第二話
チーム分けが発表された日の昼休み、俺は1人飯を謳歌しようと教室を後にしようとしていた。
「八神君、ちょっといい?」
急に話しかけられた。
「えっ、あ、あぁ…。」
相変わらず俺のコミュ障が出てしまう。なんと1年でも屈指の実力と評判の神代である。
まぁ用件は何となく予想できるが。
「中間試験のことでちょっと話があるんだけど、チームの4人で作戦会議しない?」
「別に構わないが…、え、今から?」
うん、いきなりだとちょっと緊張しちゃうしね。だってほら、誰も知り合いいないし。
「ま、別に今からでもいいけど、良かったら放課後時間取れない?他の2人にも話つけてあるから。」
今日の放課後か…、運悪く今日は宮水に白屋敷にこいって言われてるんだよなぁ。
「もしかして忙しかった?それなら今度でも大丈夫だけど。」
「いやいや、全然暇。ぜひ行かせてください。」
まぁ可愛い女子の頼みだ。行かないわけにはいかないだろう。てか行きたい。
まぁ宮水にはちょっと遅れるって言っとけば大丈夫だろ。
「そう、それなら良かった。じゃあ放課後ね。」
そう言って神代は自分の席に戻っていった。
初めて話したが、なんかきっぱりっていうか、サバサバしている雰囲気だ。
でも、試験の作戦会議をしようとするあたり、基本的には真面目な性格なのだろう。
そんな分析をしていると何やら隣から背筋の凍るような視線が向けられていることに気づく。
「あらあら八神君。綺麗なクラスメイトからのお誘いがあって良かったですね。」
宮水である。何か怖い、怖い。
「一応あなたの上司である私が今日は呼び出したはずなのですが、…もしかして、忘れていたのですか?」
普通に笑顔なのが余計に怖い。
「…。いや、すぐに終わらせていくから別にいいだろ…。てか、そっちはそんなに重要なことなのか?」
「そんな言い方をするのですね。」
「何か怒ってるよな?ちゃんと行くから怒らんでくれ。」
上司に嫌われるとかもう俺は使い殺されて死ぬんじゃないかと思う。
「いいえ。そんなことありませんよ。ただ、八神君が楽しそうで何よりだと思っていただけです。」
目が笑ってない……。絶対怒ってるわこれ。
「学園生活を謳歌するのも良いのですが、くれぐれも本業を疎かにしないでくださいね。」
「え、俺の本業って学生じゃないのか。」
クラスメイトと放課後少し約束しただけでこの言われようである。
「お前の方も、長谷と一緒なんてついてないな。」
「確かに、実技的に私も長谷君もあまり戦力になりませんが、今回の試験ならやりようはあります。」
「さすがは白銀の守り人の総隊長様だな。」
「お褒めに預かり光栄です。それでは放課後、よろしくお願いしますね。」
何をされるのだろうか、心配で仕方なくなってきた。
◆◆◆
「まず自己紹介からね。私は神代来夏、アウラは超電撃よろしくね。」
神代がそう言って簡単に自己紹介を済ませる。なんか自分のアウラを発表する流れだな。
「わ、私は、あ、無野灯と言います。アウラは、その、第三の眼です…。その、あんまり実技とか得意じゃないんで…ご、ごめんなさい…。」
無野はやけに気弱そうな女の子だな…。
「ったく声が小せえよ。もっとはっきり喋れっつうの。」
「秋城、文句はいいから早く自己紹介して。」
神代は淡々と秋城を嗜める。
「てめぇ…」
秋城が神代を睨むと神代はさらに鋭い視線で秋城を睨み返す。なんか怖いんですけど。
「…チッ、秋城常だ。アウラは鉤爪だ。お前ら、足引っ張るんじゃねぇぞ。」
体格の良い秋城は、そう言うだけで俺ら3人を威圧する。この学校にもこういうやつはいるんだな…。
「八神日吉だ。アウラは、感覚制御。よろしく。」
「うん。みんなよろしく。それじゃあまず、リーダーを決めよっか。」
「そんなん俺でいいだろ。お前らは引っ込んでればいいんだよ。」
そんな無茶苦茶なことを秋城が言う。
「秋城、あんた何いってるの?この試験はチームで戦う、それしか勝機はないのよ。」
神代の言う通り、戦力がある程度拮抗するようにチームが編成されている以上、1人でどうにかできる試験ではない。まぁ例外もあると思うが…。
「わ、私は神代さんがいいんじゃないかと思います…。」
「あぁん?てめえ俺に文句でもあんのか?」
またもや秋城が今度は無野に飛びついた。
「ひえっ…。」
まぁそりゃ怖いよな。むしろ淡々と対応できている神代がすごいのである。
でも、俺もここで何か言わんと男が廃る。
「強い人間がリーダーをやる、それが真っ当に思えるが、今回はそのリーダーがやられるとチームの負けに直結する。そのリスクも考えないとな。」
「……………。」
何故か俺に他の3人の視線集中する。
「意外とあんたって考えてるんだね…。」
俺どんな風に見られてるのん?
「でも確かに八神君の言う通り、ランキングが1番高い私がリーダーになるってのは、逆に私が迂闊に前に出れなくなるってことになるのよね。」
だからと言ってあまり戦闘向きでない人間にリーダーを託すのも少し、と言うかかなり危ない作戦である。
「そうなるとやっぱりそれなりに戦える俺がリーダーでいいんじゃね?」
確かに秋城は1年のランキングも56位。実力も申し分ないので頼りにはなるが…。
「いや、秋城には特攻隊長をやってほしいのよね。あなたの鉤爪、近接戦闘に有利だし、あんたは戦闘に関しては頼りになる。」
単独先攻か…、もしかしてこれは俺向きなのでは?
「いや、先攻なら俺がやる。」
俺に3人の視線が集まった。
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