出会い 弐
ルビがふれてないです。すみません
りん。
と少女か夢と現の境界をゆらゆらと漂っているとその音は唐突に石洞に響いた。
鈴の音だ!
少女は即座に首をもたげる。
変化のない無機質なこの空間において唯一の刺激だ。
この鈴の音は気まぐれな調子で、鳴り響いたと思ったら消えてしまう。
寝てばかりいるので時間の感覚が一切分からないが、遠くに微かに見えたり見えなかったりする陽の光から察するに、連れてこられてから二日はゆうに経過していた。
この音を聞くのは、三回目だ。
少女はこの鈴の音が好きだった
この音は気まぐれで、一回目二回目は直ぐに音が消えてしまい、肩を落とすことになった。
祭事など滅多にない邑だった。
それでも、年に一回、少女にも鈴の音、楽の音、人々の笑い合う声を聞く機会があった。
誰も、少女にそれが鈴の音であることは教えてはくれなかったけれど。
それでも少女はその凛と響く音が鈴の音であることを識っていた。
「……ぁぁ。あ。」
声を出そうとして、期待した音になっていないことに気がつく。
喉がキリキリと傷んだ。
そう言えば、もう、長い間声など出していない。
水も口にしたのは納屋にいた時だから、何日前になるのだろう?
音を出そうとすると、何かが軋む。
ぼんやりと頭に霞がかかる。
おかしいな。
おかしいな。
二日たべないなんて、いつもの事だと言うのに。
頭の奥で何がが警鐘を鳴らしている。
けれど、少女は構わなかった。
だって、あんまりにも鈴の音が美しい調べを響かせている。
それを褒めたいと思ったのだ。
それに礼を口にしたいと思ったのだ。
「あぁ、美しいね…。」
声は掠れてしまっていて、望んだ音を響かせをしなかったけれど、構わなかった。
「あり、がとう。」
ぼんやりする。
あぁ、どうせ終わりだというのなら、この美しい音の中で、終わりたい。
せめて、終わりの記憶が美しくあれたのなら。
私は、生まれたことを後悔しなくても済むかもしれない。