プロローグ
ぼくらは、生まれたときからひとつだったんだ。
これからもずっと……そうなのかな……。
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「ちょっと、君達!」
ひさしぶりによく晴れた日曜日、
ぼくらは、気持ちよく風を受けて走っていたっていうのに……。
また自転車の二人乗りということで、呼び止められてしまった。
ぼくは、定期のようにいつもの証明書と中学の学生証を警察のおじさんに見せる。
すると、おじさんは不思議な顔をしながら、ぼくらの足のほうを見て……
何事もなかったように、「気をつけるんだよ」と言って
無理な笑顔をしながら、手を振ってくれる。
……まぁ、いつものことだ。
そう……ぼくらは、生まれたときからひとつだった。
なぜだか知らないけど、ぼくの背中……
正確には、背骨の付け根あたりから、ぼくたちは枝分かれしている。
つまり、上半身が2つあるってこと。
だから、妹はいつも、どんなときでも、ぼくの背中にいて、
今日は一緒に自転車に乗っている。
まぁ、足のほうは、いつもぼくの担当だから、妹は歩くって感覚を知らないんだと思う。
「また、呼び止められちゃったね、お兄ちゃん。」
妹は、ちょっと不満そうに言うけれど、
ぼくは、まんざらでもない気持ちもする。
妹がそう言ってくれると、心強いというか、なにか安心した。
「コンビ二、寄ってこうよ!」
梅雨が明けたと思ったら、今日はいきなり暑い……。
「おし、了解!」
「あたしは、ソフトクリームでお願いします!」
一応、胃袋は別々だから、妹も腹は減る。
まぁ、あたりまえか……。
最近は、ダイエットだの何だのって言ってるわりには、
なんか、ぼくの肩甲骨あたりにときどき柔らかい感触が……
てなことは、鼻血が出ても言えないことで……。
コンビ二に着くと、ぼくは自転車のかごに折りたたんでたものを取り出す。
さすがに、自転車から降りると、けっこう一目で分かっちゃうので、
妹をリュックにカモフラージュしてしまうのも、いつものこと。
「登山ですか?」とかよく言われるけどね。
そうそう、鼻血が出ても言えない件で、
じゃあ、妹は、結婚できるのかって、まだ早いけど、ときどき心配してしまう。
妹に生殖器はないっていうことは、実は本人も分かってることなんだけど……。
……妹は、恋愛とかしたいとか思ってるんだろうか。
<つづく>
これは、結合双生児の兄妹を軸として展開するお話です。
異性の結合双生児というのは、あくまでフィクションですが、
この兄妹を暖かく見守っていただけるとありがたいです。
完結できるよう頑張りたいです。(作者)