第三話
第二話に引き続き第三話です!よろしくお願いいたします!
お決まりのように始まった自己紹介で、俺の心臓はバクバクである。
ある意味この自己紹介が今後の交友関係に繋がると言っても過言ではない、下手なことは言わず、かと言ってつまらない人間とも思われないようにしなければ。
一人一人様々に自己PRをしていた。ある生徒は趣味だとか、ある生徒は彼女はいませんだとか、自分のアウラについて話す人もいた。
俺の番が近づいてきた。特に言うことが決まっていない。これはあれか、一発ギャグとかやったほうがいいのか?
そして運命の時がやってきた…。
俺はおもむろに席から立ち上がる。
「えー、八神日吉です。……趣味は、えー、まぁ無いです…。その、1年間よろしくお願いします…。」
パチパチパチ、とまばらな拍手がクラスを包んだ。
やっべ、何も言えなかった…。趣味ないとかつまんない人間だと思われただろう。
俺がそんなことを思ってるうちにも自己紹介は進んでいく。次は例の妖精さんである。
「宮水音羽です。よろしくお願いいたします。」
え、もう座った!愛想ないなこの子。
宮水っていうのか、友達にはなれないかもな。
一通り自己紹介が終わって、剣持とかいう担任は「皆お疲れ!明日から授業だから気合入れて行けよ!」と言って教室から立ち去った。
今日のところは帰っていいらしいのか、教室を後にする生徒が少しずつ増えていった。中にはもう出来つつあるグループで話している者もいたが、俺は教室を後にすることにした。
今日はやることもあるしな。
俺はHクラスを出ると、他のクラスをチラチラと確認する。
ここも違う。ここも違うな。
一番奥のAクラスを軽く覗き込むとその姿があった。
倭京星。
緋色の髪にすらっとした長身、整った顔立ちと気品のある振る舞い。ザ王子様という感じだ。
彼の腰には世界の財宝と呼ばれている聖剣インフィニティが携えてある。
倭家は一言でいうと皇族だ。この日本を治めている一族であり、今や世界でも有数の権力を持つ一族でもある。その象徴である聖剣インフィニティを当たり前のように持っている。
この男は只者ではない。
国家最大戦力とも裏では言われており、何せ一人で国を一つ壊滅できる力をも持っていると噂されている。
アウラは明らかになっていないが、きっととてつも無い力を発揮できる異能なのだろう。
もはや彼の存在が今の日本の希望の星といっても過言ではない。
俺は彼がどのクラスにいるかを確認したかった。ただそれだけだ。
別に友達になりたいとか、そんな邪な気持ちは持っていない。…ほんとだよ。
ただ確認する必要があっただけだ。
◆◆◆
日も沈み、人の数もほとんど無くなった深夜、黒のローブを纏った青年が大きめの狙撃銃をトランクに詰め込み学校へと侵入した。
青年は軽い足取りで本校舎の屋上へと上がり、銃口を構えた。狙いは……、倭家の別邸である。今は高校に通うために倭京星のみが一族の中で唯一暮らしている。
屋上からは二つの部屋が見えて、どうやらその一つは倭京星の個室のようだ。
彼が戻ってくるまでここで待機しようとしていると、青年は背後から何者かの気配を感じ、狙撃銃をトランクにしまって、すっと後ろを振り返った。
そこには拳銃をこちらに向けている銀髪の可憐な姿があった。
「こんなところで何をしているのですか?八神日吉君?」
「お前こそどういうつもりだ。」
両手上げて青年―八神日吉―は聞き返す。
「深夜の校舎への立ち入りは禁止だったはずです。」
「それはお互い様だろ、宮水さん。」
牽制し合うような雰囲気が屋上を包む。
「それよりも、屋上で何かするつもりだったのですか?」
「いや、俺は夜景が好きでな。こういう場所を見つけるとどうしても気になってしまうんだ。」
「確かに、高くていい場所ですよね。ここ」
宮水音羽は試すような微笑でこちらを見ている。
「あぁ、でももう堪能した。そろそろ帰るところだ。そっちはどうしたんだ?たった今来たように思えるが。」
「私は貴方について来たまでです。拳銃なんて物騒なものをお見せしてしまい申し訳ございません。」
そう言って宮水は拳銃をしまった。
一介の学生が拳銃か、不自然だな…。
「今の女子学生は後ろからクラスメイトに拳銃突きつけるのか…。」
「そんなことはありませんよ。これは護身用です。」
「それより、そのケースの中身は何ですか?かなり大きいように見えますが。」
「これは望遠鏡だ。星を見ようと思ってな。」
やだ俺ロマンチック。
「本当ですか?」
「なぜ、俺がお前に嘘をつかなきゃいけないんだ?」
「質問に質問で返さないでください。」
「そうか、じゃあ俺はもう帰るぞ。また明日な。」
そう言って俺は屋上を後にする。
これ以上の会話はボロが出そうで危険だ。
扉を開けて下へと降りていくと、宮水は追ってはこず、そのまま寮への帰路につくことにした。
「…貴方の言っていることは嘘しかありませんね…。」
誰もいなくなった屋上で宮水音羽は一人呟いた。
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さて、区切りは微妙ですがこれで序章は終了です。主人公である八神日吉の雰囲気とこれから始まるであろう何かを感じていただければ光栄です。そして次回から第一章に突入します!日吉とその周りが微かに動き始める章になりますので是非読んでいただけたら嬉しいです!