第一話
初投稿です。至らないところもあると思いますが、バシバシ指摘していただけると嬉しいです。
物語は第二章まで書き終えております。とりあえず序章と第一章は毎日投稿していきますのでよろしくお願いいたします。
雲類鷲貴春
―夢を見た。
遠ざかる背中に俺は手を伸ばした。
もう会うことはない、その言葉だけが俺の心を真っ黒に染めた。
寂しい。寂しい。
寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい。
俺の心の穴は未だに大きくなり続けている―
◆◆◆
「ピピピピ…ピピピピ…。」
タイマーがうるさい。朝だっていうのに耳障りだ。俺はよく分からん鳥の形をした目覚まし時計をぶっ叩き、眠り目を擦った。時計の調子が悪いのか何回か叩いてようやくタイマーが鳴りやまった。
朝から最悪の気分である。
「はぁ…入学式か…。」
最悪なのはタイマーの調子が悪かったことというよりも、今日が俺の新しい学校となる。日本で唯一の国立異能科専門大学校。通称、国立和泉野宮学園の入学式が今日、後3時間後にとり行われるからである。
元々、人付き合いをあまりしてこなかった俺は、新しい生活に不安しかない。
しかも、このに通う学生は普通の人間にはもたらされない異能の力「アウラ」を発現したとても優秀、というか特異的な若者たちしかいない。
そんな奴らと俺が馴染めるか、いや、絶対に馴染めない…。
昨日は不安で眠れなかったし、 よく分からんがめっちゃ早起きをしてしまった…。
「まぁ、せっかく早く起きたんだし、料理でもして時間潰すか…。」
そんなこんなで入学式が始まる時間になったので、渋々学院の黒メインの制服に着替え、学生寮を後にした。
学生寮から徒歩で三分ほど、目的地である和泉野宮学園の姿が見えてきた。
国内唯一の国立高校ともあり、相変わらずすさまじい規模である。
中央に悠々とそびえる巨大な本館に、両脇をぎっしり固める左館と右館、実習のためであろう広大なグラウンドに今日入学式が行われるメインホール。他にも国の力の入れようが明らかにわかるほどの豪華な設備である。
俺はそこら中に張り巡らされている案内板に誘導されるがままに、メインホールへとたどり着いた。
メインホールの前には学生がたくさん詰めかけている。男女比は1対1ぐらいだろうか。
今まで同年代の人と関わったことがほとんどなかったため、少しばかり怯む。
それにしてもあれだな…。俺は場違いかもしれない…。
奥ゆかしい感じの女子学生とすれ違うたびにいい匂いがして、なんか変な感じだ。最近の女子はみんなこんな感じなのか?
俺は昂る軽い興奮を顔に出さないようにして自然と出来ている列に並んだ。
先に何が有るのかは分からないが皆並んでるしな。
待つこと10分弱、俺が列の先頭になると、目の前に大きな岩盤があった。
その岩盤には何やら文字が刻まれていて、
「学生証を近づけるべし。」
と記されていた。
文字通りにあらかじめ配布されていた真っ白の学生証を岩盤に近づけると…。
「八神日吉 1年Hクラス 感覚制御」
勝手に学生証に浮き上がってきた文字を見て驚いた。俺の異能であるアウラまで把握されている。
どんな種があるのかは分からないがこの岩盤には何らかのアウラが使用されているのだろう。
とりあえずこの岩盤での作業は終了のようで、前に進みメインホールの中に入っていく。
ホールの中には席がクラスごとに分けられていて俺は自らのHクラスのところに行き、空いている席を探す。
出来るだけ後ろで端っこがいいな…。
まぁ隣に人が一人しか来ない端というポジションは、俺のようなコミュニケーションが苦手な人間にとってはベストプレイスなのである。
少し早めに着いていたため、席はまだほとんど空いていて、端の席を確保することに成功した。
席について、誰と話すでもなくボーッとしていたら段々と席が埋まってきた。
しかし一向に俺の隣は埋まらない…。
こういうのは何だかんだで早く埋まってくれた方がスッキリするのに…。
皆俺の隣に座りたくないのかな?泣いちゃうよ俺。
そして40席用意されていた席も39席埋まり、俺の隣だけが空いている孤島状態となっていた。
なんだか悪いことしてないのに惨めな気持ちになってくる…。
早く誰か来て!来てよぉ!
そんな風にそわそわしていたら、急に誰も座らないはずの左隣から女子学生に声をかけられた。
「あの、すみません…。」
「え…。あぁ、はい。」
急に声をかけられたのですっとんきょうな返事をしてしまった。
小柄でどっちかっていうと中学生?みたいな感じの美少女だ。
全ての顔のパーツがすっきり整っていて、まるで妖精に囁かれたような気分になった。
「あの…前よろしいですか?」
「え…。あぁ、すみません。」
そうだよね。左からじゃないと入れないもんね。
俺は彼女を先に通すために立ち上がって前を譲った。立って比べてみると余計に彼女の小ささが目立つ。
小柄な妖精さんは美しい銀髪をなびかせながら、俺の隣の席にゆっくりと腰を下ろした。
俺の前を通るときにこちらをちらっと一瞥したが俺に一目惚れしたのか?そんな適当な想像をしながら入学式の開会をじっと待っていた。
待つこと数分…。
「静粛に。」
別に静粛にしなくても元々静かだったが、男性教諭だろうか、キリッとした声がホール中に響き、ホール中は緊張感に満たされた。
ステージを見ると何やら一人の老人が立っていた。
体は痩せ細り髪は白髪だらけ、だが身なりはしっかりしており魔法使いのようなローブを羽織った老婆だった。
細くもしっかりと意思のこもった眼差しで俺達生徒を見回して、満を辞して話し出した。
「ようこそ。未来ある学生の皆さん。」
本作を読んでいただき誠にありがとうございます。
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さて物語は入学編ということでほぼ主人公しか出てこなかったですね…。隣の席の謎の美少女や教師陣、まだ分からないことだらけです。これからどんどん魅力的な新キャラを出していくのでお楽しみに!