表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
背中の妹  作者: HS
2/7

エピソード1

「お兄ちゃん、好き嫌いはダメだよ!」

 そう言って、妹は、箸でピーマンをつまむと

ぼくの口に的確に押し当てる。


 二人羽織りなんて、アホにしか見えない的確さで……。


「あのさー、たぶんピーマンエネルギーは、

 おまえの方からまわってくるんじゃね……」


「なにカッコ悪いこと言ってんの?

 将来、恥ずかしいことになるのは、お兄ちゃんなんだからね!」


 妹のくせに、母親のような口ぶりだ。

とは言っても、ぼくは、母親というものを知らない……。


 妹も知らないはずなのに、なんでこうもしっかりしているものか。



 母は、ぼくらを産んだときに、亡くなった。

ぼくらの誕生日は、母の命日でもある。

父親も当然いるんだけど、今はお金を送ってくれるだけの存在だ。


 だから、ぼくと妹は、今、二人でアパート暮らしをしている。



「もう、お湯たまったかな」

「あっ! やべ……溢れてるかも……」

 追い炊きができない風呂なので、風呂も1回で済むのは

まぁ……経済的かもしれない。


「お兄ちゃん……」

 脱衣所で、後ろから妹がつぶやく。

ぼくは、なんのことだろうと、後ろを振り向く。

「見たら、ぶつって言いたかったんだけどな……(怒」

 そのあと後悔することになったのは、言うまでもない……。


 風呂でぼくの背中をゴシゴシするのは、いつも妹の役目。

いつも妹の運転手になっているお礼ということになっている。

でも、今日はいつもより、少し痛い気がする。


 お湯につかる。

「……まだ、怒ってんのかよ」

「ちょっと、ごめん」


「あ、あのさ……」

 妹は、少しすまなそうに言う。

「べ……別に、見なければ、寄りかかるぐらいはいいよ。」


「はい?」

「ほら、お兄ちゃんも、柔らかいのとか……嫌いじゃないんでしょ」


「・・・・・・!?」


「おっ、お前はソファーか!!(笑」

と突っ込むのに、けっこう間が空いてしまった。


 内心、妹はぼくのソファーになるために

生まれてきたとか思うと、

どうしようもなく悲しくなった。




<つづく>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オンライン小説ランキングに参加しています。
投票していただけると励みになります。
【投票する】
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ