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シスター・マリエッタの事件簿  作者: 東 空塔
事件二 風俗嬢殺人事件
17/84

バック

 小川が対面しているのはヤクザ映画に出てくるような強面の男だった。

「風俗店『サファイアドール』のオーナーだと?」

「はい、おそらく暴力団が絡んでいると思います」

 強面の男の正体は山岡県警暴力団対策課の小池という男だった。小池はノートパソコンを開き、データベースを検索した。

「サファイアドールのバックは石黒会だ」

「石黒会……」

「関西系の指定暴力団、奥山組の傘下だ」

「そうですか。どうもサファイアドールのバックの組が伊藤恵子殺しの元被疑者の命を狙っているようなんですが、誤解を解いて命を狙うのをやめさせたいんですよね」

「そうか、気をつけて行って来いよ」


      †


 小川はマリエッタを連れて石黒会の事務所を訪問した。

 表札には「石黒商事株式会社」と書いてあった。


「どちら様で?」

 チンピラ風の男が小川を睨みつつ応対した。

「警察の者ですが、〝社長〟さんおられますか?」

「ああん? 何の用だ?」

「殺人事件に関することだ。石黒会長に会わせなさい」


 小川は相手の無礼な態度に対して、自分も強く出た。

 チンピラは手招きして小川とマリエッタを中に通した。二人が応接室のソファで待っていると人相の悪い男たちに囲まれて石黒会長がやってきた。


「警察が何の用や」石黒会長が関西弁で無愛想に言った。

「単刀直入に言います。牧田肇の命を狙うのはやめていただきたい」

「何のことや。さっぱりわかれへん」

 石黒会長はとぼけた。小川はかまわず続けた。

「牧田肇はサファイアドールに勤務していた〝めぐみ〟にストーカー行為をしていました。それで横山店長から牧田について報告を受け、牧田を犯人と決めつけて命を狙っていたんじゃないですか」

「あんた、失礼やで。知らんもんは知らんちゅうとるやろが」

 石黒は声を荒げてきた。取り巻きの男たちも小川との距離を縮めた。

 するとマリエッタが石黒の口調を真似て言った。

『この刑事、どこまで知っとるんや。もう少しとぼけとったらええわ』

 石黒は驚いて目を丸くした。

『何や、この姉ちゃん。まさかわしの考えてることわかるんか』

 石黒はさらに青ざめた。

『何や! 気色悪ぅ……この姉ちゃんむっちゃ怖いわ……』

 とうとう石黒が口を開いた。

「もうええ! やめえ! 牧田を狙ろうとったことは認める。そやからもうやめてくれ!」

 石黒会長は怯えた様子で語りだした。


 彼は以前から〝マキタ〟 という人物について報告を受けていた。しかし手をこまねいている内に 〝めぐみ〟 が殺害されてしまった。このままではしめしがつかない。横山店長から似顔絵を受け取った石黒会長は、手下にその似顔絵を持たせ、店の周りを見張らせた。そして〝マキタ〟と思しき人物が現れたので、捕まえて制裁を加えようとしたというわけである。


 小川は石黒会長に忠告して言った。

「会長、あなたは誤解しています。牧田肇は伊藤恵子を殺していません。ちゃんと証拠もあります。だから彼の命を狙うのはやめて下さい。もし彼に何かあったら、真っ先にあなたがたを疑うことになりますので、そのつもりで」


 こうして小川は石黒会が牧田の命を絶対に狙わないという念書をとりつけた。


「マリエッタさん、関西人の心を読むときは関西弁になるんですか?」

「実は私、兵庫県出身なんです。だから普通に関西弁が話せるんです」

「そうだったんですか」

 いずれにせよマリエッタの演技は石黒会長を震撼させるのに充分だった。

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