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3.3 観光名所

 王都生活二日目の午後。

 エステルの発案で結弦たち一行は王都観光に耽っていた。――なお、エステルはバレると騒ぎになるので、あらかじめ結弦のリファクションを使い、彼女の周りの光を屈折させて別人に仕立てている。


「綺麗な噴水ですね」

「あぁそうだな……ただ、俺にはそっちよりもそこに建ってるどっかの誰かさんに目がいっちまうんだよな~」


 まず始めに足を運んだのは王都の外門から王城へ向けて一直線に伸びている中央通りで、外周区と貴族特区の境にある大きな広場だ。


 そしてここにはシンボルとなるオブジェが二つある。一つはアリスが言う巨大な噴水なのだが、もう一つはロクシタンの街にもあった大きなフィリア像が噴水の脇に鎮座している。


「フィリア様ですか。――まぁ私たちには幼い方が馴染み深いので違和感はありますが……」

「そうなんだよなぁ~。――ちなみに白音、あれっていつの時代のフィリアなんだ?」

「うーん、童はぬしさまが知っている容姿しか知らんのじゃ」

「我も同じだ」


 となるとアレは空想上の産物なのだろうか。――まぁその方が下手な勘繰りをしなくて済むから俺としては助かるが。


「それって本当なんですか? てっきり私はあのお姿こそクロノス様だと思っていました」


 一方この中で唯一フィリアと直接会ったことの無いエステルがショックを受けていた。――そして違和感無く俺らの会話についてこれる所からして、バックに暇神がついていることはアリス辺りから聞き出しているのだろう。


「あんま気にすんな。どうせアイツのことだからそのうち嫌でも会いにくるさ」

「夢の中で……ですか。――大変光栄なことですが、私にお相手は務まるのでしょうか?」

「そんな固いもんじゃないぞ? ――現にそこの二人は盛大にやらかしているからな」


 結弦はアリスと白音を指差す。

 二人とも夢と現実の区別がついてないときに欲望全開の姿を俺とフィリアの前に晒している。


「ご主人様! それ以上話したら怒りますからね!」

「そうなのじゃ童とねえ様とぬしさまとの秘密なのじゃ!」

「ふふっ……どうやら大丈夫そうですね」

「そういうことだ」


 そして結弦たちは近くに備え付けてあるベンチに腰を下ろした。


「話が逸れてしまいましたね。一応解説しておきますと、この噴水は願いの泉という名前で、王都に流れる地下水を魔法で汲み上げているんです。また、ここは千年前に起きた神・魔・竜族の大戦時に人族がより集まって暮らしていた場所だったようで、戦争の終結を願う人々というのが名前の由来になっています」

「なるほど、たがら婆さんフィリアも建っているんだな」

「はい。今では市民の憩いの場として王都を象徴する一翼と言えるでしょう。――ちなみに噴水を背にした状態でお金を投げ入れて、お金が噴水の中心に近ければ近いほど願いの成就は近いという言い伝えもあります」


 また随分とベタな言い伝えだ。――百々のつまり、どこの世界でも噴水とお金はセットということだろう。


「せっかくだしやってみたらどうだ?」

「はい♪」

「皆勝負なのじゃ!」

「やるのー」

「じゃあ私もやりましょうか♪」


 女性陣はこぞって後ろを向き、銀貨を投げ入れる。――話を聞く感じ、別に競いあうものでもなかったハズなのだが……


 結果、噴水の中央に最も近かったのはレンで、他の三人は似たり寄ったりの位置に銀貨が落ちた。


「どうやらレンの願い事が一番早く叶うらしいな。――で、レンは何を願ったんだ?」

「にくー! 食べるの~」

「いつも食べてるよな? ――でもまぁそれなら納得か」

「どうやら私たちの願いが届くのはまだまだ先のようですね」

「うぬ、ぬしさまは朴念仁じゃからのぅ」

「残念です」

「???」


 なんだかよく分からないが、三人とも同じ願い事だったらしい。――そう考えるとこの言い伝え、存外馬鹿にできないのかもしれない。


「んじゃそろそろ次行こうか。――っとその前に腹も減ったしレンの願いを叶えとくか」

「にくなの~」

「そうですね。――でしたらそこにある露店で買っていきましょうか」


 結弦たちは特大(ビック)(ポーク)を使ったホットドックみたいな料理を購入し、食べ歩きながら次の名所に移動する。



 適度に腹を満たした一行が次に訪れたのは、街の西側にある大聖堂だ。


「ここはクロノス教発祥の地で今から五百年くらい前まではここが本部だったそうです」

「へぇ~ なんでリベラルに移ったんだ?」

「当時の国王が宗教嫌いだったからと聞いています」

「そりゃまた難儀なことで」

「はい。――それでユヅル様、せっかく来たので教会の人々に挨拶をしたいのですが、魔法を解いてもらってもかまいませんか?」

「わかった」


 エステルに請われて結弦はリファクションを解除する。


 するとエステルの顔を認識した教会関係者が慌てて駆け寄ってきた。


「教皇聖下!」

「皆様お久しぶりです。ちょっと所用で王都まで来ているのですが、お変わりはありませんか?」

「はい。皆、平穏で健やかな日々を送っています」

「それはよかったです。今日は少し顔を見せにきただけなのでもう行きますが、私はまだしばらく王都に滞在していますので、時間ができたらまた来ます」

「かしこまりました。刻の巡りの元また会える日を」

「刻の巡りの元また会える日を」


 エステルは教会関係者に別れを告げ、再び結弦のリファクションで変装し、大聖堂を後にする。


 その後、結弦たちは当初の予定通り、外周区を順繰りに食べ歩き、皆お腹をカエルのっように膨らませた状態で寄宿舎へ帰るのであった。


 そして夜になると国王への謁見をセッティングするべく奔走していたフリードから日取りが決まったと連絡が入るのであった。

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