エピソード5
放課後の教室。
今日は日直で、少し残って日誌を書いている。
とか言いつつ、クラスの人が書いた日誌に、つい読み入ってしまった。
みんないろんなこと考えてるんだなと思う。
……妹は、どんなこと書いてるんだろうか。
そう思った瞬間、
妹の短めの髪が、ぼくの耳と頬をかすめて、
妹は、ぼくの右の肩に首を乗せてきた。
妹は……気持ちよさそうに、寝ている。
こんなこともいつものことで……
窓から見える空は、まだ明るくて
テニスボールの打たれたり跳ねたりする乾いた音とか
応援の爽やかそうな声とかが聴こえてくる。
廊下の奥からは、吹奏楽のボーという低めの音。
廊下を走る運動靴の足音が周期的に響く。
すると、運動靴の擦れる音と同時に
「建治!」
右後ろから浩二の声が……
ぼくは振り返ろうと思ったけど、
妹の顔が視界を塞ぐ。
「あっ、わりー…… お邪魔でしたか、そうですかっ」
浩二は、小さい声だったけど、激しく動揺している模様。
妹は、高い声で唸ると、
寝返りをうつ如く、首をぼくの左肩に乗せ変えた。
その時見えた、浩二の顔がなにかすごくて……
「なっ?! 違うんだって、寝てるんだってっ」
ぼくもなぜだか、動揺。
こんな状況でも起きない妹はすごい……。
浩二はしばらく立ち尽くしてから、
ヨタヨタ歩いて、ぼくの右隣のイスに座った。
「おまえって、やっぱ羨ましいやつだな」
浩二があやしい笑顔でささやく。
「まあ、かわいいとは、思うけどさ……」
妹が起きてたら、絶対言わないようなことを言ってしまった。
浩二は、ふーんという顔をしてから少し黙って、
それから、妹の方をチラ見して……
「実はさ……オレ、おまえに言っときたいことががあってさ」
「なんだよ。改まって……」
「しーっ! 香奈ちゃんが起きちゃうじゃんか」
「なっ、なにを今さら……」
「これは、男と男の約束だからな」
「おっ、おう……」
「実はさ……、オレ、香奈ちゃんのこと……好き、みたいなんだわ」
浩二は全開に顔を赤らめながら、はにかんだ。
<つづく>




