出会い 壱
はたり。と何かがしたる音がする。
しん。
と耳が痛くなりそうな程の静謐に音が生まれる。
ずるりと何かが擦れる音。
連動するようにガシャンと静謐さをぶち壊すようなけたたましい音が響く。
ガチャガチャ、ガチャガチャ。ガシャン。
そこは山中にある石洞のその最奥。
壁に背を預けるように、一人の少女が安座していた。
力なく落とされた首が僅かに持ち上がる。
「…………。」
虚ろに瞬く瞳が変化のない、石の壁を眺める。
少女の両手両足は鎖に繋がれていた。
背後の壁に直接打ち付けられている鎖。五尺もない。座っている。その体制を変えることで精一杯だろう。
はたり。
また音がする。
それは少女の頬からしたり落ちていた。
「……。」
少女は肩口で頬を拭うと皮肉に頬をあげた。
どうやら、夢を見ていたようだった。
泣いている。
けれど、やけに暖かな心地がしていた。
夢の中は、穏やかであったのだろうか。
しかし、覚えていない。
穏やかな記憶を覚えていたいのに。
それすらも、許されないのだろうか。
少女は痺れる足を組み替える。
ガシャン。ガシャンとけたたましく静謐をおかしながら膝を抱える。
乾いた唇を僅かに舐め、膝に頬を預け、再び目を閉じる。
何も無い。
この場所に、
私に、
先はない。
私は、ただの、生贄。
許されるのは、眠ること。
それと、あとひとつ。