第九話
中間実技試験当日がやって来た。校庭に集う生徒たちは心なしがざわついている。
「白銀の守り人の一員として、負けは許されないわよ。」
珍しく凪沙から声をかけて来た。
「もし負けたら?」
こうやってすぐに試したくなってしまうのは俺の悪い癖なのかもしれない。
「は?あんたが負けるとは思えないけど。」
意外な返答が返って来た。
「私をギリギリまで追い詰めたあんたが負けたら私まで負けた気分になるじゃない。だから絶対に負けるなんて許さないから。」
随分と俺を高く買ってくれているようだ。
「ああ、精一杯やるよ。」
各グループに分かれて、一つの会場で一つのトーナメント戦を全て行う。したがって、俺たちは自らが戦うかもしれない敵の戦いを間近で見ることができる。
まぁ一回戦第一試合が俺らなんですけどね…。
俺たちHクラスチームは全員闘技場スタジアムに集合した。
闘技場スタジアムは和泉野宮学園の中でも1番大きなスタジアムで、普段の実技では使用されず、こういった試験や、体育祭などのイベントで使用される。
「いい?一回戦はウォーミングアップ程度で決めるわよ。私たちはこのトーナメントの優勝候補なんだから自信持って行こう。」
神代が淡々と俺たちを鼓舞する。あまり表現豊かな方ではないが、リーダーシップが取れる人間だ。
俺たちは教師の面々と、同じトーナメントの生徒たちが見守る中でスタジアムに入場した。
スタジアムはとても広く、全長500メートル近くある。全体に広がっている観客席にはほとんど人はいないが、あまりの貫禄に飲まれてしまいそうになる。
HクラスとDクラスの両方がグラウンドの端と端に陣取る。
赤いランプが音を立てて合図した。
実技試験スタートである。
「相手のリーダーはおそらく神代だ!攻撃に人数をかけて数で押し切るぞ!」
Dクラスは攻撃3人でリーダーだけを自陣に残して攻勢をかけて来た。
しかし、走っているDクラスの1人に向かって電撃が走る。
「うわぁぁぁ!」
残りの2人はやられた1人を確認して呆然としている。
「おい、なんで神代がリーダーじゃねぇんだ!」
「そんな安い手に乗るわけないでしょ。」
神代が残り2人を引きつけて、相手をしてくれている。
神代が3人を相手している間に俺は1人後方に取り残されているリーダーを狙う。
これならアウラを使う必要はないな。
俺はリーダー目掛けて勢いを止めることなく突撃する。相手リーダーは慌てて剣を鞘から抜いたがもう遅い。俺はスパーダで敵の剣を蹴散らし、クリスタルを破壊した。
試合終了のブザーが会場に響き渡る。
「奇襲は成功だったみたいだな。八神も意外となるじゃねぇか。」
リーダーマークを腕に巻いた秋城は満足気である。
「いや、褒めるなら神代を褒めてくれ。あいつが3人相手してくれてなかったらもう少し時間が掛かった。」
実際、神代の戦闘力は想像を遥かに超えていた。もはや彼女一人で優勝できるんじゃないか…。
これでFクラスが待つ2回戦に進むことができた。もう一組の一回戦であるCクラスとJクラスの戦いはJクラスが勝った。
これで2回戦の対戦表は、
Aクラス 対 Jクラス
Bクラス 対 Eクラス
Hクラス 対 Fクラス
Gクラス 対 Iクラス
となった。
「おい!お前ら!」
スタジアム裏で休憩している俺たちにトイレから戻って来た秋城が慌てた様子だった。どうかしたのだろうか。
「今Fクラスが大変なことになってるらしいぞ!」
Fクラス、次の対戦相手である。
「さっき便所でFクラスの奴らが話してたのを聞いたんだけどよ!あっちのチーム、1人遅刻してて次の2回戦は3人しか出ないって言ってたぞ!」
遅刻?試験なのに図太いやつがいたもんだな。
「秋城が聞いたことが事実なら、こちらに有利に働くことは間違いないわね。」
「ちなみに聞いとくが、遅刻したのってもしかして」
「ああ、吉良点豪だ。あいつは元から適当っつうかサボり症があることで有名だからな。もしかしたらって思ってたぜ。」
よほどの神経を持っているのだろう。普通に考えたら試験をすっぽかすなんてあり得ない。
「そういえば、吉良のアウラは何なんだ?」
俺が興味本位で尋ねてみる。もしかしたら重要なことかもしれない。
「た、確か、座標支配というアウラだった気がします…。」
滅多に喋らない無野が教えてくれた。座標か、応用が効きそうな優秀なアウラだな。
「確かに、吉良君のアウラは強力なサポート性がある。でも彼は彼自身を動かす事ができないのよ。おそらくそこがネックになっている。」
なるほど、つまり味方や敵は動かせるのだろうか。
「つまり一対一になればこちらに部があるというわけか。」
まぁ来ないなら来ないで杞憂なのだが…
ここでどうやら前の試合終了のブザーが聞こえたので俺たちの番となった。
定位置につくと、遠目から見るFクラスチームは秋城の言う通り、3人しか姿を見せなかった。
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