に入れたけどとっても香りがよくてホロホロとした食感が大好き。
「はぁ……美味い……」
「美味しいよね~」
普段は難しい顔をしているカイさんも料理を食べている時は幸せそうに相好を崩している。能力頼りのお手軽料理だけどああやって美味しいって喜んでくれる人がいると私も嬉しくなる。
そういえばカイさんって何歳くらいなんだろう。最初は私たちよりずっと年上なのかなと思ったけど、こうしてデザートに喜んでいる姿は可愛いな。
「さて、ミユの能力について考えたんだが」
「うん」
「俺は、お前の能力を使って稼ぐなら『面倒で手間のかかる品物』を作って売るのが確実だと思う」
「『面倒で手間のかかる品物』……?」
「そうだ」
ん~? どういうことだろう?
「そして材料はこの辺で手に入るものを使う。安かったり手に入りやすい物がいい。『手に入れようと思ったら誰でも手に入れられる材料』で、まともに作ろうとしたら『時間も手間もかかる物』だ。
他の人間がそれこそ二日三日、一週間二週間かかるような物でも【職人】の能力を使えば一瞬で完成する。その『手間暇』を売って金にするんだ」
「ん~……『簡単な材料』で『手間暇かかる品物』……」
ふと思いついたものがあったので、小屋に置いてあった材料の山から木のツタを取り出した。
この木の皮を剥いで洗って乾かして、という手順を経ると糸やロープみたいに使えるようになる。
このツタを能力を使って紐にして、さらにその紐を使って別の品物を作り出す。
一瞬で木の皮を材料にして作られたバッグが出来た。
「このバッグみたいなのでいいの~?」
材料は森にいっぱい生えていたツタ。
そのツタを加工するのに日にちがかかるし、編み目が汚くならないように上手に編み上げるのは手間がかかる。
でも私の能力で作ったこのバッグは編み目も全部揃っていてどこにも歪んでいる部分がないし、丈夫で重い物を中に入れてもビクともしない。底も取っ手もすごく丈夫に出来ている。
「……ああ、これなら問題ない。材料も製法も似たような物が既に街にあるけど、この品質ならきっとすぐ買い手が見つかるだろう。これは売れるぞ」
編んだばかりのバッグを手に取って確認しているカイさんからお墨付きが出た。
これ系なら問題ないらしいから他にも何か作れないかな~と考える。
「こっちは雪が降るとかなり積もるって言ってたよね~。。雪、雪……あ、そうだ」
かんじきを作ったら意外と売れるかなぁ? 笠とか蓑とかも作ってみてカイさんに見せてみよ~♪。




