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第十四話


 スタジアムは大勢の観衆が集まっていた。どうやら一年生だけでなく、授業が終わった上級生までもがこの一年生の中間実技試験を見にきている。


 ザワザワとした喧噪の中、試合開始のブザーがスタジアム中へ鳴り響く。


 「じゃあ行ってくる。」

 日吉は一人で攻撃役を任せられている。200メートル先の敵陣へ向かっていった。


 「八神のやつ、一人で大丈夫だろうな…」

 

 「…大丈夫。八神くんなら敵が3人でもきっと問題ないわ。問題は私たちが黒崎を捉え切れるかよ。」

 決勝は守備に回り、黒崎を迎え撃つ神代。無野はその広い視野を生かして警戒に当たる。


 観衆の生徒たちの話し声で騒めく会場、コートに立つ人間だけが緊張を張り詰めていた。


 「…くる、かも。」

 無野がそう呟く。


 その瞬間、雷が降り注いだ。


 「危ない危ない。神代までもが守備か。機動力がモノを言うこの試験。お前はさぞ不便だろうね。」

 瞬間移動を使い、単独でHクラスの陣地に乗り込んできた黒崎だ。


 「それでもあなたを倒すなんて朝飯前よ。」


 「そりゃ楽しみだ。ほんじゃやってみな!」

 黒崎の姿が一瞬で消え、秋城目掛けて飛びかかる。神代は手から放った電撃を黒崎目掛けて放つ。しかし、黒崎はまたもや姿を消し、今度は神代の背後を取った。

 もらった。そう黒崎が思った瞬間、神代の全身から電撃が放たれる。


 「ぐわっっ!」

 黒崎は軽く吹っ飛び、地面に受け身を取る。


 「無野さん。あなたは戦いに巻き込まれると危険だからここから離れて!」

 神代がそう忠告すると、無野は黙ってコート中央に向けて走り出した。


 「…てててて。さすがは天下七家だな。簡単には勝たせてくれないか。」

 軽くにやけた黒崎はまたもや姿を消す。


 「おいおい!俺のスピードについて来れるか?」

 黒崎は瞬間移動で消えては姿を現し、消えては姿を表すを繰り返していた。これでは的を絞れない。

 あっちこっちに視線をやっている神代に上から豪快な蹴りがお見舞いする。

 

 「っ、くっ!」

 肩を抑える神代。今日一の歓声がスタジアムから上がった。

 あの天下七家の神代来夏が押されてる。その事実はギャラリーをよりヒートアップさせる。


 「…あーもううるさいなぁ。結局、私の味方なんて殆どいないじゃん…。」

 黒崎がまたもや上から襲い掛かる。


 ビリリリッッ!

 黒崎自身も何が起こったか分からない。そこには電撃で攻撃された自らと、電気を纏った少女が立っていた。


 「…誰も私の勝ちを望んでない…。だから、だからこそ!そいつらを落胆させるのが私の使命だ!」

 電気を纏った少女、神代来夏が黒崎を睨みつけた。


 「くっ、くそぉぉ!」

 電気を纏った神代にはもう手を出すことはできない。触れた瞬間、電撃がお見舞いされるだろう。

 

 「おりゃぁぁぁ!」

 追い詰められた黒崎は神代ではなく、秋城に飛びかかった。瞬間移動で真後ろに、今神代が攻撃すると、秋城も巻き込みかけない。これで決まった!


 「ぐ…っっ、へ?」

 血が出ている。腹から、爪で引っ掻かれたような深いキズだ。


 「俺だってリーダー任されてんだ。簡単にやられてたまるかよ。」

 秋城は血で滴る鉤爪をなぎ払った。


 「ぐ、ぐあぁぁぁ!」

 痛みに悶える黒崎は逃げるようにテレポートで消えてしまった。


◆◆◆


 時は同じくBクラスの陣地。

 日吉はある少女に得物のスパーダを向ける。


 「…これで終わりだ。ゆり。もう投降してくれ。」

 辺りにもうBクラスの生徒は樫時ゆりしかいない。日吉が一瞬にして2人のBクラス生徒をなぎ倒したのである。


 「こーくん…。すごい強いんだね。でも、あたしは本気でこーくんと戦うって決めたの。投降なんてしないよ!」

 ゆりは真剣な眼差しで日吉を見つめる。


 「きっとゆりじゃ俺に勝てない。俺はゆりを傷つけたくはないんだ。」

 日吉はあくまでゆりに投降してもらうように説得する。この言葉に裏は全くない。日吉は本当にゆりを傷つけたくはなかった。

 幼なじみに刃を向けることでさえ辛かった。実際に戦うなど日吉にとってはもってのほかだ。


 「勝てないかもしれない。けど、あたしは今まで頑張ってきたチームのみんなを裏切るようなことはできない!投降はしないよ!」


 チームに対する思い。きっとこのチームはここまで黒崎1人の力で勝ち上がってきたのだろう。それでもゆりはチームの為にと日吉に立ち塞がる。

 正真正銘の真っ直ぐな子なんだと日吉は眩しく感じた。


 「えいやー!」

 ゆりが手に持つステッキで日吉に向かって襲い掛かる。動きは鈍く、日吉は易々とかわす。もう一度ゆりは振りかぶるが日吉には当たらない。

 日吉は反撃はできずにかわすことに専念していた。

 いまだに決心がつかない。大切な幼なじみであるゆりは傷つけたくない。


 ふと小学生の頃の記憶が蘇る。ゆりはいつも真っ直ぐで明るい性格だった。心の奥では日吉もそうなりたいと、憧れていたのかもしれない。

 別に負けてもいいのでは?と嫌な考えが日吉の頭をよぎる。


 「八神くん!うしろっ!」

 その声は、日吉の後方、コートの中央付近からスタジアム中に響き渡った。


 

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