愚か者たち2
開拓村のダート村長は呆れ果てていた。
冒険者に貸している小屋に無断で立ち入ってはいけないなんてことは子供でさえ知っている。
更に、モンスターの被害にあって精神的に不安定になっている人間がいるから近づかないようにとわざわざ言っていたのに、ノコノコ顔を出して怪我をして帰ってきた馬鹿が三匹もいたのだ。
「このままでは許さん。お前たちにも責任を取ってもらうぞ」
ようやく自分たちが何をしでかしたのか分かってきた馬鹿どもを睨みつけて、この馬鹿をここまで放置していた家族を呼びつけるのだった。
翌日、早朝のうちから村長と馬鹿三人と屈強な護衛兼監視の村人たちがぞろぞろと連れ立って村を出た。
向かう先はイーミル。迷宮都市を除けばこの周辺で最も栄えている街であり、冒険者ギルドの本部も置かれている街だ。
だが、今回村長たちが用事があるのは冒険者ギルドではなかった。
イーミルの街にある奴隷商に馬鹿ども三人を売る為に向かっていたのだった。
どうしようもない馬鹿だったが、三人とも元気が有り余っているくらい無駄に健康だ。農作業で鍛えた体は労働を苦にしない頑強さと力強さを持っており、まだ若い男ということもあって一人頭金貨五枚の値で売られていった。
合わせて十五枚の金貨のうち、三枚が迷惑料としてカイに支払われ、三枚が元の家族に分け与えられ、残った九枚の金貨が村長の預かりとなる。
村の問題児たちが金貨に変わった。
降ってわいた大金を手にしてさて、何を買って帰るかなとダート村長は思考を巡らせた。
◆ ◆ ◆
一方その頃、俺たちは森の奥地で採取を行っていた。
「依頼が終わったらイーミルの街に戻ることになっているから、今のうちに売れるものを確保しておこう。雪が降るまでにできるだけ集めるぞ」
三人のお陰で今まで足を踏み入れたことのない場所まで来ることができた。
村に近い場所は村人たちが採取をするので素材が少なく、少し離れた場所でも猟師や冒険者が足を踏み入れるので金目の物は持ち去られてしまう。
だが、滅多に人が入り込んでこないような奥地には貴重な素材が山のように眠っている。
「みんな~、橋作ったよ~」
ミユの能力でこれまで通れなかった場所が通れるようになり。
「この周辺の草と木の実とキノコを採ってきたわ。あとモンスターも寄ってきたから始末したわ」
周辺の警戒、採取、モンスターとの戦闘をティナが分身を駆使して苦も無くこなし。
「はい、預かります。今日も大量ですね」
集められた素材を次々にユヅキが仕舞いこみ、新鮮な状態で大量に持ち帰り。
「これは依頼で見たことがあるな。こっちは市場でも売っていた奴だ。珍しいが絶無ってほどじゃない。俺たちが売っても大丈夫だ」
そして、俺が集められた素材を売っていい物、売ると不味い物、と振り分けていく。
こうして全員で着々と販売用の素材集めをしながら、秋は更けていったのだった。




