3.14 咎人の脱獄
毎度毎度投稿が停滞気味で申し訳ありません。
結弦が国王暗殺の容疑者として投獄されてから三時間。
彼は腰に下げている懐中電灯に宿るフィリアから離れ離れになった仲間たちとシャルロットに関する情報を得ていた。
『……と、まぁひとまずは皆無事よ』
『そうか。――けど、思った以上にバラバラになってしまったな』
フィリアから得た情報によると結弦がいるのは王城地下にある独居房の角地で、白音とレン、スーはこれより数層下にあたる場所に投獄されているらしい。そしてクロに関しては首に太い鉄鎖を巻きけられ寄宿舎の外門に拘束されているとのことだ。
――あのじゃじゃ馬が抵抗しなかったのは驚きだったが、レンの言い付けを忠実に守っていたのだろう。
まぁここまでは俺が手を貸さなくても自分たちで何とかできる。
『問題はエステルとアリスか』
エステルとアリスは先の四者とは違い、王城の中央部『天元の間』という部屋に軟禁されているらしい。
エステルはともかくアリスまでそんな場所に居るのは予想外だっだが、戦闘力がそれほど高くない二人を放っておくのはまずい。――なんとかして合流しないと。
『そうなるわね。一応エステルは腐っても教皇だし、国家権力からすれば手を出しにくい特殊な立場よ……優先度はそれほど高くないわ』
『あいつ無駄に偉いからな~ そうなると真に危険なのはアリスか?』
『えぇ、軟禁といっても至るところに監視の目がある状況。そして当然、杖や所持品も一通り取り上げられてる。――今のあの子を一人にするのは危険だわ』
ふむ、最初の一手は決まった。
『分かった。じゃとっととここを出ないとな』
結弦は立ち上がり火属性の初級魔法『ファイアショット』を房の檻に向かって放つ。
――が、火球は檻に触れる前に力を失い消えてしまった。
『アンチマジック……魔封じのルーンかしら?』
『そりゃ犯罪者を入れておく箱だしな。魔法への対策は当たり前か。――フィリア、なんとかならないか?』
『私をどこかのロボットと一緒にするのはやめてちょうだい? お生憎だけど壁抜けができる素敵なアイテムは持っていないわ』
テレポートできるアイテム(神札)は持ってたくせに……
『何か不満でも?』
「いーや、それなら魔封じのルーンごと削りきるだけだ」
結弦は火属性中級魔法『ファイアウォール』を鉄柵付近の魔法が消されないギリギリの位置に展開する。
当然、檻には触れていないのでダメージは入らない。……が熱は伝わる。
『ふーん、熱交換による脆性破壊でも考えてるの?』
『その通りだ。魔封じのルーンとやらで魔術的なダメージは与えられないが《火》という属性が持つ温度は鉄に伝えられる。――鉄の熱伝導率を考慮すればコレがベストな案だと思うが……問題は冷気が届くかどうかなんだよ……なっ!』
結弦は水と風の初級呪文を混ぜ合わせて作り上げた小石サイズの氷塊を地面に敷き詰める。
そして道具欄から《水流の刀+4》を取り出し、氷の棺桶の中へと寝かせる。
――待つこと十分。
元々冷気と相性が良い属性剣はキンキンに冷やされ、刀身にはうっすらと冷気がまとっていた。
「鉄板もいい感じに暖まってきた頃だろう。そろっとやってみるか。――そぉーい!!」
結弦は『ファイアウォール』を消し、鉄柵へと斬りかかる。
すると熱したチーズをスライスする……とまではいかないが、抵抗力をほとんど感じることもなく鉄の檻は破られた。
「時間も手間もかかるが科学の大勝利ってやつだ」
『浮かれてないでさっさとアリスを迎えに行きなさい』
『へ~い』
結弦は道具欄に水流の刀をしまい、代わりに《フラガラッハ+10》を装備する。
ついでと言うと少々可哀想だが、檻を壊すときに出た金切り音に気づいてやってきた看守を剣の柄で昏倒させ、結弦は地下牢から脱出した。
◇
地下牢を脱出した結弦は自身にリファクションの幻惑を掛け、他者からの認識を阻害する。そして、フィリアの案内に従い、アリスたちがいる天元の間へ一直線に向かった。
『その階段を昇って真っ直ぐ行った突き当たりが目的の場所よ。――ただ……少し覚悟をしておきなさい。どうやらお相手さんは私たちのことを相当邪魔に思っているようね』
『おいおい、どういうことだ……よ?』
結弦がアリスたちへ至る最後の扉を開けたその先は酷く澄んだ空が広がっていた。
◇
一方その頃、別のフロアに囚われていたレン、白音、スーたち三人は虎視眈々と脱獄の期を伺っていた。
「ふがぁぁ! なんて固い柵なのじゃ!? うんともすんとも言わぬのじゃ」
「暴れるだけ無駄というものを……」
鉄柵に向かって蹴りかかってる白音にスーは憐れみの目を向ける。
常日頃から歯向かう者には容赦なく制裁を下してきた大妖弧様は生まれてこのかた、一度も拘束されたことがなかった。
「ぬしさまの命令とはいえ、童が無抵抗でこんな暗い場所に閉じ込められるとは……屈辱なのじゃ」
沸き上がる怒りの感情を鉄柵にぶつけていた白音は、自分の置かれた状況にうちひしがれ、いつしか地面に座り込んでいた。
「まぁそう気を落とすでない。俗世では常に責任や立場という煩わしいものが付きまとう。――下手に我らが大立回って主やユヅル殿に迷惑を掛けるよりかはよかろう」
「そうなの~ お肉いっぱいくれるご主人様に迷惑をかけるのはだめなの!」
一人ショボくれている白音を励まそうとレンが口を開く。
そして唐突に話に入ってきたレンに白音は虚をつかれ一瞬ポカンとするものの、いつも通りのレンの態度にやれやれと表情を柔らかくさせる。
「かっかっか……レンはいつもそればっかりじゃな。――だが良い。童もその方が気が楽になるというもの。そのなんじゃ? みっともないところを見せてすまなんだ」
「わかれば良い(なのー)」
「じゃが、どうしたものかのぅ? 童もこのまま大人しく狐鍋にされるつもりはないぞよ?」
「それなら心配ありません♪」
落ち着きを取り戻した白音が冷静に牢を抜ける方法を考え始めたその時、通路の影から見覚えのある顔が現れた。




