表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

松平です

 ベッドから飛び下りて、そのまま大股で入り口まで猛ダッシュ。

 力任せにドアを押し開けると、

「あら、熱烈な歓迎。ありがとうございます、お嬢様」

 見慣れた憎らしい笑顔がそこにあった。

「松平ーっ」

 胸ぐらを掴もうとするが、いつものようにひょいっと避けられ、勝手に部屋の中に入る。

「はいはい。今日は看板忘れたので、これで勘弁してください」

 スーツの胸元のポケットから、ミニサイズの『大成功!』と書いてある旗を出して振った。お子様ランチ用のやつだ。

 瞬時に取り上げて、握りつぶす。

「他に言うことがあるんじゃないのか!」

 咎めるような眼差しで凄むが、あらあらと笑顔を崩さず「それから」と別のポケットから、

「はい、これ。直ぐ飲んで」

「はあ?」

 どどめ色の薬用カプセルを手渡された。

「即効性の専用下剤です。お腹は痛くなりにくい処方です」

「だからっ」

 鼻息を荒くして詰め寄る。

「タピオカに混ぜた盗聴用のカプセル。時間が経つと体内に吸収される可能性があります。害はないと思いますが、多分・きっと・害は・ないと――」

 害があるようにしか、聞こえないんですけどー。

「ぬわわわぁ、馬鹿ー」

 さっきと同じスピードで、洗面所に駆け込んだ。


 ここからは、私の知らない会話が始まります。

 主人公ではなかったらしい。

 もちろん、殺人犯でも。

 私の名前は佐東紅葉さとうもみじと申します。

 JKでもありません、今年で二十歳になりました。

 では、後ほど――。



 ☆



「娘さんで、人体実験してるって噂、本当なんですね」

 呆気に取られていた蜂須賀さんが、ゆっくり近づいてきた。

「大丈夫なんですよ。一週間くらい経過しない限り、本当に害はないですから。それに、お嬢様は一般の方より、とっても健康です、ふふっ」

 と胡散臭い含み笑いをしている。

 敵に回すと厄介そうだなと、蜂須賀さんの第一印象。

「失礼いたしました。私、佐東紅生さとうこうせいの第二秘書の、松平と申します」

 丁寧な所作で名刺を手渡され、

「ああ、あなたが秘書の――」

 言葉に詰まった。

 名刺と秘書の顔を交互に確認する。

「母は金髪美女が多い国ランキング上位の出身でして」

 優越感が溢れ出る笑顔を前に、戸惑う蜂須賀さん。

「はあ?」

「熱い視線は慣れております」

 可愛らしくウインク。

「いや、そういう意味で見ていたわけではありませんよ」

 首を横に小さく振る。

「唯織さんとお呼びしますね」

「嫌です」

 首を横に大きく振る。

「お茶でも飲みながら話しましょう。唯織さん」

 さっさと先にリビングへ歩き出した。

「話を聞かない人ですね」

 しっかりと聞こえるように言って、後ろから蜂須賀さんがついて行く。


 絵に描いたような金髪美人秘書の名前は『松平雅清まつだいらまさきよ』と言う。

 備え付けのミニキッチンで、湯を沸かし始めた。

 銀に近い金髪をハーフアップして、毛先を巻いている。白過ぎで青みがかった美肌に、赤茶色の虹彩。鼻もスッと高く、艶やか唇の左下に小さなホクロ。

 ダークブルーのオーダーメイドスーツ。スカートの丈は膝上。

 全方向に色気をまき散らかしていた。

(胸はなし、下は……()()

 視線に気づいていた金髪美人秘書は、流し目でひと睨みしながら、

「唯織さんのエッチ」 

 わざと股間を隠すように手を前に置く。

「あ、いや、ごめんなさい」

 動揺して、声が裏返ってしまった。

「うふふっ」

(早く帰りたい…………)

 蜂須賀さんは、まだ帰れない。


お読みいただきありがとうございました。(^。^)y-.。o○

お時間があれば、ブックマーク・感想・評価【☆☆☆☆☆】等、参考にさせていただきますので、宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ