第七話
横になりながら俺は考える。
これは恐らく上が最も喜ぶ状況なのである。
俺の今回の暗密聖騎士団としての任務は、聖剣倭京星の暗殺である。だが、もちろん聖剣保守派の暗密聖騎士団が皇太子を殺すことはしない。
今回の任務は皇太子倭京星ならびに、彼を護衛する白銀の守り人に対する抜き打ち試験だったのだ。
俺が暗殺成功、すなわち皇太子を追い詰めることができたら、不合格。俺を撃退できたら合格、ぐらいのところなのだろう。
今回は悔しくも後者になった訳だが…。
不合格になったら皇太子と白銀の守り人がどうなっていたのかは俺でも知らされていない。
しかし、俺を見事に撃退し、合格になった今、状況は俺の立場とともに一変する。
恐らく、上は今回の結果を見て、聖剣をこのまま皇太子に託しておくことにする。
そうなると俺は彼と聖剣を今度は命をかけて守らねばならない。そのために一時的に白銀の守り人の一員として任務に当たるのだろう。
深夜に襲って、完敗した手前めちゃくちゃ複雑な気分である。
「白銀の守り人について教えてもらってもいいか?」
同じ保守派といえど、一枚岩ではない。俺は白銀の守り人についての情報を殆ど持っていなかった。
「そうね。これから君も一緒に戦うことになるんだし、総隊長が来るまでに教えられることは教えるね。」
可愛と違い、桐生は話の通じる常識人のイメージだ。
「白銀の守り人は暗密聖騎士団とは違って現場で動く集団。主に護衛や、反抗組織の撲滅とか国立騎士団の手に余るような任務をこなしてる。そこは知ってるよね?」
「ああ。」
そう。本来、俺が所属する暗密聖騎士団は潜入、暗殺、諜報など裏の裏の任務をこなす。
対してこいつら白銀の守り人は、直接的に聖剣と王族を護衛する戦闘派集団なのだ。
表立って国を守る王国騎士団。
聖剣を守るために、皇族をアウラを用いて護衛する戦闘のプロフェッショナルが白銀の守り人。
その裏で敵対組織を秘密裏に潰していく暗躍組織が暗密聖騎士団。
そんなイメージだろう。
「そんで、私たちは国立騎士団や暗密聖騎士団とは違って、皆んながみんなアウラを使うことのできる異能力者。そうじゃない人はこの部隊には入隊できない。」
「それも知っている。それがお前ら白銀の守り人が華の白騎士と優遇されてる理由だろ。」
「まぁそう言ってる人もいるよね。確かに私らは厳しい試験を突破してからじゃないと入隊を許可されない。」
保守派の3つの部隊の中でも白銀の守り人に入隊することは名誉とされている。残りの2つ、特に国立騎士団の連中は自分たちを「2軍」とか言って卑下する。
「お前らって大体どのくらいの人数いるんだ?」
「全部隊合わせて50人ぐらいだよ。なんてったって精鋭集団だからね。」
桐生はそう自慢げに語る。
「部隊は1番隊から7番隊まで、1部隊7人ぐらいの配属だね。そして君が侵入した夜、皇太子を護衛していたのが私の3番隊と紫の4番隊。」
「桐生のアウラは何なんだ?隊長やってるってことは実力あってのことだろ。」
「私のアウラは…、まぁおいおい分かるよ。」
なんかはぐらかされた。言いたくないのか?スリーサイズでもないんだから…。まぁそのうち分かるだろ。
何か微妙な雰囲気になっていると部屋の扉がコンコンと叩かれ、可愛が「ただいま戻ったのですー!」と言って戻ってきた。
「お帰り、紫。総隊長は?」
「ここにいますよ。」
総隊長、そう呼ばれて部屋に入ってきたのは銀髪のクラスメイト、宮水であった。
「一昨日ぶりですね。八神くん。」
「おい冗談だろ?」
切れ者と言われている総隊長がまさか隣の席のクラスメイトだとは思ってもみなかった。
「冗談ではないですよ。自己紹介が遅れました。白銀の守り人の総隊長を務めております。宮水音羽です。」
どうやらガチのマジのようだ。
「あの時の話、全部本当だったようだな。」
「信じてくれて嬉しいです。それでその話なのですが、協力してくれる、そういうことでよろしいですか?」
「この状況で拒否れる訳ないだろ…。そもそも、俺だって上から似たような指令を受けてきている。断る理由はない。」
「分かりました。それではこれより私は貴方の直属の上司になります。基本的には私の指示は厳守でお願いしますね?」
未だにこいつがあの白銀の守り人のトップだということに実感がないが、どうやら従うしかなさそうだな。
「それで構わない。」
「ありがとうございます。と言っても、今すぐ動ける体ではないですね。」
お陰様でな。
「それにしてもこっぴどくやられたのです。」
「後、1週間安静にして、そこから学校や任務にも復帰ってとこね。それでいいでしょ?宮水。」
桐生も上司であるはずの宮水に割と親しい感じの雰囲気を出している。同年代だからだろうか。
「ええ、それじゃあ後は頼みますね。」
忙しいのか、手短に済ませて客室から宮水は出ていった。
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