表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

ケーキのお味は

 ドラマに出てくる爆発物処理班の気持ちがわかる、気がする。

 厳重に手提げ袋から箱を取り出し、慎重に包装をほどいた。

 蜂須賀さんのほうをチラッと見て、再確認する。

 軽い感じで首を縦に振った。

 もう、信じてますからね。お願いしますよ。

 額には汗が滲むが、両手がやけに冷たい。

 はーっ

 変なコードとか出てきませんように……

 薄目で目視しながらゆっくり、

 そうっと箱を開けた――。


 苺のショートケーキ。

 蜂須賀さんの言った通りホールサイズの丸いやつ。

 高そうな真っ赤な苺が上にぎっちりのっている。

 本当にケーキだ、美味しそうな。そして私、苺が好物だった、気もする。

 苺の上に楕円形チョコレートプレートが飾ってあって、そこには、【ハッピーバースデー・佐東紅生さん】と描いてあった。

「ハッピーバースデー、さとう…………べにお?」

 声に出して読んでみるが――。

 佐東紅生――。

 サトウベニオ――。

 サ・ト・ウ・ベ・ニ・オ――――…………

 あれ?

 サ・ト・ウ・……………………

「誕生日ケーキだね」

 呑気な声で蜂須賀さんが呟いた。

 

 ……いや、違う。

 胸がざわざわする。

 頭の中で打楽器のような重低音が響き出した。

 不快だ、とっても。

「……………………っ」

 唇を噛んで、耐える。

「どうした?」

 心配そうな蜂須賀さんの声が遠くに聞こえる……気がする。

 全てが遠い。

 得体の知れない何かが、ぐるっと体を一周して、そして、乾燥した土のように亀裂が入って、ぽろぽろ落ちていく――すべてが…………。

 あっ、呼吸が楽になった。

 目を閉じると音が止んだ。

 体の中で振り返ると、

 私を締め出していた、私と私たちが迎えに来ていた。

「……………………ふっ」

 ああ、私が全身に満ちる――。

 やっと戻ってきた――・・・

「……大丈夫か?」

 私の肩に蜂須賀さんの手が触れる。

 ふふっ、あなたが大丈夫だって言ったんですよ。

 大丈夫ですよ、こんなの。

「君!」 

 蜂須賀さんの手に力が入る。

 ああ、蜂須賀さんを困らせているなぁ。

 でももっと、困らせるけど……しょうがないよね、共犯だもの。

 ゆっくり目を開けて、深呼吸した。


「すみません。やっぱり、私が犯人です」

 思い出したての運動神経は難なく働き、蜂須賀さんの手を振り払って突き飛ばし、最速で寝室に飛び込んだ。

「おいっ」

 ベッドの上の血だるま親父の胸ぐらを両手で、ぐしゃっと掴み上げる。

「親父ー。またやったな!」

 返事は無い。

 まだ、死体(?)なので、だらんとされるがまま、黙って体ごと揺さぶられている。

「ふっ、これはチャンス!」

 誰にも見せられない笑みを零し。

 ベッドの上に馬乗りになって圧し掛かり。

 首に両手をかけた。

「頼む、今度はちゃんと死んでくれよ」

 指先に力を込める――

「早まるなっ」

 手首を掴まれて力を削がれた。

 蜂須賀さんが間に合った。

 チッ。

「ま・つ・だ・い・らーっ、また、どっかで盗聴してんだろ!出てこいやー」

 怒りが収まらない私は、宙に向かって叫んでいた。 


 その言葉を待っていたかのように、ドアのチャイムが小さく鳴った。


お読みいただきありがとうございました。(^。^)y-.。o○

お時間があれば、ブックマーク・感想・評価【☆☆☆☆☆】等、参考にさせていただきますので、宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ