3.9 姫と騎士
==Side Freed & Carroll==
フリードとキャロルのデートが始まって少し、舞台は街中にある洒落た喫茶店へ移っていた。
「ここがキャロル様の来たかった場所ですか?」
「あぁ……あんなの嘘よ。私っていつも王城の中に居なきゃいけないでしょ? せっかくこうやって外へ出る機会に恵まれたのなら街の中を自由に遊んで来なさいってエステル様から言われたのよ」
私はエステル様たちと考えた言い訳を並べる。――真実の中に少しの嘘を混ぜる。エステル様のお考えは素晴らしく若輩の私には感嘆してばかりだ。
でもそうね……本当はあなたと一緒に街を歩きたかったと言えれば良かったな。――シチュエーションのせいか今日の私はいつもより臆病みたいだ。頑張らないと!
「あの御方なら言いそうな話ですね。――ここまで来てしまった以上、キャロル様が大聖堂へ引き返すはずも無いですし、せめて大通りに面した場所に絞って歩いてください」
「えぇ。しっかり守りなさいよ?」
「この身に代えても」
フリードは気を引き締め直し、彼女の事を気にしながら出された紅茶を飲む。
==Side Yuduru==
「とりあえず自然な流れでここまで来ることが出来たわね」
「はい、みんなで一生懸命考えた甲斐はありました」
一方、二人の動向が気になって後をつけている結弦たち一行は店外の物陰から様子を伺っていた。
「もしかして午前中に俺らを締めだしたのはこれを考えるためだったのか?」
「申し訳ございません。どうしても彼の目を逸らす必要がありましたので利用させてもらいました。」
「まぁそれはいいが、これ後どれくらい続くんだ?」
「一応予定では夕方までになります」
「まだまだ先は長そうだ」
「ユヅル様もここまで来てしまった以上諦めて付き合ってくださいね」
「わかったよ。――おっ、そろそろ店を出るみたいだぞ」
「いけません! みなさん隠れてください」
エステルの掛け声に合わせて結弦たちは店から距離を置く。
==Side Freed & Carroll==
喫茶店を後にしたフリードとキャロルは約束通りに大通りを歩き、時節キャロルが興味を持った店を覗くといったウィンドウショッピングを楽しんでいた。
「フリード! 次はあそこ行きたい!」
「あぁもう! 急に走りだしたら危ないですよ!」
突然走り出したキャロルをフリードは慌てて追いかける。ちなみにこれで八店目になるのだが、その間に買った服や雑貨でフリードの両手には小さな山が出来ている。
「フリード、これとこれどっちが似合うかしら?」
キャロルは手に持った二種類のアクセサリーをフリードに見せる。
「次はブローチですか。そうですね、私としてはこちらの赤い宝石が埋め込まれた物の方がキャロル様の綺麗な瞳に合うと思います」
「/// 一言余計よ! でもそうね……フリードがそう言うならこっちにするわ」
キャロルは顔を赤くしながらも上機嫌で赤いブローチを会計へ持って行く。
そして店から出た二人は本日最後の目的地へ向け足を進めるのであった。
==Side Yuduru==
「この調子なら大丈夫そうね」
「はい。このまま順調に事が運べばお二人の関係はぐっと近くなるはずです♪」
「ただ、あの二人のアマアマな所をずっと見ていたからか、童少し火照ってしまったのじゃ」
「おい! だからってこっちに寄りかかってくるな」
「良いではないか~」
「あー! ズルいです……私も少し歩き疲れましたのでご主人様、ちょっと失礼しますね」
「あら大変、私も遅れるわけにはいかないわね。ユヅル様、私も混ぜてください」
「暑い……まとわりつくなー!」
結弦の腕をアリスと白音がホールドしてエステルが背中に無理やりのしかかる。――毎度のことだが、どうしてこう一度に来るんだ? せめて一人ずつならまだ相手してやれるのに……
「ねぇみんな~ 二人行っちゃったけど大丈夫なの?」
一人フリードとキャロルの監視を続けていたレンが二人が離れていくとを伝える。
「今は女の戦いの最中よ! ――どうせ良い雰囲気になって上手くいくのが目に見えているから放置しましょう」
「そうですね。私たちも私たちの使命がありますし、二人の尾行はここまでということで!」
「おぬしらも難儀じゃのぅ」
「結局こうなるんだな。――ってか首が絞まって苦しい! エステル、せめてポジションを代えてくれ」
結弦は襲い掛かる三体の魔物の相手に翻弄される。
==Side Freed & Carroll==
結局いつも通りのコントを繰り広げる結弦たちとは別に、絶賛デート中のフリードとキャロルは大聖堂の講堂に移動してた。
「帰ってきましたね。街の観光は楽しかったですか?」
「えぇ、初めて見るものが一杯ですごく新鮮だったわ」
「それは良かったです」
「まだよ。――なんかいい感じに終わった気でいるみたいだけど、今日のデートはまだ終わらないわ」
「デートだったのですか?」
「うぐっ! ……まぁそれは置いといてフリード、ここに来た意味分かる?」
全身茹でダコ状態になったキャロルがなけなしの勇気を絞ってフリードに問いかける。
フリードはキャロルの顔を見て少し考え、一つの答えを導き出す。
「私とキャロル様が初めて出会った日でしょうか?」
「えぇ」
「キャロル様の目がなんとなくですがあの日と同じような気がしましたので」
「そっか……やっぱりフリードは私のことなんでもお見通しね」
そう、今回のデートプランの最終目標地点は大聖堂の中にある講堂にしていた。実際は王都の教会だったのだが、 二人の出会いを再現するべく、エステルがこの時間帯の講堂を貸し切りにした。
そして場は静まり、無音の重圧が二人を包み込む中、意を決したキャロルが口を開く。
「私、あなたのことが好きよ。それこそ教会で初めて遊んでくれた日から……」
「知っています。そして私もキャロル様をお慕いしております。それこそ私があなたを見たときから」
キャロルの渾身の告白をフリードは驚くことなく受け止め、フリード自身も自らの想いをキャロルに告げる。
キャロルはフリードの言葉を目を見開きながら聞き届け、目尻に大粒の雫を溜めていく。
「えぐっ……ぐずっ……フリィードォー」
「こういうところは本当いつまで経っても変わられませんね」
「ずずっ……なんであなたは平然としてるの? 卑怯よ!」
「そう言われてもキャロル様が私を好いてくださっているのは分かりきっていましたし……」
「むかー! なにその勝ち誇った顔、凄く腹立つ!」
怒りながら泣き続ける、そんな今日一に変な顔をしているキャロルをフリードは優しく抱き締める。
そしてキャロルの情緒が安定した辺りで、フリードは凄く申し訳無さそうな顔でキャロルから手を離す。
「でもすみません。私はキャロル様を受け入れることは出来ません」
「へっ???」
唐突に告げられる文言をキャロルは理解出来ずに呆然とする。
「それはどういう?」
「言葉通りの意味です。確かに私はキャロル様のことを愛しておりますが、キャロル様と添い遂げることは出来ません」
「………」
全ての時間が止まったかのように微動だにしないキャロル。そしてさっきとは別の感情で溢れ出す涙を彼女は止めることが出来なかった。
「そんな……嘘よ……なんでなの?」
「お気を確かにしてください。あくまで『今は』です。この世の中、お互いが好き合うだけで上手く行くほど私とキャロル様の身分は近くありません。私はあなたと共に在りたいがためにこの五年間、ひたすら上を目指して歩いて来ました。努力実ってか今ではエステル様の護衛という大役を任せていただけるようになりましたが、まだまだ貴女という存在は遠すぎます」
「そんなに遠いの?」
「はい。そしてそれは地位だけでは無く、実力も足りていないことが今日のユヅル様との手合わせで痛いというほど味わいました」
フリードは今日の午前中に受けた結弦からの講義を思い浮かべる。
「もちろんキャロル様を好きという気持ちに嘘はありません。ですが、私が胸を張って貴女の隣に立てるまでもう少し待っていただけませんか?」
「いつかは絶対私のこと貰ってくれる? 他の女に浮気しない?」
「はい。騎士としての誇りにかけて」
少しずつ落ち着きを取り戻してきたキャロルは一度大きく深呼吸をして、フリードの顔をしっかりと見つめ返す。
「わかったわ。フリードの言葉を信じて待ってるわ」
「ありがとうございます」
「でも! フリードは外見も中身もカッコ良すぎて他の女に取られないか凄く心配だわ」
「えぇ! そっちは信じてもらえないのですか……」
「だから自分勝手な私は貴方を縛ることにします! ちょっとその剣借りるわよ」
キャロルはフリードの腰にぶら下がっている騎士剣をひったくる。
「キャロル様! なにを?」
「いいから膝をつきなさい!」
「???」
わけもわからずその場にを膝をつかされるフリード。
「まさかこういうことになるとは思わなかったけど、これもクロノス様とエステル様の思し召しなのかもしれないわね。――ちょうど教会だし、場所も申し分ないわ。フリード、頭を下げなさい」
「はい」
結局何がしたいのかわからないフリードは考えるのを止め、キャロルの言うことに従うことにした。
「我、キャロル・シャル・グラジオラスがここリベラル大聖堂で宣誓する。汝、フリード・ベルクライネを第一の騎士に叙任し、互いにいかなる境地に立とうとも共に歩むことを命ずる」
「!!? ……その命、慎んで拝命させていたします」
突然のキャロルの宣誓にフリードは、この日初めて驚愕した顔を見せる。
そして事の重大さに我を取り戻したフリードはキャロルの勅命を丁重に受けることを宣言する。
「ふぅ~ これで貴方は何階級か分からないけど特進したわ」
「キャロル様……」
「あなたが自分の力だけで私と同じ地位に行けるわけないでしょ? 私をおばあちゃんにでもさせる気かしら?」
「ですが!」
「いいの、私はフリードの決意をこの耳でちゃんと聞き届けたわ。だから私はあなたの望みを叶えるために私が出来る精一杯のお手伝いをしただけ。――まぁ勝手に騎士を任命したのはお父様に怒られるかも知れないけど、その時は一緒に怒られなさいよね♪」
「はぁ……どうやら私は死ぬまでキャロル様には勝てなさそうです」
「私を振り回した罰よ。一生離さないんだから!」
「慎んでお受けいたします」
今日この時、相思相愛の姫と騎士が誕生した。
久々にここまで筆が乗ってしまいました。(いつも以上に本気で書きました)
読むの大変だったかと思います。――なのでひとまずはお疲れ様でした。
それと最近フリードとキャロルを登場させたがためにちょっと本筋から外れてしまっていますが、次話くらいで元の路線に戻せるようがんばります。
後次回の更新ですが、今週は急遽入ってしまった仕事を片付けないといけなく、木曜日の更新は難しそうなので来週の月曜(11/19)の15時を予定しています。
一回お休みしてしまい申し訳ありませんが気長に待っていただければ幸いです。
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