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『まあな。…って、何を考えてる! 慧花!』
「意識を手放す前に、開放する。ケータイ電話で実家とタイガ警備保障に連絡しといてくれ。連絡先はアドレスを見れば分かるから」
『お前っ…! ちっ、分かったよ!』
「頼んだぞ」
慧花はサハカリを強く握り直し、刃を前に出しながら大きく一回転させた。
―ぎしゃああっ!
悲鳴を上げ、業魔は後ろに下がる。
柄に巻きつけていた足2本が刃で切り落とされたが、すぐに再生をしてしまう。
だが一瞬の隙はできた。
慧花はサハカリに残りの霊力と気力を全て注ぎ込む。
力が満ちるまで、8本の足による攻撃は体を使って裂けるも、体には棘がかすり、切り傷が刻まれていく。
神経の毒が体に流れ込んでくるのを感じながらも、慧花は倒れなかった。
(この一発に賭ける!)
避けながらも攻撃が届く中距離まで来て、立ち止まる。
「貫穿ノ槍」
低く呟き、慧花はサハカリを大きく振り下ろした。
慧花の霊力と気力を込めた技は、紫色の一線となり、業魔の体を真っ二つにする。
がしゃんっ…
攻撃は魂命石をも二つに裂き、業魔は眼の色を失い、地面に倒れて動かなくなった。
その様子を見届けた慧花はサハカリを大きく振り、真っ直ぐに立つ。
「初戦は勝利、と言ったところでいいな」
『ああ。苦戦の二文字はご愛嬌と言ったところだな』
「抜かせ」
皮肉を言い合いながらも、慧花も彩斗も笑っていた。
「とりあえず、彩斗」
『うん?』
「後は……頼んだぞ」
慧花は心の中で、武器解除を思った。
すると左腕が徐々に人間の腕へと戻っていく。
その光景を見ながら、ゆっくりと意識を手放した。
「お疲れさん。とりあえず、今はゆっくり休みな」
再び人間形態に戻った彩斗は、笑顔で眠りについた慧花の体を受け止め、優しく微笑んだ。