1ー異世界転生は突然に 12
「それでは~」「主~」「改めまして~」「生き抜く為に~」「さっそく~」「今日から~」「激しい~」「修行モード~」「修行僧~」「修験者~」「お覚悟~」「南無阿弥陀仏~」
「はいっ?」
修行には同意した陸だが、若干不安に…身の危険を感じた四つの言葉に、無意識の内に一歩交代してしまった。
異世界転生日記10 晴れ
今日は異世界転生生活において、革新的な出会いがあった。ラッキーとハッピーとの出会いだ。独り身だった僕にこれ以上嬉しい事はない。二匹の卵を食べようとしていた事については謝る、ごめんなさい。
修行一日目。最初の課題は食料の確保。そして、僕達のいるこの場所の名前を知った。名前はディーヴァの森…中位クラスまでの精霊が多く住まう恵みの多い森らしい。見た事も有った事もないのだけど…。
今日までは状態異常になるものしか存在しないと思った森の中の木の実は、僕の採取の仕方に問題があっただけで、手順さえ間違えなければ、美味しくて安全な木の実も取れる事が分かった。そのついでに【採取】スキルも獲得。た・だ・し、僕の食べる分は耐性スキルを鍛える為に、僕方式の採取方法だった。
PS.ラッキーさん、ハッピーさん、スパルタもほどほどでお願いします…。
「今日は初日~」「だから様子見~」「明日から~」「本番~」
リックの日記に対するラッキーとハッピーの回答。これをすでに夢の中のリックが知る事はない。世の中には、知らない方が幸せと言う事もある。どのみち、明日には分かる事なのだから…。
異世界転生日記11 晴れ
修行二日目。今日の課題は魔法。僕は【付与魔法】以外の魔法が使えないと思っていたが、それは単なる勘違いだった。ステータスの各種魔法スキルを触る事で使用可能な魔法の名前のリストが出てくる仕組みだった。その結果、威力は低いが魔法は普通に使える。非常に便利な世の中は明るく感じた。
攻撃魔法も遠く向けてに放てないだけで、僕自身に密着する形なら使える事も分かった。何よりも精霊の住まう森の中では精霊の力のお陰で魔法の成長が早いらしいので、今日から修行の時間は何をしていても魔法を使い続ける事に決まった。相変わらず、ラッキーさんとハッピーさんは修行に関してだけスパルタのようです。
PS.神様、僕は理解しましたよ。これって自爆覚悟でしか攻撃魔法を使う方法がないって事ですよね。
『違うよね、アイン。他にも便利な使い方があるよね』
『そうだね、カイン。陸くん…リックくんにアドバイスが出来ないのがもどかしいよ』
少し寂しさを感じるアインとカインの双子神。
異世界転生日記12 晴れのち雲
修行三日目。今日の課題は狩り、初めて相対する野生動物。はっきり言って怖い…が、それは果たして朝起きると【即死耐性】を獲得していた時の恐怖に勝るのだろうか?いや、勝らない。あれは本当に怖かった。
しかし、別の事で改めて思い知らされた過酷な現実。【否殺】のお陰で、獣を弱らせる事が出来ても止めを刺せない事が判明した。それは同時に、止めを刺す事でしか経験値を得られない僕にとっては、経験値の取得不可を意味してる。つまり、普通の方法で僕のレベルは上がらないと言う事だ。
千回目の人生は、【能力簡単取得】を持ってしてもベリーハードモードらしい。
PS.狩りでラッキーとハッピーが止めを刺してくれた大蜥蜴(?らしきもの)は、これまた狩りの途中で発見した岩塩により、非常に美味しく炭火焼きで料理する事が出来ました。異世界肉は最高みたいです!何より、空腹は拒否反応を越える事が判明しました。
異世界転生日記13 雨のち晴れ
雨の為、今日の修行は休み。昨日狩りで得た獣の皮を使い、衣服の改善。ようやく、下着は勿論、上半身にも服らしい服が出来ました。靴と呼べそうな物も…やはり文明とは素晴らしいものです。
過酷な異世界生活で密かな楽しみも出来た。拠点前の池での釣りだ。パンタスマグリアを釣竿に変化させて、昨日の獣を餌に釣りをした。前の人生では体験した事のない入れ喰い状態。つまり、大漁だった。これはラッキーとハッピーのお陰だろうか?取り敢えず、ありがとう。
PS.神様、見てますか?やっと心の底から笑えそうです。
『リックくん、僕も含めて皆が喜んでいるよ。おめでとう』
異世界転生日記14 晴れ
修行四日目。今日の修行も狩り…それと、レベルの上がらない僕の為に、基礎能力向上の修行が追加。相変わらず簡単に対応したスキルの獲得に成功した。
この前の追加検証、【伐採】したはずの木がもとに戻る件だが、どうやら三日周期で新しい木に生え代わっているようだ。これで自然破壊を気にせずに済む。安心だ。
物資の不足も否めない。今後、町へ向かうにしても貨幣はない。何かしらの売れる代物が必要だろう。ここで手に入る物どうやら言えば、獣の素材や木の実か新しく見付けた塩。修行と平行してそれらの回収、まだまだやる事は多い。
PS.神様、僕の読んでいた異世界転移ものの物語では着ていた服を売ってお金に変えるのが定番なのに、僕にはその売る服が有りません。これは何かしらのハンデですかね?
『フンですわ。世の中そんなに甘い事なんて有りませんわ。もっと頑張りなさい』
優しくないようで優しい?いつものルミナ様だった。
異世界転生日記20 晴れ
修行十日目。今日も今日とて、修行の内容は狩り。今日は初めて自力で獣の討伐に成功、異世界生活での二十匹目の記念すべき討伐に華を添える形となった。…と言っても、パンタスマグリアで手枷、足枷を作り、動けない状態にしてから【水魔法】の綺麗な飲料水を出す魔法の《ウォータ》の塊で口と鼻を塞いで窒素死させると言う、自分でも引くような卑劣な手段。直接的な止めを刺せていないので、この方法でも経験値は入らないらしい。獣の討伐数二十匹に対して僕のレベルは1のまま…辛い。
PS.神様、何か良い方法は有りませんか?
『うむむっ、わしとしては教えてあげたいのじゃが、それについては話す事が出来んのじゃ。わしから言えるのはじゃ、自身の未来を信じるのじゃ。それだけじゃ』
異世界転生日記30 雨
異世界転生から一ヶ月、久しぶりの修行休み。倒した獣も百を越え、手に入れた素材の加工に勤しむ。雨にも負けなず、風にも負けず劣らない強固な拠点のお陰で、安心して加工が出来る。そのお陰で、家具や食器も充実してきた。街への一歩近付いた気がします。
PS.本日を以て、各種耐性(【即死耐性】も含む)スキルがカンストした為、明日からはまともな食事が可能になりました。
異世界転生日記31 晴れ
修行二十日目。昨日の甘い考えをした僕を殴りたい。そんな気持ちになった一日だった。今日の課題は【能力演算】のテスト。各種耐性スキルを全て足し算する事で【全状態異常耐性】を獲得した。はっきり言って、獲得したくはなかった。これは、まともな食事が遠退いた事を意味するのだから…。どんな状態異常食材を食べても、全部に耐性が有るから全く効果はないけどね、気分が良くないんだよ、気分が…。
他にも【火魔法】と【風魔法】を掛け算する事で【雷魔法】を、【水魔法】と【土魔法】を掛け算する事で【泥魔法】を新しく覚えた。【雷魔法】の《スタンパラライズ》は魚を取るのに便利で、【泥魔法】の《マッドプール》は獣を取るのに便利だった。
PS.神様、もう肉や魚のタンパク質は充分なので、せめて新しい調味料か穀物が欲しいです。味噌と醤油、米やパンが恋しいです。
『ディーヴァの森にも小麦は有るには有るんだよね、カイン』
『確かにあるよね、アイン。でも見付けるのは精霊を見付けるよりも難しいんじゃないかな。リックくんのところの小麦とは形が違うし』
リックが小麦を見付けられないと確信している節があるアインとカイン。その様子は、どこか楽しそうでも有った。
ちなみにリックは、【能力演算】で使用し、消えてしまった各種魔法を再び取得しなおして、全てを足す事で【四大属性魔法】スキルと〈魔導研究者〉の称号も獲得にも成功していた。
【四大属性魔法】は、【能力演算】の計算で使用した四つの、どの属性魔法を使ってもスキルレベルが上がると言う非常に美味しい夢のようなスキルで、スキルランクはA。
〈魔導研究者〉※魔法の複数種の同時発動と魔法の形状変化が可能
異世界転生日記50
修行三十九日目。ラッキー先生とハッピー先生と相談して、修行の終了日を九日後に決めた。つまり、十日後にはここを旅立つらその準備も修行に平行して進めていく事になった。僕も、少しは強くなったのだろうか?僕にはレベルと言う分かりやすい目安がないので不安でしかない。
それとは別に、とある一つの目標を立てた。これは、ある種の宣言と言っても良いだろう。ディーヴァの森にいるらしい精霊を一目で良いから見る。これに尽きるだろう。
PS.神様、この密かな目標にも【不運・神】の影響は有りますか?
『ちょっと見るのは難しいよね、アイン。【不運・神】は関係なしに』
『そうだね、アイン。リックくんの回りには精霊がいっぱいいるみたいだけど、見えてなさそうだからね。あと十日ぐらいでは難しいと思うよ。可能性が有るなら、【簡単能力取得】かな』




