第四話
日付をまたいでしまい申し訳ありません!
宮水に協力を申しこまれた。
しかし、未だに彼女については謎が多い。
てか、謎しかない。
一番の不明な点、それは彼女がなぜ、俺の正体を知っているのかということである。
俺と宮水は和泉野宮学園でたまたま同じクラスメイトとして出会っただけ。入学前から目をつけられていた可能性は低い。
しかし、俺が所属する暗密聖騎士団が機密情報を外部に漏らしているとは考え難い。第一今の俺の所属は聖剣奪還派の黒の騎士団だ。
そうなるとやはり俺個人から情報を入手した可能性が高い。彼女のアウラについても未だに不明なままだ。
精神干渉系のアウラならばもしかしたら、とも考えたが、精神干渉系のアウラは様々なアウラの中でも希少種だ。それはそれで厄介だな。
俺は今自分がやるべきことにしっかりと照準を定める。
入学初日に済ませるはずだったが余計な邪魔が入ったしな。
俺の今、与えられている任務。
――皇太子、倭京星の暗殺だ――
深夜、俺は倭家の別邸の裏側にいた。
ここからなら侵入が可能だ。
別邸の裏庭から屋敷内に入れる扉が1つある。そこからなら最低限の戦闘で皇太子までたどり着けるはずだ。
扉の鍵を見る…。
どうやらアウラの力で専用の鍵が無いと開かない仕組みになっているらしい。
これではピッキングは不可能だな。
俺は手榴弾を扉に設置して、爆破した。
凄まじい爆音が屋敷の近辺に響く。
もちろん爆破なんてしたら護衛の騎士たちが駆けつけるはずだが、俺に限ってそのようなことはない。
屋敷内の人間の位置と感覚は掌握済みだ。
扉は無残に跡形もなく破壊されている。これで屋敷内に侵入できる。
屋敷内は静まりかえっている。
護衛もおよそ屋敷に15名程度いるようだが、起きて活動しているのは7、8人程度である。
俺は裏庭の扉から侵入し、角を曲がった瞬間、ナイフを突き刺す。
足元に太腿のあたりにナイフが刺さった兵士は何が起こったか分からない表情から、苦悶し、気絶した。
もちろん、「白銀の守り人」の一員であろう騎士がナイフ1発で気絶するわけがない。
ここで俺のアウラ感覚制御の力が働いた。
相手の痛覚を何十倍にも引き上げる。そうすることでナイフ1発でも相手を気絶に追い込むことができるのだ。
爆音で護衛が駆けつけないのも同じ理由である。
この屋敷内の人間の聴覚を一時的に奪ってある。寝ている者は気付かないし、深夜なら少し耳が遠くても気が付かない。
相変わらずそういうところでは便利なアウラだ。
1人の護衛を無力化した。
できれば後2人くらいで勘弁してほしいものだ。
俺は屋敷内を素早く移動し、目的地である倭京星の寝室までたどり着いた。
不自然なほどいとも簡単に。
扉を開ける。
部屋は真っ暗で閑散としていた。
さすが、王族の寝室。広さにして和泉野宮の教室の2倍近くある。
装飾品などは少ないが、本棚に本がびっしり並んでいて、皇太子の勤勉さが伺える。
しかし何だ、この部屋違和感があるな…。
ターゲットである倭京星は奥のベッドで寝ている。
整った寝顔は見ているだけでうっとりしてしまうくらいだ。もちろん俺にそっちの趣味はないが。
「無防備だな。」
他意はない。なんとなく彼に聞こえるような声でそう漏らしてしまった。
「皇太子、お前はここで俺に殺される程度の人間なのか?」
ここに来てまで往生際が悪い。とっとと殺せばいいのだ。
握ったナイフが震える。他のターゲットのときはこんな事はなかった。
寝込みでも背後からでもなんの躊躇いもなく殺すことができた。
しかし俺は今、彼を殺したくないとそう思ってしまっている。
結論はもう出ているのに、余分な感情が邪魔をする。
―だって、だって俺は……。
「驚いた。まさか本当に来るなんてな。」
2人しかいない部屋に俺ではない声が響いた。
俺ははっと声の主の顔を覗き込む。そこには完全に覚醒状態のターゲットの微笑んだ顔が見えた。
声の主―倭京星―は、布団の中で隠して握っていた聖剣インフィニティを軽く振った。
ここでとうとう俺は先ほどの違和感に気づく。
そう、なかったのだ。聖剣が。部屋のどこにも。
この屋敷の当主であり、聖剣の持ち主である彼が自らの部屋以外に聖剣を保管するはずがない。
俺はここで自分が嵌められていたことに気づく。
待ち構えていたのだ。倭京星は。
俺は万全な状態の王家最高戦力と一対一で相見えることとなってしまった。
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