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ぷろろーぐ
何処かに存在したかもしれない。
これは、そんな御伽
りん。
と鈴のなる音が響く。
りん。りん。りん。
それは美しく思えるほどに優しい調べへと音を変えていく。
耳の痛くなるほどの静謐さを壊すこの音はこの場で唯一の救いだった。
しかし。
(これは、来訪を告げていたのか。)
こんな、こんなことすらも、
こんなささいな音すらも私に向けられたものでは無い。
とんだ思い上がりも甚だしい。
あるのは、忌まわしきこの命。
そして
「娘。名は。」
高圧的に降ってくる声に、軋む体を無理に起こし、彼女は言う。
「にえ」
そして、忌まわしき名だけだった。