エピソード2
「お兄ちゃん、電気消すよ!」
「よろしく!」
そういえば、
電気を消すのは、いつも妹のような気がする。
一応言っとくけど、ぼくらは、仰向けに寝ることはできない。
バランスも悪いし、第一、妹を下敷きにすることになってしまう。
横向きか、うつ伏せで寝るのが、ぼくらの当たり前。
ぼくとしては、ほぼ妹の抱き枕状態で、
睡眠不足になったことは数え切れない……。
でも、最近は、妹も気を配ってくれているみたい。
「あのさ……
なんでさっき、あーゆーこと言うわけ?」
“ソファー”の件で、ぼくはちょっと怒っていた。
「別になんでもないって……
お兄ちゃんが喜んでくれたらと思っただけ……」
「よ……喜ぶわけねーだろ! バカっ」
ぼくの肩をつかむ妹の指が少し震えていた。
「だって・・・お兄ちゃん、あたしのせいで幸せになれない気がするから……。」
……妹は本気で泣いている。
「あたしなんか、くっついてなければ、
お兄ちゃんはもっと自由なんだって……ずっと思ってた。」
ちょっ、それ、中学生の言うセリフかい!? とは、とても突っ込めない。
ぼくをいつも奴隷のように扱き使う、元気な妹は、
たぶん、ぼく以上にいろいろ気を使っていたのかもしれないと
今になって気がついた。
「あーあ……
なに言ってんだか!」
ぼくは、背中で妹を押しつぶして、仰向けになった。
「ちょーと、苦しい……よ。お兄ちゃん……!」
ぼくだって、妹を疎ましく思ったことだってないわけじゃない。
でも、もし逆の立場だったらと思うと、ただかわいそうに思えただけだ。
「どうだ! まいったか!
これで満足かい?(笑」
こうやって茶化すことぐらいしか、今のぼくにはできないんだ……。
と思っていたら、
妹の振り上げた拳が、勢いよくぼくの急所に当たり……
「・・・・・・っ!!!!!」
ちょっ、それは反則じゃあ……
<つづく>