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3.6 巡合

「キャロル様、私は兵役に勤しんでいるだけで、別に避けているわけではないのです」

「嘘よ! ここ三ヶ月はロクに会いに来てくれなかったくせに!」


 入って早々にフリードの元へ詰め寄り、激しい剣幕で責め立てるキャロルと呼ばれる少女は、周りの視線などお構い無しにフリード一直線の様相だった。


 ここまでストレートに相手に寂しいって伝えられるのはある種の才能といっても過言じゃないだろう。

 それこそ誰が見ても恋する乙女にしか見えないわけで、今の俺にはのらりくらりな返答をしてるあのイケメン野郎を心の底からなぶり殺したいという感情しか湧いてこない。


 そんな心底暗い感情を燃やしている結弦がいる観戦ポジションにはエステルやアリスたち、後なぜか国王のシャルロットが加わっていた。

 そしてシャルロットは申し訳無さ半分、野次馬根性半分といった顔で現状の解説を始める。


「あれは私の娘でキャロル・シャル・グラジオラスと言う。一応第一皇女という立場なのだが、私の教育が良くなかったからか随分とワガママに育ってしまってな。ところ構わず突撃していくじゃじゃ馬皇女になってしまった」

「ご息女様でしたか。国王陛下も苦労されているようで……」


 やっぱりこの国王の娘なんだな。見た目はあんま似てないけど、自由奔放なところとかはよく似ていると思うよ。


 そして、国王からの紹介によりキャロルのステータス情報が更新される。



《ステータス》

 _____________________

 名前:キャロル・シャル・グラジオラス 10歳♀

 レベル:2

 ジョブ:皇女 (グラジオラス)

 所持金:なし

 装備:なし

 スキル:社交

     作法

     速読

     舞踏

 魔法:なし

 _____________________


 キャロルは限りなく白に近い金髪をツインテール状にまとめ上げており、ルビーのような紅く煌めいた瞳が特徴的な女の子だった。歳はレンと同じで、欲望に忠実そうなところなんかはとてもよく似ている気がする。――でもなんでだろう? 彼女にはレンよりもアリスの面影を重ねてしまう。性格はもとより、見た目もそこまで似てるとは思えないんだけどなぁ……


「へぇ~ 話には聞いていたけど実際に貴方の娘を見れるなんてツイてるわね。――私の情事よりよっぽど面白そうなことになってるじゃない♪」

「親でなければ私も喜んでそちら側に立っているのだがな……困ったものだ」


 後ろからエステルが口を挟む。――とても上機嫌なのはさっきの仕返しができると思っているんだろう。


 そして、当事者であるフリードは困りながらもキャロルを宥めることに徹していた。


「ですからキャロル様、前にも言いました通り私の配属先が王城から外周区に変更したのです。――本日は仕事上こちらに来ていますが、基本的には城の中に来ることはありません」

「ならもう一度王城務めになればいいじゃない! お父様なんとかならないの!?」

「無理だ。一介の兵士の処遇に国王が直接口を出すとそれだけで騒ぎになってしまう。――彼もキャロルを嫌っているわけではないのだから無理強いするのは良くないぞ」

「やーだー」


 もう滅茶苦茶だな、この子。国王は教育がどうこう言っていたが、正直それ以前な気がする。


 思い通りにならずわめき散らすキャロルとそれに頭を悩ます国王とフリード。――次第に混沌と化してきた状況に収拾はもはやつかないかと思われたその時、傍観者でいた二人が動き出す。


==Side Alice&Esther==


「ねぇアリスちゃん」

「なんでしょうか?」

「私最初はシャルルが困ってる所を見れてとても気分が良かったのだけれど、今のあの子を見ているとちょっと可哀想にみえてしまうの……」

「なんでも自由になる環境で唯一自由に出来ない存在……エステル様とは対極に当たる方かと思われますが」


 エステル様、急にどうされてしまったのでしょう?


「確かにそうね。私は権力こそあるけど教皇としての責務に縛られてとてもじゃないけど自由ではないわ。――けど、アリスちゃんが言った後半の方は私も……なんだったらあなたも自由に出来ないのではなくて?」

「エステル様……その返しは少しズルくありませんか?」

「でも本当のことでしょ?」

「そうですね。――はぁ……わかりました私の負けです。何をするつもりかは知りませんが精一杯お付き合いいたします」

「ありがと。――じゃあ老婆心全開の教皇様が迷える子羊を救ってみせましょうか♪」


==Side Yuduru==


「はいストップー! 頼りない男共に任せていたらいつまでたっても帰れそうにないし、少しこの子を借りるわよ?」

「!? あなた一体なんなのよ!」

「まぁいいから来なさいな。私はあなたの味方よ」

「少し落ち着きましょう。悪いようにはいたしませんので」


 突如、エステルとアリスが三人の中へ割って入り、キャロルを連れ出す。

 エステルはアリスと何か話していたようだが、なにするつもりだ?


 エステルとアリス、キャロルは壁際まで移動し内緒話を始める。


 時節、アリスとキャロルの顔が赤くなったり目を見開いたりしているが、本当に任せておいて大丈夫なのだろうか?


 五分後、円陣を組んで互いに鼓舞しあった三人は、国王の元へ胸を張りながら戻り、衝撃的な宣言をする。


「お父様とこの場におられる皆様、先程はお見苦しい所をお見せして大変申し訳ありませんでした」

「い、いや……それは構わないが」

「私、エステル様に諭されてが気づきました」

「ほぇ?」


 なんか態度が急変しているんだが……一体五分で何があったんだ? ――国王なんてあまりの豹変ぶりにフリーズして固まっちまってるよ。


「人の上に立つ者が下の者を私的に使用してはならないと。――なので、私自信が外周区に赴くことにしました。ここに宣言致します! 私、キャロル・シャル・グラジオラスは敬虔なクロノス教の信徒としてエステル様の元で修行して、女を磨いて参ります!」

「なぁんだぁとぉぉぉ!!!」


 この日、王城より発せられた国王の悲痛な叫びは貴族特区を越え、外周区まで響いたと後生に語り継がれることとなる。

毎度のことですが、お話を気に入って頂けたらブックマーク、評価をお願いします。

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それとTwitterもありますので↓の『ぽんさん』より飛んでいただければ近況や次回の更新予定、後は物語の余談なんかをお届けします。

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