3.8 お茶会
==Side Girls==
「さて……ユヅル様たちは行かれたようですし、私たちも始めましょうか」
「あんな強引に追い出しちゃって良かったのでしょうか? ご主人様、怒ってないといいのですが……」
「まぁぬしさまはそんな些細なことで腹を立てたりせんから大丈夫なのじゃ」
「大丈夫なのー」
「だといいのですが……そういえばエステル様、この部屋ってどういった用途に使われるのでしょうか?」
結弦たち男性陣を大聖堂の外へ追放したエステルたち女性陣は、聖堂内のとある一室に移動していた。
「ここは元々、市政の打ち合わせに使う会議室だったのだけれど、今日からは私たちの作戦会議用の本拠地にするわ」
実は五日前、謁見の間にて起きた一件でキャロルのことを不遇に思ったエステルは彼女の恋を応援するべく、週一で彼女を情操教育という名目で借り受ける承諾をシャルロットに取り付けさせた。
「流石エステル様。私のためにここまで用意してくださるとは……感服いたしました」
「ありがとうキャロル。――でもちょっと勘違いしているようだから正しておくけど、あくまでこの会は『私たちの』目的成就のために結成された集まりよ。当然、あなたにも私たちのターゲットを攻略するために手伝ってもらうわ」
「もちろんです。――一蓮托生、精一杯協力させていただきます」
「結構。――とりあえず会議を始める前にお茶でもいれましょうか」
エステルは部屋の隅に備え付けてあるティーセットを用い、人数分の紅茶とお菓子を用意する。
そして、一通りの準備を終えたところで作戦会議は開始された。
「まずあの堅物青年を攻略について議論する前に、彼の情報を整理しましょう。――キャロル、あなた彼のどこが好きなの?」
「え~と、そうですねぇ~ フリードはかっこよくて優しくて私の面倒ならなんでも見てくれて……」
キャロルはフリードのことを頭に思い浮かべ、緩んだ表情で惚気る。
「なんだかぼんやりしてるわね。――例えば具体的な思い出深いエピソードとかないのかしら?」
「具体的なエピソードですか……あっ! 私が彼を気にするようになったきっかけでしたらあります♪」
「なんだ、ちゃんとあるじゃないの」
「五年前の事なのですが、私が教会でクロノス様からの洗礼を受けた時、護衛についていた兵士たちの中にフリードがいたんです。まぁ当時の私は幼かったので彼を兵士ではなく教会に通い詰めているお兄さんだと思っていたのですけど……暇そうにしている私を彼はずっと相手してくれました」
どこにでもある、ありふれた出会い話をキャロルは顔を赤らめながら話始める。
「まぁ私は立場上、一緒に遊んでくれる相手なんていませんでしたし、あの時間は後にも先にも特別なものになりました。そしてそれからしばらくしてフリードが王国軍の兵士だったと知って、彼を探し出し、相手をしてもらう日々になりました」
「なんとも可愛らしい出来事ですね。――それにフリードさんは昔からキャロル様を大事にされているようですし、全く脈が無いわけではなさそうです」
「ただあのボンクラ、だれかれ構わず優しくしておるタイプじゃろうし、早く捕まえないと他の女に取られてしまうのではないかや?」
「!?」
白音が客観的な意見をポツリと呟き、キャロルは動揺する。
「安心しなさい。そのために私たちが居るのだから……要はサクッと落としてしまえばいいだけの話よ」
「私にできるでしょうか?」
「急に弱腰になったわね……大丈夫、既に彼の気はあなたに向いていると思うから後はその気にさせるだけよ」
「そうです。先ほどのフリードさん、追い出しといてなんですがずっとキャロル様のことを見つめておられましたよ」
「本当?」
「はい、少なからず気にはかけていただいていると思いますので頑張りましょう!」
「頑張る!」
キャロルの瞳に闘志が宿る。
「さて、本題に移るけどフリードの心をどうやって掴もうか……せっかく王都の外に来ているのだしデートでもしてみる?」
「デート! 私してみたいです」
「決まりね。じゃあデートコースを皆で考えましょうか」
「はい♪」
女性陣のフリード攻略作戦会議は結弦たちが帰ってくるまで続く。
==Side Yuduru==
「結局俺らが居ない間に何してたんだ?」
「それは乙女の秘密です。それよりもご主人様、久々にリベラルへ帰ってきたのですし少し街を歩きませんか?」
昼食時、アリスが結弦に街中の散歩を提案をする。
「童も北区の甘味処に行きたいのじゃ♪」
「にくー!」
「今目の前にたらふく料理があるのによくそんなこと言えるな。――まぁいい、俺も少し寄りたい店があるし飯食ったら少し出ようか」
「ありがとうございます」
「いくのじゃ~」
「なのー」
とりあえずこれで午後の予定は決まった。――今度は仲間外れにされないみたいだし、久々にリベラルでゆっくりと過ごせそうだ。
「ちなみに三人は午後どうするんだ? 暇なら一緒に来ないか?」
「ごめんなさい。私は溜まっている書類を片付けないといけないので残念ですが一緒には行けません」
エステルが心底残念そうに結弦の誘いを断る。
「それはしょうがないな」
「私もありがたいお誘いですが、行きたい場所があるので今回は別行動とさせていただきます。フリード、護衛をお願い」
「かしこまりました」
キャロルとフリードも結弦の誘いを断る。――まぁフリードが付いているみたいだし、あっちは任せて大丈夫だろう。
そして昼食を食べ終えた結弦たちはエステルやキャロルと別れて街へ赴く。
◇
……はずだったのだが、
「なんで俺らはこんなことしてるんだ? エステルも居るし」
なぜか大聖堂に戻り、キャロルとフリードが出ていくのを物陰から見守っていた。
「ユヅル様、私たちはキャロルの行く末を見守る義務があります。――空気を読んで付き合ってください」
ふむ……まぁなんとなくコイツらが何をしたいのかは分かった。――つまるとこキャロルとフリードを二人きりにさせて、関係の進展でも狙っているのだろう。
正直、そんなことしなくてもお互いが好き合っているのは一目瞭然なんだけどな。――こっちの世界の人間からすればこの手の王道イベントは欠かせないのかもしれないが……
結弦は仕方ないなぁと思いながらエステルたちと同行することを決める。
そして、昼下がりの決戦は着々と次のステージへと登り始める。
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