1ー異世界転生は突然に 4
天海 陸(仮)
人属 14歳
職業 不定・無職 レベル1
天職 ??? レベル1
所持能力
【否殺】 A※魂に帰属しています
【ご迷惑お掛けします】 -A※魂に永属しています
【不運・神】 -AAA※魂に永属しています
【底抜けのお人好し】 -S※魂に帰属しています
「ここに映し出されているのはステータスと言って、自身の持つ能力が確認出来るリヴァースに存在する者が誰でも使える魔法の一つなんだ。今回は特別に神の力で陸のステータスを表示させて貰っているけど、特殊な状況や場所は別として、普段は他者が他人の能力を確認出来ない事になっているから、そこは安心してね」
「はぁ…」
あまりにも突拍子もない状況の陸は、ただただ相槌を挟むので精一杯だった。
「質問は後で受け付けるから、取り敢えず一通り上から順に説明するよ。名前と年齢は説明要らないよね。名前が仮になっているのは、リヴァースに転生した後で一度だけ変更可能だからだよ。一度しか変更出来ないから今から慎重に考えておくように、いいね。その下の職業は転生後に自分の好きなものを選ぶ機会があるし、後々変更する事も出来る。ただし、その下の天職…天職と言うのは職業とは別の魂に由来した職業の事で、これが自分のなりたい職業に向いていないと大成しない。例えば、天職が○○職人等の生産系だと、戦士や魔法士等の攻撃系の職業業には向かない。でも、これはあくまでも向いていないと言うだけで成れない訳ではないからね」
ゆっくり頷きながら何とか思案を続ける陸。それを肯定と捉え、次へと進むアイン。
「次に所持スキルについて。スキルは上から順に高い物が並ぶようにデフォルトではなってるけど、種類別等の簡単なソートも可能で優れものなんだ。ちなみに、スキルと言うのはどの世界に所属していても持っているものなんだけど、このステータスの魔法で確認出来るようにしたのは光の女神の偉業なんだ。本当に普段は残念なんだけど、たまに役立つ事もするんだよ」
言い終えると同時に一瞬だけびくっとしたアイン。それを、ごまかすように次へと進む。
「そ、それで、スキルのランクは下からE・D・C・B・A・AA・AAA・S・SS・SSSの十段階あって、A以上のランクのものは滅多に持つ者がいない貴重なスキルなんだよ。そのほとんどが先天的なもので|Aランク三種は超越者の証、Sランク三種は神の御力の欠片と呼ばれているんだ」
自身の担当だからか、真面目に説明をしていくアイン。その表情には、さっきまでのどこかふざけたような雰囲気は欠片も存在しない。そして、その横には魔法の製作者であるルミナが、一瞬だけ憤慨した態度を見せたものの終始自信満々と言った表情を浮かべ、装甲的に滅多に所持者のない胸をこれでもかと突き出していた。
本人には言えないが、必然的にいたたまれなくなるルミナ以外の面々…この中に陸も含まれているのも致し方ない事だろう。
ちなみに、E・Dランクスキルをノーマルスキル、C・Dランクスキルはレアスキルと呼ばれており、自身の成長や努力により取得出来る後天的なスキルらしい。
「すみません、アイン先生。スキルの前に付いている-は一体何を意味するものなんでしょうか?並んでいる順番の違いも気になりますし…」
嫌な雰囲気を変える溜めにも、律儀に手を挙げて質問する陸。当然、ここには机も椅子も黒板もないのだが、アインの背後にあるスクリーンも相まって、教室のような雰囲気を醸し出していた。陸の挙手は、その雰囲気に飲まれたとも言えるかも知れない。
「やっぱり、そこには気付いちゃうよね、アイン」
「これは無理だよ、カイン。陸くん、落ち着いて聞いて欲しい事だけど、このスキルランクの前に付くマイナスはアンチスキル(アンチエクストラスキル・アンチユニークスキルの総称)と言って、文字通り所持する事でマイナス面の効果が強すぎるスキルを表しているんだよ。」
「はい?」
陸も言葉の意味は理解は出来た。むしろ、この「はい?」はその事を理解したくないから生まれた言葉だった。
「うんうん、そのリアクションも予想通りだね、アイン」
先生を体現しているアインとは逆に、にやにやして妙に楽しそうな表情を見せるカイン。
「それはそうなんだけどね、カイン。それはやり過ぎだよ。陸くん、落ち着いて聞いて欲しい。ここでようやく、最初の最上級神からの罰が関係してくるんだけど、陸くんの持つ【不運・神】は陸くん自身の魂の根底に刻まれた神からの罰…通称神罰なんだ。言い難い事だけど、このスキルは普通のEランクスキルの【不運】と違って、スキル所持者を不幸にする為に周りの人物にも不運を撒き散らす凶悪かつ残忍なスキルなんだ。それと共に、もう一つ与えられた神罰の【ご迷惑お掛けします】が周りの不幸を強化する最凶最悪な仕組みになっていて、さらには魂の根底で永属すしているから、一般神では全く手が出せないんだよ。こればかりはね…本当に神の端くれとしては本当に不甲斐ない話だけど…」
「神だった頃の力が強いお主なら、神専用の強力なスキルも持っていたのじゃ。それを用いて、無意識ながらもある程度相殺しておったのじゃが、千回目を迎える今となっては神由来のスキル【否殺】と【底抜けのお人好し】しか残っていないのじゃ。こちらも余り良いスキルとは言えん。【否殺】は、似たようなスキルで任意てスキルを使用するか使用しないか選べる【不殺】と違って常時発動する系のスキルなで、武器や魔法で生物を直接殺める事が出来ないスキルなのじゃ。【底抜けのお人好し】はBランクスキル【お人好し】の上位スキルじゃ。マイナスがついている理由は、必要に迫られて頼み事をされると断る事が非常に難しいと言う、神の悪しき面を引き継いでおるからなのじゃ。これが優しいお主には上手く作用せず、神々のルールを破る事に繋がったのじゃ」
徐々に言葉を噤み、声が小さくなるカインのあとをギルおじいちゃんが引き継ぐ。
「当然、納得は出来ないでしょうね。でも、これが現実なのよ。貴方自身ではどうしようもない事ですわ。そこは諦めなさい」
ルミナが神々の誰もが言えなかった最後の言葉を述べた。
「いえ、どちらかと言うと説明される前よりかは納得が出来たと言うか…二十年近く生きてますと、今の話に付随するような出来事も二つや三つでは利きませんし…多分、ここで怒れない事や納得している僕がいるのも【底抜けのお人好し】でしたっけ?って言うスキルのせいなんですよね。まぁ、他の人にも迷惑を掛けていた分については非常に申し訳なさすぎるんですけどね」
右の頬を右手の人差し指で掻きながら、なんとか笑顔を取り繕いながら陸は答えた。
「そ、そうよ。私もそれが言いたかったのですわ」
「ルミナはどうでもいいとして、そんな陸くんには転生特典…力を選ぶ権利が与えられるんだよね。カイン」
「そうだね、アイン。そこが本題だったよ」
陸の言葉と普段と一切変わらないアインを見て、ようやくいつものカインに戻る。陸としても、重苦しい空気を纏った真面目なカインよりも、こちらのどこかふざけて見えるカインの方が随分と気が楽だった。




