エピソード4
学校に着く頃には、雨はすっかりあがり
自転車置き場の周りの木々は
水滴を纏って煌いていた。
「おっはよー、香奈ちゃん!」
同じクラスの女子が妹に声をかける。
「ゆっちー、おっはよー!」
……妹のネーミングセンスは、イマイチ分からない。
「おっす! 建治! きょーも香奈ちゃんカワイイっす〜!」
「はぁ〜?!」
一応、建治ってのが、ぼくの名前で、
声をかけてきた、この見た目はごっついのに、口はやたら軽そうな人物は
浩二っていう名前。
ぼくはいつも、
ぼくと妹の名前が貼られた、ちょっと不自然な下駄箱に
靴を出し入れする。
ぼくの靴は“ぼくらの靴”なんだって、いつもながら思う瞬間。
キーンコーンカンー♪
「やんべっ! 遅刻すっぞ!」
浩二が叫んだ……。
……ついに、午後が来てしまった。
「おにーちゃん、おっそいよ〜!」
水しぶきの音と女子の黄色い声が辺りに響く。
今日は午後から、体育で水泳の授業。
本来、水泳は女子だけで、男子は陸上といった感じなんだけど。
まぁ、妹は一応女子だし、
もしものときには、水泳ができたほうがいいと先生に勧められた。
とはいっても、泳ぐのはいつもぼくの方で、
妹はといえば、お気楽にイルカにでも乗ってんじゃないかという態度。
浩二のやつは、なんて羨ましいんだーー!! とか言うけれど
ぼくは、ほんと堪ったもんじゃない。
しかも、妹は、身体的にスクール水着とかは着れないみたいで、
だからって、
なぜだか、ビキニ……。
あっ……ありえん……。
ぼくのほうが恥ずかしい気がする。
そういえば、体育の時間はいろいろと人気者(?)になる。
逆立ちとかが良い例で、慣れたら4つの腕で4足歩行すらできてしまうことが発覚。
ありえねーーっ(笑涙!!
とかみんなから注目されたこともあった。
そうやって、支え合って、ぼくらはこれからも生きていけると思っていた。
<つづく>