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第十六話


 試験も終わり、ようやく落ち着いた雰囲気になった。結局、うちのクラスは凪沙とクラスのリーダー格であるイケメン、田内陽介(たないようすけ)のチームが圧倒的な強さで優勝し、延2チームがトーナメントで優勝を果たした。


 「田内君すごーい!今日もかっこよかったよ!」

 クラスの女子達がイケメン田内を囲っている。相変わらずいけすかない奴だ。羨ましい。

 

 「そんなことないよ。風早さんが凄かった。僕はそのおこぼれを貰えただけだよ。」

 当の田内は謙遜しまくりである。これが余裕のあるイケメンなのだろう。羨ましい。


 「でも僕らだけじゃなくて、神代さんのチームも優勝したよね。やっぱり流石だよ。」


 「そんなの天下七家だから当たり前じゃん。神代さんなんてどうでもいいよー。」

 そんな心ない言葉が聞こえる。…きっと神代にも聴こえているだろう。


 天下七家だから、優秀なアウラを持っているから、だから何だというのだろうか。その能力をものにするために神代はとてつもない努力をしてきているのだろう。今日一緒に戦って理解した。

 才能がある奴だから分かるプレッシャーやストレス、それに神代は常に悩まされている。

 その事が田内も分かっているのか、一瞬厳しい表情をしたように見えた。今は苦笑いってとこか。


 「田内くん。凄いですよね。モテモテで。」

 

 「…嫌味か。」

 そう言って俺に話しかけるのは美しい銀髪を靡かせた宮水であった。


 「試合、観戦させてもらいましたよ。八神くん、結構頑張ってたじゃないですか。」


 「結構どころじゃねぇよ。頑張り過ぎてヘトヘトだ。」

 相変わらず達観した不気味な女子だ。


 「不気味なんて思わないでくださいよ。年頃の女の子に失礼ですから。」

 ふふっ、と宮水はこちらに微笑んでくる。何こいつエスパーなのか?


 「それよりも宮水、お前試験の方は大丈夫だったのか?」

 明らかに武闘派ではない宮水、試験中も度々気になっていた。


 「まぁ何とか、一回戦は勝つ事が出来ました。」


 「そうだったのか、頑張ったじゃないか宮水。」

 先ほどのお返しとばかりに俺は弄る。


 「そんなにお仕事が欲しいなら言ってください。」

 またもや宮水の不敵な笑みが炸裂する。


 「嘘ですごめんなさい。」

 いざと言うときに上司の権限を使おうとするなんて職権濫用だ!


 「おっと、そろそろ俺は家に帰る。宮水、また明日な。」

 帰宅部の俺はすぐさま帰りたいのだ。試験が終わった今、もう学校に用はない。


 「ええ、明日の放課後、白屋敷に来て貰いますからお願いしますね。」

 …え?


 「仕事、ですか?」

 嫌な予感しかしない。


 「おめでとうございます。初仕事ですね。」


 …もうこの仕事、辞めたいよぉ…。


◆◆◆


 校門の前、最近は恒例になり始めたゆりとの下校が少し今日は気まずい。

 この手でゆりを試験とはいえ倒したのだ。もしかしたらもう来てくれないかもしれない。


 しかし、予想は大きく外れ、ゆりは元気良く俺に手を振りながらやってきた。どこかホッとした気分になったのは気のせいだろうか。


 「ごめーん!ちょっと遅れちゃったぁ。」


 「いや、俺も今来たところだ。」

 

 「そっか、なら良かった!」

 ゆりはいつものように屈託のない笑みを浮かべている。


 「その、今日は疲れたねー。」

 

 「あぁ、なんだ、その、ケガとかはなかったか?」

 

 「えっ?いやいや全然!きっとこー君が気を遣ってくれたんだよね。どこもケガなんかしてないよ!」

 ゆりは頭をブンブン振る。ケガはしないように気をつけていた甲斐があったようだ。

 

 「でも、今日は楽しかったなぁ。」


 「…そうか?俺はすげぇキツかったけど。」


 「だって今のこー君をしっかり見つめることができたんだもん。」

 今の俺、その言葉がずっしりと俺の上にのし掛かる。そう。今の俺は、あの時の俺ではないのだ。


 「お互いにアウラも発現して、体格だって全然違う。もうこー君に私は勝てないかもしれないけど、でも、これが今のあたし達なんだよね!」

 ゆりは少し寂しそうな表情だったがその言葉も、目線も前を向いていた。


 「あたし頑張るよ。今までこの学園の中ではあたしは落ちこぼれだって決めつけてた。」


 「でも幼なじみのこー君がこんなに頑張ってるんだよね。あたしだってまだまだやれる!」


 「そうだぞ。こんな弱そうなナリした俺に負けたんだ。反省が必要だな。」

 言い返す言葉が見つからず、皮肉になってしまう。


 「むっ!こー君はいじわるだなぁ。」

 ゆりは可愛く頬っぺたを膨らませる。


 「…でも、ありがとう。正々堂々あたしと戦ってくれて。」

 確かに今の俺とゆりでは戦闘能力に大きな開きがあった。しかし、ゆりの意識を刈り取ったこの右手はいつも以上に重くなっていた。

 この重さを実感したことで俺も前に進める。大切な人を守るために。

 だから俺の返す言葉は決まっていた。


 「ああ、こっちこそありがとう。ゆり。」


 今回で第二章終了となります。そして次回以降のストックがほとんどたまっていないため一時休載させていただきます。次の更新がいつになるかはまだ未定です。頑張っていこうと思っていますので、これからも応援よろしくお願いいたします。

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